第6話 出逢いのち商人ギルドにて

本を読み終えた俺は商人ギルドに向かった。



デウスが言うには商人をするならギルドで身分証明としてギルドカードを作るのが良いということだ。


俺としても身分証明出来るものが欲しかった所だ。


転移してきたヴェルダー王国は問題ないが、この先、例えばエルフの郷に行き帰ってきた時入国出来ないのは困るからな。



「……でここは何処だ?」


『ふむ、迷子になっておるな』


「迷子になっておるな、じゃないだろ!

デウスが案内するとか言うから歩いてきたってのに」


『我の記憶ではこっちだったんだが……』


「デウスの記憶って千年前じゃねぇか…」



千年前と同じところにあるわけない。


さて、どうしたものか。



「お兄さん、迷子?」


「迷子ってゆーか探してるってゆーか……」



振り返ると美しい女の人がいた。


きめ細かいスベスベな肌に桜の花びらのようなピンクの頬、クリっとした大きなに長いまつ毛、小さい唇にふわふわの髪。


気のせいかな、桜の匂いのような香りがする。


まるでお姫様のようだ。



「…お兄さん?」


「え、あぁ。迷子です」



見惚れてしまっていた。

首をコテンと傾げるそのさまは可愛らしいとしか言いようがない。



「…君は……」


「いたぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


「マリーちゃん!」


「ちょっと迷子になるから離れないでと言ったのに!!……この男だれ?!」


「マリーちゃん、この人も迷子だそうなの。」


「迷子ぉ?レーラに手を出すやからの間違いじゃなくて?」



おっと。とてつもない敵意だ。

確かにこんなに容姿が優れていればちょっかいかけられてもおかしくないよな。



「誤解だ。本当に迷子だ。商人ギルドに向かってたんだが迷ってしまった。」


「なら私が案内してあげるわ!レーラには手出しさせないんだからっ!」


「安心してくれ、初めましてで手を出すようなそんな野蛮ではないよ」


「そう、失礼したわ。私はマリー・エルマリア。冒険者パーティ・グロワールの一員よ。」



グロワール。確かあの国では……


「俺はレイ・シルヴァ。パーティ名、グロワールって良い名だな。どこかの国の言葉で栄光って意味なんだ。」


「へぇ…!栄光、良いわね!!」


「マリーちゃん、私たち早く行かないと…!」


「え、あ!そうよ、そもそもレーラが迷子になるからいけないのよ〜?レイ!ごめんなさい、私たち急いでるの。今すぐ案内するから着いてきて!」


「あぁ、助かるよ、ありがとう」



せわしなく、マリー達は俺をギルドに案内し、



「また会いましょう!冒険者ギルドに来てくれたら会えると思うわ!!」



そう言い去っていった。








商業ギルドとは商人のためのギルドだ。

冒険者には冒険者ギルドがあるように、商人は商人ギルドに登録しないと商人としての仕事が出来ない。


商人ギルドに登録した商人は売買許可を得ることにより、自分で店を持ったり店を持たなくとも物を売ることが可能になる。


しかも商人ギルドのギルド長はおっかないらしく、不正なんてしようものならカミナリが落ちるんだそうだ。



「しっかしこれがギルドにゃあ見えないな」



ギルドというにはおんぼろ屋敷のような外観で俺は不安を覚えた。


本当にこんなとこに人がいるのか?



「失礼しまぁす……」



恐る恐る入ると、外観からは想像もつかないくらい人で賑わっていた。


これ皆商人かよ?



みなではないぞ。商人もいるがギルドに依頼に来た顧客もいる。それに商人といってもカテゴリーがあるからな。薬剤商人は調薬師に。奴隷商人は貴族に。といったようにな。』



なるほど。



「じゃあ俺は何の商人になるんだ?」


『それを今から調べるんだぞ』


「調べる?」


『ギルドでは登録時に適正検査も行う。適正がない者が紛れ込んだりしないようにな。』


「じゃあ適正のない商人にはなれないってことか?」


『いいや、それは違う。あくまでもこの適性があるから向いてるぞってことだ。』



何の商人になりたいとかないし、なんでもいいか。


俺は受付へ向かった。


「すみません。商人登録したいんですけど。」


「はい、ギルドカードはお持ちですか?」


「いや持ってないな」


「でしたら、まず新規登録ですね。こちらの水晶に手をかざしてください。」



手をかざすと白く光った。



「ありがとうございます。あなたのスキルは営業と生産でお間違いないですか?」


「あぁ。」



商人ギルドに来る前にステータスボードを隠蔽しておいて良かった。


やっぱり見られるんだな。


創造や飛翔、浮遊なんてスキル見られる訳にはいかない。ましてやLv.MAXなんて見られた暁にはどうなることか。



「次にこちらの紙に名前、種族、年齢を記入して下さい。代筆は必要ですか?」


「大丈夫だ。問題ない。」



称号に世界言語理解があるから聞く・喋る・書く、なんでもできる。便利な称号だ。



「それではこちらがギルドカードになります。このままヴェルダー王国の商人登録にうつります。」


「国ごとに登録が必要なのか?」


「そうですね、他国に入国後必ずその国の商人ギルドで商人登録をするべきだと思います。商人登録は保険になりますので、もし他国で商品を盗まれた、なんて事があった際にその国でも商人登録をしていると、商人ということを証明出来ますし、衛兵達に盗人を探し捕まえてもらえます。」



面倒くさいが仕方ない。



「魔力測定もしますか?」


「魔力測定……?」


「はい、商人の中でも魔力を有している方のみ受けられる受注がございます。」



そうじゃない。俺が言いたいのはこの世界に魔力ってあるのか?


あるんだよな?測定って言うぐらいだから魔力を持ってる人が居るということだしな。


まじかよ、きたー!

俺が魔力あるか云々うんぬんは置いといて魔法使える世界は嬉しすぎる。


これで俺に魔力あったら万々歳ばんばんざいだ。



「魔力測定してくれ。」


「かしこまりました。それではこちらの測定器に手をかざしてください。」



言われた通りに手をかざすと、赤・青・緑・黄・白・黒の順に光った。



「これは……!」











「全魔法に適正があります…!

しかも、魔力は……♾!?」














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