第4話 商い神と千年前の君
マツリカ・アイーダは千年前の人間だ。
今も生きているなんてことはないはず。
「おいおい、それは無理な話だろ?
千年も経ってるんだ流石に死んで…」
『生きておる!!』
「……は?」
『生きておるのだ!分かるのだ!我はひと目会いたいだけなのだ。』
「なら、自分で会いに行けばいいだろ?」
『それは出来ぬのだ。』
「なんで?」
『我は神様だから。神様は地の人々に影響を与えすぎるゆえに好き勝手出来ぬのだ。』
神様にも神様なりの
「ほんとにそのマツリカ・アイーダさんは生きてるの?」
『生きておるとも!我の持つ彼女の宝玉が光っておるのだから!』
「宝玉ってなんだ?」
【宝玉。それは古来から伝承されし魔法を付与したものである。
身近な者を危機から遠ざけるため所持されることが多く、昔は宝玉のおかげで人々の平和は保たれていたと言っても過言では無い。
しかし、魔王が誕生してからは宝玉は意味を成さなかった。
魔王が認識阻害の魔術を使ったからである。
その為、宝玉が光っていないのに危機が訪れてしまい大切な人を失い嘆き悲しむ人達で溢れかえったという。
そして千年前、勇者マツリカ・アイーダが魔王を倒し認識阻害の魔術は消えた。
だが、もう宝玉の存在は忘れ去られ今では消えゆく伝承だという。】
本に記述されていた宝玉の話だ。
この商い神は人々が宝玉を手放し存在を忘れ去った今でも一人宝玉を持っているのか。
「その宝玉が光ってるならマツリカ・アイーダさんは生きてるんだよな?」
『そうだ。生きておるのだ。我が気づいた頃にはもう封印されておったから何も出来なかったのだ。』
「封印って誰に封印されたんだよ」
『それが分からぬのだ。千年前この地を統治していた我は突如黒い闇に纏われそこからは何も分からぬ。意識がハッキリとしたのは500年ほど前のことだ。』
「じゃあアンタを封印した奴も突き止めないとな。いいぜ、契約してやる。そのマツリカ・アイーダさんって人に会わせてやるよ。」
俺は商い神と契約することに決めた。
だって見るからに商い神恋してるじゃん?
千年前の魔王を討伐しに去っていった女が生きているならひと目会いたいなんて。
29歳、俺、号泣。
俺にはこの世界で生きていく力が必要で、商い神には想い人を探したいという願いがある。
きっと協力関係を築けるだろう。
『心から感謝するぞ。では始めよう。』
『──我は商い神
我の力を乞う者よ、汝の名を述べよ。』
「レイ・シルヴァ!」
オレンジのような温かみのある色に包まれて俺の左手に刻まれた紋章はじんわりと暖かくなった。
『これで契約は結ばれたのだ!
早速、自分のステータスボードを見ると良い。』
「ステータスボード?」
『なっ!お主ステータスボード見ておらんのか?勇者召喚された時に見るのではないのか。』
「いや、あの時は神聖教会の鑑定師とかいう奴が鑑定を……」
『ふむ…とりあえず声に出さなくてもよいから“ステータスボード”と唱えてみるがよい。』
俺は商い神に言われた通りに唱えた。
“ステータスボード”
名前:レイ・シルヴァ(宮村将志※隠蔽)
種族:人間
年齢:19歳
称号:異世界に転移されし者、商人、導く者、世界言語理解
スキル:
営業Lv.MAX 鑑定Lv.MAX 心眼Lv.MAX
創造Lv.MAX 生産Lv.MAX 鍛冶Lv.MAX
浮遊Lv.MAX 飛翔Lv.MAX 隠蔽Lv.MAX
なんだこれは?
俺の目がおかしいのか?
いや、何度見てもスキル欄に創造やら鑑定やら、飛翔?空飛べるのか?
「なぁ俺のステータスどうなってんだ?」
『ふむ。我と契約したからじゃないか?
創造と鑑定、心眼、浮遊と飛翔は我のスキルだな。』
「にしても、Lv.MAXってなんだよ!しかも生産と鍛冶、隠蔽は俺が元から持ってたって言うのかよ」
『我がLv.MAXだから契約したお主もそうなのだろう。しかし、ほかのスキルは元から持っていたものでは無いのか?』
「俺が城で鑑定師に言われたのは、営業だけだぞ?あと称号に“導く者”ってあるけどなんだ?」
『それについては我も分からん』
「ん?しかも年齢19歳だって?29歳の間違いじゃないか。」
『いいや、お主は19歳であろう?爽やかな好青年の
若返っていた。
10年もの歳月が巻き戻ったというのか?
しかも俺の本名書いてる!勝手に隠蔽かかってるけど…!
様々なことに驚き疲れた俺は一旦寝ることにした。
何事も受け入れるには時間がかかる。
とりあえず睡眠だ。明日考えよう。
【猫の宿り木亭】という宿で宿泊をすることにした。家族で経営しているらしく、子供がお手伝いをする姿を微笑ましく感じたあと、ベッドにダイブした。
流石に今日は疲れた。
色々ありすぎた。
俺はふと机に置いた商い神が封印されていた本に目を向けた。
すると、何故か本のタイトルが読めるようになっていた。
【導く者
ステータスに“世界言語理解”ってのがあったからその称号の影響か?
導く者って俺のステータスにある、、
ってか
『我だな!』
そうだ。こいつと契約する時に確か言っていた名だ。
「商い神と古書はどういう関係だ?」
『我にも分からん!
それよりもその呼び方どうにかしてくれないか?』
「分からんって…。
呼び方…名前…ねぇ、、デウスはどうだ?
俺の居た世界の一種の言語で神様を意味するんだ。ちょっと安直だけどな。」
『デウス…デウスか。良い名だ。
我はデウスだ!!』
そう言ってデウスはワハハと笑っている。
気に入ってくれたようで何よりだよ。
まぁそれよりも、だ。
「古書にデウスの
『うーむ。しかし我はそんな本知らんぞ?』
「仕方ない。明日朝から本読むか。とりあえず俺は寝る。」
『そうしよう。沢山驚かせてしまったからな。ゆっくり寝てくれ。』
ヴェルダー王国に来て1日目。
神と契約。
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