第3話 怪しい古書店

その古書店は外観通りと言ったところか、店内も怪しい雰囲気だった。

本屋にしては少し薄暗く、どんよりとした空気が流れていたが、本の量だけは多かった。

店員らしき姿も客の姿もなかったが、とりあえず俺は目の前にある一冊の本を手に取った。



【زعيم أوكانومي الروح الله】


うん分からん。なんて書いてるんだ?

興味本位で開いてみると…


『千年も昔、أوكانو -الروح الروحがこの世の頂点となった。それはこの国のازدهارを意味し、花が咲き誇る如く街は賑わい人は騒ぎ毎夜毎夜どんちゃん騒ぎだったそうな。かくして……』



いや日本語なんかーい。

所々読めない所はあるが、パッと見た感じこの国の成り立ち、建国記っぽいな。


今のところこの国を拠点にするしかないし購入しておこう。



「お買い上げですかな?」


「うおっ!」


ビターン!!


突如背後から声をかけられ心臓は跳ね上がるわ鳥肌が立つわ腰を抜かしてコケてしまった。



「おっと…!これは失礼つかまつりまして。

わたくしこの古書店の店主をしておりまする、バルモンド・エルフィという者ですな。」


「あ、あぁ。これはご丁寧にどうも。俺は…」



待てよ?これ名前なんて名乗るべきだ?

改名しといた方が良いか…?


「俺は、レイ・シルヴァだ。」



レイ・シルヴァ。

俺が大学生の頃ハマったゲームのキャラクターだ。とにかくかっこいいキャラ。

そんな主人公になれっこないけど、名前くらい真似したっていいだろ?



「レイ・シルヴァ殿、その本お買い上げ頂けるのですかな?」


「え、あぁ、いくらだ?」


「240ヴェルですな」



俺はさっきお釣りで貰った銅貨で300ヴェル払った。


「お買い上げありがとうですな。

青銅貨せいどうか6枚のお返しですな。」


新しい情報だ。

青銀貨1枚=10円か。


「ありがとう、また来るよ」




俺は早速古書店で買ったタイトルの読めない本を読みはじめた。



が、しかし!

ただの建国記だと思っていた本から何かが飛び出した。


すると俺の左手を纏い、左の手の甲に紋章のようなものが浮かび上がった。


え、これ呪いとか?

まさかあるわけないないない!

そんなはず…



『そなたを待っていたぞ』



頭に声が響いた。


やっぱりこれは呪いか?


まじかよ最悪だよ。

ただでさえ右も左も分からない状態だってのに呪いとかありえない。

ていうかあの店怪しかったしなぁ。

本が240円て安すぎるよな。

安いには安いだけの理由があるって事か。

あー、失敗した。どうするよ?

呪いとかって教会なら解呪してくれるのか?

だけどなんてったって金がないしな。

所持金9560円だぜ?

教会とかって高いって言うしな……。



『…い!…おい!おい!おい!!!』


また頭の中で声が響く。


われは呪いなんかではないぞ!全く失礼な奴だ!』


「…お前誰なんだよ」


『なっ…!お前とはまたまた失礼な奴だ!

こんな奴に我は助けられたというのか!!』


「助けられた?」


『そうだ!我は千年前に封印されてしまった商い神あきないがみなのだ』


「商い神…。」


『おぬし商人であろう?』


「そうみたいだな。

勇者になんてなれっこないわけだし。」


『なんと…!勇者召喚で呼ばれた異界のものなのかお主は!なるほどなぁ、だから我が惹き付けられたのか…。』


「どういうことだ?」


『ふむ、よぉく聞いておけ。千年前…』



っと、商い神の話が長かったので要約すると。


商い神がこの地を統治していた千年前にも勇者召喚が行われた。

その召喚でこの地に舞い降りた女がいた。

名はマツリカ・アイーダ。

彼女は日本という国からやってきたと言い、素晴らしい食文化を教えてくれた。

商い神は彼女の持っている知識を商いにしないかと言ったが、勇者だった彼女は魔王を討伐するのだと言い去っていったという。



「で、何がなるほどなんだ?」


『ここまで聞いても分からんのか!

我は日本から来たというお主に惹き付けられあの書店で出会ったというわけだ!』


「はぁ…」


『我がお主と契約すればお主は商人として素晴らしい才を手に入れるだろう。

どうだ?我と手を組まないか?』



商人として素晴らしい才ね。

この国で、いや、この世界で生きていくならあって困らないだろう。しかし……



「それって俺にリスクないよね?」


『ギクッ…………』



今ギクッとした?したよね??

絶対何かあるじゃん。

あー何も考えないで契約しなくて良かったー。



「契約するならちゃんと規約は教えてもらわないとね。当たり前のことでしょ。」


『ふぅ…お主にゃ叶わん気がするな。』


商い神はやれやれといった顔で続けた。


『我と契約すれば商人として素晴らしい才を手に入れる。だが見返りとして我の願いを叶えて欲しいのだ。』


「願い?」


『我の願い、それは……』






『マツリカ・アイーダに会わせて欲しいのだ!』




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