5

「別れたわ。」



麗奈の一言に全員の動きが止まって、麗奈の方に視線が集まった。



「え。」


「まじで?」


「別れられたんだ。」


「それな。絶対無理だと思ってた。」


「大変だったよ。」


「だろうね。」


「でも私の気持ちが無くなっちゃったんだから、仕方ないよね。」


「そう言ったの?」


「言ったよ。あと、重過ぎるってこともね。」



今日は鍋。みんなでひとつの鍋をつつきながら話している。熱いものが苦手な私はなかなか食べることが進まずに、話ばかりに夢中になっていた。



「じゃあ、麗奈は合コン解禁だね。」


「そ。もう最高だよ。自由最高。」


「よし、早速セッテングするよ。」


「さすが悠梨亜。」


「4人で行こうよ。柚葉も、ね?」



私が嫌な顔をすると、麗奈が甘えた顔をして、いいじゃん、と駄々をこねるように何度も言う。



「私はいいよ。」


「何がいいの。ほら、男欲しいって言ってたじゃん。」


「合コンは嫌なの。」


「そんなこと言ってたらいつまでも男出来ないかもよ?」



それはそうかもしれないけど。少し口篭りながらも、私は断り続ける。


合コンに嫌な思い出があるとかそういう訳では無い。多分、単純に知らない人たちと飲み会っていうのが1番嫌な原因なのだと思う。特に、そういうことしか考えてない人たちの集まりだって分かるから嫌なのだ。


ふと顔を上げると、朋と目が合った。すると、朋は思い出したかのように悠梨亜の方を見た。



「そう言えば、悠梨亜は昨日誰だったの?」


「昨日は、馬。」


「どうだったの?」


「なんか付き合いたいみたいな雰囲気出してくる。いい加減気持ち悪いかな。もう無いと思う。」


「あー、それは無しだね。」



朋と悠梨亜が嫌そうな顔をしたのを見てから、やっと食べれる熱さになってきた鍋の具を私がゆっくり食べ始めた。


しばらくしてから悠梨亜がスマホを見ながら言った。



「今、熊が4人で飲んでるらしくて、今から来ない?って来た。」


「熊の友達?いいじゃん。合コンじゃん。」


「4人で行くって言っとく。」



熊は悠梨亜の職場の人。そして私の高校の同級生。悠梨亜に写真見せてもらった時に、知ってる顔で驚いたのを覚えている。これは本当の偶然。



「柚葉も行くよ。熊なら大丈夫でしょ。」


「いや、この鍋どうするのよ。せっかく作ってくれたのに。」


「鍋なんて明日でも食べれるから。早く準備するよ。」



作った本人の麗奈に言われてしまった挙句、麗奈は私の腕を掴んでそのまま部屋に連れてかれてしまった。私はもう半分以上諦めて、合コンなんて久し振りだなとか、飲み会大丈夫かなとか、そんなことばかり考えていた。

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