第13話 ガルさん

「さて、ユージーン君。君の修行をやるという話だが、まずダンジョンに潜ってもらう。君がどれだけの魔力と剣の腕を持っているか目で確認したいからね。」


「一人ですか?」


「いやいや、まさか。3人で行くんだよ。」


「よかったです。」


「ユージーン君、そのおじさんいらないよねぇ?」


「いや俺がいないと実力を確認できないでしょうが。なんだおまえ俺のこと嫌いなのか?」


「いや、嫌いじゃないよ。気に食わないだけ。」


「何が気に食わないんだ、まったく。そもそも俺らあんまりかかわりないでしょうが。」


「覚えてない!?!?」


「あれ、なんかあったっけ?」


「はぁぁぁ......。もういいです。」


「ごめんよ...おじさんもう記憶力が...。と、とにかくダンジョン行こう!ダンジョン!」


「そ、そうですね!行きましょう!」




 こうして微妙な空気なままダンジョンに行くことになった。




 ついたのは山の洞穴だった。森に入る前から見えていたでかめの山のふもとに穴が開いており、その周りには数人の冒険者と多くの騎士がいた。その冒険者は腰からポーションと思しき小瓶やクロスボウを吊り下げていた。珍しいな、クロスボウか。クロスボウは魔物にはあんまり効かないうえに、人にはよけられたり簡単にはじかれたりとあんまり出番がないのだ。


 騎士たちの中には先ほどガルさんの家で見たケイ殿もいた。というかケイ殿、こうしてほかの騎士と見比べても明らかにごついな。前に戦ったヴァルト殿とどっちのほうがデカいんだ?




「報告します!5階層までにグレンゴルドの姿と痕跡は確認できませんでした!」


「そうか。地下組の報告を聞かねばわからんが、ダンジョンの中にはいなかろう。よし、撤収の準備をさせろ!」


「はっ!」


「隊長さん。俺らは探索を再開させてもいいのかい?」


「もう大丈夫だ。時間を取らせてすまなかったな。」


「いやいや、なんか盗賊探してたんだろ?こちらこそありがとうだよ。じゃ、俺らはまたダンジョンに潜るから。隊長さんたちも気をつけてな。」


「ああ、幸運を祈る。」


「報告します!地下3階層までにグレンゴルドの姿、痕跡ともに見つかりませんでした!」


「そうか。よし、撤収だ!これより、トルタヤに戻る!」




「なんか、タイミングばっちりって感じですね。」


「そうだね。一応話を聞いてくるよ。」


「俺も行こう。ユージーン君もおいで。」




「ケイ殿!」


「おぉ、新入りにガルドゥル殿じゃないか。ダンジョン攻略に来たのか?」


「はい。ガルドゥル殿がユージーン君の実力を見たいと。」


「そうか。ならちょうどいいな。グレンゴルドがダンジョンの中に潜んでいないか確認させててな。今終わったところだ。」


「ケイ、2階層の隠し部屋は確認させたか?」


「隠し部屋、ですか?」


「あぁ、2階層には隠し部屋があるんだよ。冒険者から聞かなかったか?」


「いや、聞いてないですね。一応隠し部屋の類はないか聞いたんですが、知らないと言っていました。今日が初めてなんだとか。」


「はじめて、だと?そんなわけないだろ!奴らはクロスボウを下げていただろうが!隠し部屋に入るにはクロスボウが必要なんだよ!」


「な、じゃああいつらは!」


「あぁ、そうだ!早く後を追うぞ!俺も行く!」


「私もついていきます!危ないからユージーン君はここで待っていて!」




 こうして3人は何人かの騎士とともにあわただしくダンジョンの中に駆けていった。なんか大変なことになったな。さて何をしようか。一気に暇になったな。ボーっとしていると一人の騎士がこちらに歩いてくるのが見えた。珍しいことにその騎士は黒い鎧を身にまとっている。




「私は騎士団三番隊副隊長タークィン・カラドスという。君があのゴネリル殿の息子のユージーンかね?」


「はい。アンブロシア家長子、ユージーン・アンブロシアです。副隊長殿が何の用事でしょうか?」


「いや、なに。ただの自己紹介だよ。かの高名なるゴネリル殿の嫡男であるならばいずれ世話になることもあるだろうからな。」


「そうでしたか。これは失礼しました。」


「いいのだよ。初対面なのだからな。」




 なんだこいつは。気に食わない野郎だな。面従腹背というんだったか。何考えてるかわからんやつだな。要警戒だな。にしても俺はどんだけ待てばいいんだ?そこらを散歩でもするか?

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