第12話 レンドリア

「エミリアさんって苗字は何というんですか?」


「レンブランだね。」


「レンブランって...」


「そう、君のお父さんの故郷だよ。」


「え、父上の故郷なんですか?」


「あれっ?知らなかった?」


「はい。レンブランはただ聞いたことがあって。」


「あぁ、君のお父さんの故郷なんだよ。僕の先祖が昔、開拓してできたのがレンブランでね。それで記念に自分に苗字をつけて、ついでに開拓してできた街にも同じ名前を付けたんだとか。」


「へー、そんな歴史が。」


「うん。あ、着いたみたいだね。」


「あ、ここがレンドリアですか。」


「そう、ダンジョンと魔物の森レンドリアだよ。」


「だいぶ大きいですね。」


「なんでか、奥に行くと魔物が強くなるとかで魔物が出現して以来奥まで行けてないんだよね。そのせいで正確な大きさ測定できてないんだとか。」


「理由はわかってないんですか?」


「なんかとんでもない魔力が観測されてるから、やばい魔物の王的な奴がいるとかほかのダンジョンがあるとか言われてるね。特に実害が出てないし被害が甚大になりそうだから確認しないみたいだよ。」


「え、なんかここで研究している魔術師は大丈夫なんですか?」


「あぁ、あの人はとんでもなく強いからな。それにそんなに深いところでは研究してないみたいだしね。」


「そうなんですね。ちなみに何の研究をしている人なんですか?」


「それは本人に聞くといいよ。きっと詳しく教えてくれると思うから。ほら、ここだ。」




 目の前の家は想像通りの森の中の家って感じだった。刃〇の安藤さんの家を想像してくれるとわかりやすいと思う。木造で魔術師の家って感じはしない。どっちかっていうと猟師の家に近い感じがする。そんなことを考えていると中から筋肉の鎧をまとったおっさんが出てきた。こいつが魔術師なわけないよな...?




「あれ?隊長じゃないですか。どうしたんですか?こんなところで?」


「ん?あぁ、近衛のところの新入りか。いや、ガルドゥル殿に用事があってな。」


「用事ですか?あと、新入りじゃないです。」


「うむ。ここらでグレンゴルドの目撃情報があってな。俺ら3番隊が駆り出されたんだが、どうにも手掛かりがなくてな。それでガルドゥル殿のところに、ここらで怪しいやつを見なかったか聞きに来たんだよ。おまえらは何しに来たんだ?あと、おまえ入って1年とかそこらだろ?新入りじゃないか。」


「グレンゴルドの目撃情報ですか。私らはここに修行に来たんですよ。師匠が行って来いって。ちなみにこっちの子が師匠の息子のユージーン君です。一応私らも警戒しておきますね。あと、1年半いますからね。訓練生じゃなくて正規入隊してますから。」


「ほう。ゴネリルの息子か。ちょいと腕前を見てみたいが時間がなくてな。遊ぶのは今度にしよう。あと、新入りって呼ばれたくなかったら決闘でも仕掛けるといい。俺に勝てるまでおまえは新入りだよ。じゃあな。」




「あの人はどういう人なんですか?」


「騎士団3番隊隊長のケイ殿だよ。あの人いっつも煽ってくるんだよなぁ。」


「ケイ殿、覚えました。ちなみに、グレンゴルドっていうのは?」


「最近暴れてる盗賊の頭領だよ。あっちこっちで暴れてるんだけどどうにも足がつかめないんだよね。まぁ近衛にはあんまり関係ないんだけど。」


「盗賊の頭領ですか悪そうですね。」




 中身のない返事をすると中からおじいさんが出てきた。きっとこいつが魔術師に違いない。この見た目で魔術師じゃないことないだろ。そんなこと考えてると中からもう一人おじさんが出てきた。




「爺さん気を付けて帰れよ。帰り道わかるか?」


「大丈夫、大丈夫。ジジィ扱いするんじゃない。」


「爺さんはもうジジィって歳だろ。爺さん今いくつよ。」


「まだ70にもなっとらん。」


「65超えたらもうジジィでしょ。さ、俺の客人も来てるし早く帰りな。」


「どうせお前もすぐジジィになるんじゃ。じゃあの。」


「さて、エミリアとユージーンだったね。おれが宮廷魔術師のガルドゥルだ。よろしく。ガルでいいぞ。」


「あれ?元じゃないんですか?」


「いや、今も一応宮廷魔術師だから。仕事はしてないけど名前だけはおいてあるから。」


「あ、そうでしたか。ユージーン君。このおじさんがお世話になるガルさんだ。このおじさんは怠けて仕事をしてなかったらこんな森まで左遷されたダメ人間だよ。殿とか様とかつけなくていいからね。」


「ひどい紹介だなぁ。まぁ実際つけなくていいんだけど。」


「ガルドゥルさん、これからお願いします。」


「君はお父さんやこっちの生意気坊主と違って礼儀正しいねぇ。いいことだけどオジサン的にはもうちょっと気を抜いて楽にしてほしいかな。」


「では、ガルさんで。」


「うん。それがいい。」

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