10
「はい、報告は?」
悠梨亜の言葉と同時に一斉に向けられる3人の視線。そんなに注目されると口篭ってしまう。
「久し振りだったから、よく分からなくて。」
「何その感想。」
「本当につまんない女だね。」
「だって、なんか、もう。分からないよ。恥ずかしくて仕方なかった。」
「にしても、よく行ったよね本当に。」
「どこがいいと思ったの?」
「どこ…だろう…」
「名前は?」
「桃。」
「何で桃?」
「桃だから。」
「ふーん。」
「それで、良かったの?」
「分からない。次があるのかも、分からない。」
「有りか無しかでいったら?」
「…有り。」
ニヤニヤする周りを見ながら、夕飯のパスタを食べる。
悪くはなかったと思う。相手の好意的な態度も、相手への感情も。可愛いと思うことが多かったし、ただ一晩だけなのに大事にしてくれてる感じがあった。それは向こうが後輩で歳下だということはあるだろうが、全体的に悪い印象は無かったのだ。
「あってもなくても、次を期待してもいいんじゃない?」
「2回行けばこっちからも誘えるっしょ。」
「私からは行かないよ。」
「なんでよ。本当につまんない。」
「つまんないとか言わないでよ。」
「柚葉の積極性の無さに呆れるよね。」
「恥ずかしくて無理なの。」
「慣れればいいのよ。やっぱり合コンだな。」
朋がそんなことを言うから、また悠梨亜がすぐにスマホを開いて誰かと連絡を取り始めた。合コンはこの間やっぱり向いてないってことが分かったばっかりなのに。
「熊にセッテングしてもらう?」
「てか、この間熊と帰ったのに何も無かったんでしょ?あれもどうかと思うよね。」
「熊は、無いでしょ。」
「熊、良いやつだよ。仕事出来るし。」
「じゃあ、悠梨亜は有りなの?」
「私は無しだよ。もっと細い人がいい。」
「私は有りだけどな。でも熊って割と正統派だよね。まじで自分の気になった女の子しか行かない。」
「そうなの?」
「そうだよ。私誘われたことないし。」
朋がドライな感じで言う。少し気に入らないんだろうな。
「だからさ、この間柚葉のこと誘うと思ったんだよな。熊、狙ってる感じ出てたもん。」
「え、私狙われてたの?無いわ。」
「何も無かったんだ、と思ったよね。」
「やっぱり柚葉のガードが硬すぎるんじゃないですか?」
麗奈までそんなこと言うんだから嫌になる。そう言えば、あの日はみんな翌日仕事が終わってから帰ってきたな。
「熊から返事きた。次の柚葉の明けの日でいいよね?」
半ば強制的に決まってしまった。行かないって言っても、寝ているところを起こされて引きずってでも連れていかれるんだろうな。
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