桃色の熊と恋をした。

安神音子

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朝日が暑くて、眠たくて、眩しい。なぜか暑いと感じる不思議な感覚。体が熱を持っているこの感じがなんとなく心地良かったりする。今日も晴天で、そんな綺麗な青空が頑張った後の小さなご褒美に感じて嬉しかったりする。冷たい空気をたくさん吸い込んで、吐き出す。白くなる息がまだ冬を示していた。


2月の午前10時。仕事から開放された私は、外の空気を存分に味わいながら駅まで歩く。イヤホンから流れてくるシティポップは最近覚えた曲ばかり。耳障りがいい曲たちは、この時間にぴったりと合っている。なぜなら、とても自由を感じるからだ。


長年、夜の不眠に悩まされていた私は、社会人になって夜勤という仕事を覚えた。学生の頃は、日中学校があるのに夜に眠れずに授業中に眠ってしまうなんてことがほとんどだった。病院に行ったりもしてみたが、もらった薬がなんとなく効果があるように感じなくて半年ほどで通院をやめた。社会人になって夜勤の仕事を始めた時に、これは天職かもしれない、なんて大袈裟なことを思ったのを今でも覚えている。お陰様で肌の調子はあまり良くないが、体の調子は良い方だと思う。


電車に揺られて、シティポップの再生画面からラジオの再生画面に切り替えると、イヤホンからは大好きな芸人さんのラジオが流れてくる。そして、一気に落ちる瞼。電車の揺れとラジオの声は私の睡眠を促す最上級の素材になっている。ここからは、どこで起きることが出来るかなんて分からない。その日の私に任せるしかないのだ。




目を覚ますと、丁度最寄り駅のひとつ前の駅だった。よく眠れたな、と思いながら心の中で伸びをする。イヤホンから流れるラジオの内容は、何の話をしているかなんてもう分からなかった。スマホの画面を開いてから通知を確認していると、もう最寄り駅に着いてしまった。いつも帰りの電車はこんな具合にあっという間に感じるのだ。電車から降りると、冷たい空気がまた私の肌を撫でる。やっぱりこれが心地いいんだよな。


ここから大体10分くらい歩いて帰る。歩くことは嫌いじゃない。ラジオも音楽もいいお供になるし、こんなことがないと外に出る機会が圧倒的に無いから。夜勤明けでなんとなく体が固まっているように感じる。歩いている時は腕を少し大きめに動かすようにしている。そうした方が開放感を感じるから。今日は本当にいい天気だ。


家に着いたら、荷物を置いてすぐにお風呂に入る。誰もいないすっからかんの家にひとりだけ。ここでも開放感。湯船には浸からずにシャワーで済ませたあと、パジャマに着替えて歯を磨く。それから髪を乾かして、またラジオを流しながらベッドに入る。そしたらいつの間にかいつも寝ているのだ。




これが私の夜勤明けのルーティン。

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