営業スキルで最強の商人から始まる物語〜結構稼げるんですよ、これが!〜

志悠 いろは

第1話 異世界で営業ですか?

アルバート・アインシュタインは言った。



『人生は自転車に乗るようなもの。

バランスを取るには動き続けなくてはいけない。』







Fラン大学を卒業後、何が起きたのか一流企業に運良く就職、営業マンになって7年を迎えた俺・宮村 将志まさし(29)は今、人生のどん底にいた。


『将軍のように人を惹きつけ高く強いこころざしを持つ人間になるように』と名前に込められたこの意味は俺には全く似合わない。


名前負けさながら人を惹きつけるようなリーダーシップをとる人間では無い訳だ。


29歳、営業7年目にして営業成績は最低ライン、新入社員には契約数をぶち抜かれ、部長には毎度のごとくため息をつかれ、更には課長に「君、名前なんだっけ」と言われる始末。


そう、俺は生粋きっすいのモブなのだ。


よく、なんであんな何も出来ない奴がこの会社に入れたんだ?って奴が俺だ。


そんな生粋のモブの俺が人生のどん底にいる理由。それは……



「君がやっと契約できた島田建設さんがね、やっぱりなしでと言ってきたよ」



俺が今月頑張ってやっともぎ取った島田建設との契約。

契約を取ってきた時は流石の部長も課長も俺に対し


「君が部下であることを誇りに思うよ」


なんて言っていた。

それだけ気難しい営業先で、ベテランの先輩もあそこにだけは営業すら出来ないとボヤいてたくらいだ。


しかし気が変わって契約を白紙にしたいと言われたらしい。



「どうしてくれるんだよ!

島田建設さんは君からの連絡もあまり無いと言っていたけど関係維持はしていたのか!」



返す言葉もございません。

契約が取れたことをいい事にあぐらかいて寝てましたなんて言えっこない。



「すいません、、」


「はぁ君ってやつはどうしてそんなに無能なんだ!君には何ができるんだ?」



課長、大変ご立腹でございまして。



「失礼するよ」



突然営業部にやってきた人物。

それは……



「社長!すいません、この度はわたくしの部下が…」


「君が宮村くんか」


「は、はい…」


「即刻クビだ!今すぐこの会社から立ち去ってくれ!!」



あーあ、社長も激おこ。


営業は本来、契約を取るだけが仕事じゃない。


相手の欲しい情報を的確に伝え契約し、その後も関係維持の為のゴマすりを忘れては駄目だ。

新規事業の際には優先的に取引をと新しい契約を持ち込み首根っこを掴んで置かなければいけない。


それを、俺は放棄していたわけだ。


仕方ない。俺には契約をとった時点でやる気が失せていたのだから。


やれやれと荷物をまとめて会社を出る。

と、同時に通知音が鳴った。



『私たち別れましょ。

クビになった貴方に着いていく気はないわ』



同じ会社の彼女からのメッセージだった。



こうして俺は一瞬にして、職も恋人も失い人生のどん底だった訳だ。









まぁ、その上“異世界転移”だとか何とかで訳の分からないオッサンが目の前にいる。



オッサンの言う話からすると、ヴェルダー王国という国が勇者召喚をするらしく、丁度いい人間を探していたら人生のどん底にいる俺を見つけたから連れてきた。ということらしい。



「はぁ、それで?俺はなにするんですか?」


『なにも向こうで教えてくれるわい。じゃあの〜!』



そう言って俺はヴェルダー王国とやらに召喚された。



いや適当すぎんか?

生粋のモブなんてどうでもいいんだろうけど、勇者召喚でこれから主人公になるってのにその対応はねぇだろ。




「勇者召喚……成功です!!!」


その一声で歓声が湧き上がる。



29年間生きてきてこんな事初めてだ。


人生のどん底にいた生粋のモブは、異世界転移で主人公・勇者になりました。ってかー!



「初めまして、勇者様。

私は神聖教会で鑑定師をしている者です。

早速、鑑定しても?」


白い羽織を着用し、顔は下半分しか見えず、男なのか女なのかも分からない奴がそう言い近づいてきた。


「あ、あぁ」


さて、勇者召喚されたんだ。

スキル的な何か付与されてるんだろう。


「…………ん?んん?」



鑑定師が言った。



「あなたのスキルは…………営業です。」
















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