第2話 やっぱりハズレですよねー。

営業?


そんなことある?




7年間やってきて芽が出なかったあの、営業?


俺が人生のどん底に落ちた原因の、営業?



なんでだよ。もっとあるだろ何か。

え?勇者召喚だよね?称号:勇者とかないの?



「スキルは営業、称号は商人……ですね」



商人!異世界に来てまで営業!

どういう事だこれは。


詳しいことは分からんがこれは相当ハズレなんじゃないのか?

勇者召喚てそう簡単に出来るものじゃないだろ、こんな大掛かりなもの。

ていうか、勇者召喚で召喚される人って大体チートなんじゃないの?



俺がこんなに動揺しているのには理由がある。


俺はラノベ小説が好きでよく読んでいた。

異世界系の小説は特に俺好みで大体の知識はそこでつちかっている。チートって言葉とか。



気がつけばあんなに湧き上がっていた歓声は1ミリたりともなくなっていた。



「どういうことじゃ!!」



突然大声がしたその先には明らかに王様だと分かる王冠を被った人がいた。



「勇者が召喚されるのではなかったのか!」


「はい……そのはずだったんですが…」


「商人とはなんじゃ!使いものにならん!ハズレではないか!!!」



はぁ、王様、おこじゃん。



「世が待ち望んでいたのは勇者である!よって、ハズレの商人など追放してしまえ!!」



そうですよねー。

やっぱりハズレですよねー。



にしても、展開早いな。

会社クビになる時も今追放される時も俺の言い訳ターイムなんてないわけで。

まぁモブだから仕方ないか。



そんなこんなで城から追放されしまった訳だ。



この世界の知識ろくに無いのにどうやって生きていけってんだ?

追放する時の衛兵が俺に同情したのかいくらか金を持たせてくれたが、これの価値も分からん。

さて、どうしたものか。



立ち止まって考えては時間が経つだけだと俺は歩き始めた。


少し歩くとそれはそれは賑やかな場所に出た。



「いらっしゃーい」


「冒険者の兄ちゃん!肉串1本どうだい?」


「うちの野菜は美味しいぞ〜」



所謂いわゆる、商店街のようなものか。


人口密度も中々のものだ。



「肉串、一つください」


まずは腹ごしらえといこう。


「あいよ!200ヴェルだよ!」


200ヴェル。うーん、分からん。

そして俺は策に出た。


「いくらあったかな〜…」


そう、いくらあったか確認するフリをしてお金の価値を測るという策だ。


「お!銅貨2枚でいいんだが白銅貨はくどうかしか持ってないのか!なら銅貨8枚のお返しだ!まいど!!」


なんと親切な人だ。

200ヴェルが銅貨2枚。

つまり元いた世界で言うところの銅貨1枚=100円、白銅貨1枚=1000円て所かな。


おっちゃんの親切のおかげで今の所持金が明白になった。


俺に同情した衛兵から貰ったお金は白銅貨10枚。つまり全部で1万円だ。


まぁ情けをかけられて渡された額ってわけだ。

残り9800円で何するかね…。




先を進むと如何いかにも怪しい古書店が見えてきた。


俺は前述の通り、ラノベ小説が好きだった。

というより、本自体が好きなのだ。


所持金9800円の俺はそんなことお構い無しにこの世界にも本屋がある事に目を輝かせ、入店した。





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