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「ご飯だよ。」
そんな声で目が覚めた。扉から差し込む光。今日も夜まで寝てしまったな。窓の外はもう真っ暗だ。
「早く降りてきなよ。みんな揃ってるよ。」
眠い目を擦って体を起こす。さて、夕飯だ。朝から何も食べてないから、意外とお腹が空いているのだ。ベッドから降りて、部屋を出る。1階のリビングに行くと、もうみんな帰って来ていて、テーブルの上にはピザが3枚広げられてた。4つの大きなジョッキに炭酸飲料が入れられている。
「お疲れ様。早く食べよ。」
いつもの席に全員が座ると、みんなでいただきますと言って食べ始めるのだ。これがいつもの私たち。
篠原柚葉。同居人は金澤悠梨亜、根本麗奈、向井朋。25歳の独身女子の集まりだ。みんなそこそこに女子力が高くて、可愛くて、やっぱりみんなで並んでると羨ましくなる。
メイクを落としてすっぴんの4人で話す話は男の話ばかり。今日は麗奈の話から始まった。
「もう別れたい。」
「は?」
「この間付き合ったばっかりじゃない。」
「でも、もうなんか、好きとかよくわかんなくなっちゃったんだよね。」
「彼氏の方は麗奈のこと好きみたいだけど?」
そう言って、麗奈の彼氏のツイートを見せてくる悠梨亜。そこには、「今日も彼女が可愛かった」とだけツイートされていた。確かに、麗奈の彼氏は麗奈に盲目で麗奈のことが大好きって感じだから、離してくれなさそうだけどな。
「重いんだよな。もう少し身軽にいたいのよ私は。」
「合コン、恋しい?」
「あー、めっちゃ恋しい。あの頃楽しかった。」
ピザを頬張りながら恨めしそうな顔をする麗奈。合コンね。私はあまり好きじゃないけど。
「やりたい男でもいるの?」
「そういうのは無い。身軽になったら出来るんだろうけど。」
「なんか、自分のこと縛ってるみたいね。」
「朋が羨ましい。」
「朋は自由にし過ぎなのよ。」
「それくらいがいいよ。羨ましい。」
私は悠梨亜と顔を合わせて肩を竦めた。まあでも、フラフラ自由にしてた方が楽なのは何となくわかる。でも私は彼氏も欲しいけどな。
「で、今度はどこの男?」
興味津々に麗奈が朋に聞く。朋はどこに行ってもモテるからな。一晩だけ、なんて話も毎週のように聞く。
「新しいのは出来てないよ。この間の狐。」
「狐2回目行ったんだ。」
「あの話し方だと無さそうだったのにね。」
「まあ、そうなったら行くよね。また次は無いだろうなって思ったけど、誘われたらまた行くんだと思うわ。」
「本当分かんない。」
「女なんてそんなもんだって。」
私が呟いた言葉に麗奈がすかさず返した。そんなもんなのかなぁ。一度無いと思った男は無しだと私は思うけどな。
「んで、どうだったの?」
「狐?また淡白だったよ。こいつ本当に彼女出来なそうだなって思った。」
「つまんないのによく行くよ。」
「暇潰しにはいいのよ。」
朋は可愛らしい見た目と裏腹に、男にはだらしないし、意外とワイルドな感じ。そして、男に対して引くほどドライだ。初めて会った時から、私は彼氏なんていらない、と言っていてそれ以来本当に彼氏がいるところを見た事がない。
「暇潰し、ね。暇潰しにされてる男も男ね。」
「確かに。向こうは朋のことどう思ってるのかね?」
「そんな恋愛みたいなこと聞かないでよ。」
朋が嫌そうな顔をした。それを見た麗奈が私に目線を動かした。
「柚葉は最近どうなの?」
聞かれると思った。3人の目線が一気に私に向く。
「何も無いよ。」
「本当に?職場のイケメンはもう無しなの?」
「無しだね。絶対に無し。」
「残念だったな。」
「柚葉も今度合コン来る?」
「あー、それはいいや。私あんまり得意じゃないの。」
「知ってるけどさ、ほら。ね。来てみていい人見つかるかもしれないじゃん。」
悠梨亜と朋が私に熱烈に勧めてくるけど、こんな顔のいいふたりと私なんて想像しただけで自分が嫌になる。絶対無いな。
「いや、パス。ごめんね。」
「なんだよ。絶対柚葉モテると思うのに。」
「すぐ言い寄ってくる男いるよ。」
「あー、私も合コン行きたいー。」
「来ればいいじゃん。バレなきゃ平気だって。」
麗奈、もうすぐ別れるな。相手が離してくれればだろうけど。
でもさー、と言いながら麗奈がまた彼氏の話をし始めた。その話を聞きながらテーブルの上のピザを4人で減らしていった。
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