第5話 古書って建国記じゃないの?

コンコン。



扉をノックされる音で目が覚めた。



「はい"…」


扉の前には猫がいた。

いや正確には猫人族か?


もふもふとした猫耳があるが人間としての耳もある。


身長175センチの俺からすると小さな女の子だ。


「眠りを妨げてしまってすみません!

朝食の時間があと20分ほどで終わりますのでもし朝食をとられるなら、と思って。」


なんて親切な子だ。


「ありがとう。頂くよ。」


笑ってそう言うと女の子は顔を真っ赤にして走り去っていった。


なんだ?なんか変だったか?

そんな逃げなくても……、、。


俺は少しショックを受けながら1階に降りた。




(『ふむ。レイは自分の顔の良さに気づいておらんのか。罪な男よのぉ。』)




「おはようさん!兄ちゃん昨日凄く疲れた顔してたけどぐっすり眠れたようだね。」


宿屋の店主夫人が言った。


「おはようございます。昨日は突然だったのにありがとうございました。おかげで疲れも取れていい夢も見られました。」


「そうかいそうかい!一部屋だけ余ってたんだよ、タイミング良かったねぇ。

朝食はスープかシチューどっちにする?」


「シチューでお願いします。」


「あいよ!」



この宿屋【猫の宿り木亭】はとても落ち着いた雰囲気で居心地が良い。


食堂は少しガヤガヤしているものの、部屋にいた時は騒音なんてものはなかった。


宿屋で働いているのは少しガタイの良い店主のフェルナンドさん、元気で声の大きい姐さん女房のようなベルさん、まだ5歳だというのに一生懸命お手伝いをしていて癒しを提供してくれる一人娘のミーナちゃん、そして猫人族で小さな女の子ラミレイちゃんの4人。


昨日今日の仲だが、この宿屋はとてもいい人たちで溢れている気がする。




「はい!お待ちどおさま!!

朝食のシチューセットだよ!」


元気で大きな声のベルさんが持ってきてくれた。


「ありがとう。いただきます。」



パンとシチュー。


温かみを感じた満腹になる朝食だった。





朝食を食べ終えた俺は部屋に戻って古書を読むことにした。


まだ数ページしか読めていない古書に何が書いてあるのか。


そしてデウスとの関係は。








[千年も昔、宇迦之御魂神うかのみたまのかみがこの世の頂点となった。それはこの国の繁栄を意味し、花が咲き誇る如く街は賑わい人は騒ぎ毎夜毎夜どんちゃん騒ぎだったそうな。かくして国はそれはそれは大国となり名をヴェルダー王国と名付けられた。しかし、その繁栄は長くは続かなかったのである。“魔王が勇者によって倒された暁には神格最高レベルのものが頂点となる”という古来より伝承されてきた規定により頂点となった宇迦之御魂神であったが、頂点になるということは同時にその命を狙われるということである。魔王が倒され宇迦之御魂神が統治を始めて5年が経った頃、ある一人の少女が宇迦之御魂神を封印してしまった。それは意図してか図らずか。少女は封印後姿を消し、以後約千年もの間ヴェルダー王国は繁栄を忘れ、文化も衰退しているそうな。]




デウスが封印されたのは命を狙われてのことだし、権力者にたてつく者がいるのはこの世界も同じか…


「なぁ、デウス。この地を統治してたこと覚えてるのか?」


『あぁ覚えているぞ、と言っても朧気おぼろげでしかないがな。』



さらに読み進めると驚くべきことが書いてあった。


[私は導く者。宇迦之御魂神が封印されし本土南東に位置する祠にて封印呪を本に移し歩き継承者を探す旅に出ていた。しかし旅初めは1600歳であったエルフの私も700年も経てば2300歳と寿命が迫っていた。そして神からのお告げを受けた。『今から300年先一人の男子おのこが封印を解き、継承者となり、世界を救うだろう』と。私は最後の賭けに出た。本を売りいつかの継承者に導かれるよう魔法をかけた。きっと今この本を読んでいるそなたが継承者だろう?そなたに忠告だ。宇迦之御魂神を封印した者の末裔はそなたに接触してくるだろう。その時………………と唱えよ。助けが参るだろう。


千の時を超え継承されし者へ

エルフのさとへ訪れた際にはこの名を使うが良い

フリージア・シスターニャ]



本の作者は300年も前に亡くなったエルフだった。これは建国記ではなくエルフの手記、しかもそのエルフは“導く者”の先代らしい。


俺が世界を救う?生粋のモブがちょっと出来のいい商人になった所で世界は救えないだろ。


しかし、エルフの郷は気になるなぁ。

エルフ…エルフかぁ……。



エルフの寿命は約2000年〜3000年と言われる程長寿で、弓の達人だ。

そしてなんと言っても皆かわいい!!

男のエルフなんて俺からしたら需要はないが、素晴らしくイケメンだ。



いつか行ってみるかな。エルフの郷。















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