第10話 軍法会議当日

「ゴネリル様、軍の使いで参りました。ご同行願います。」


「ああ、少し待っていてくれ。息子を呼んでくる。」


「はい。」


「ユージーン。準備はよいな。」


「はい、父上。」


「馬を出してくれ。」




 こうして、少しピリピリしている親父殿と騎士団司令部に向かった。迎えに来た騎士は全身を鎧を覆っていて顔が見えなかったが、車内ではフレンドリーに話しかけてくれていた。親父殿は終始無言だったが、その騎士は気にせず話しかけてくれていた。




「到着しました。」


「ゴネリル様、ユージーン様、こちらです。」


「ああ、行くぞユージーン。」


「はい、父上。」




 こうして、全身鎧騎士さんについていくと、机がいくつか置かれている部屋に案内された。




「こちらの部屋になります。」


「少し小さいですか?」


「今回の軍法会議は内容が内容だからな。知る人間は一人でも少ないほうがいい。」


「なるほど。」




 しばらくすると、3人が部屋に入ってきた。先頭に煌びやかな冠を戴いた赤いマントに包まれた男が覇気に発しながら入ってきた。その次には入学試験の試験官をやってくれたおじさんが、最後には白金色の鎧を身にまとったイケメンが入ってきた。先頭の男が着席してからほかの人が着席したから、おそらく先頭の男が皇帝ヘクトールだとおもう。




「さて、ゴネリルよ、お前は本当に私を楽しませてくれるな。」


「恐悦至極に存じます。」


「これで2代連続で禁術を使用したことになったわけだが、申し開きはあるかね?」


「ありません。」


「くくく、まぁ、アンブロシアは先代からちとおかしかったからな。俺としては今回の件、不問にしようと思うのだが?そもそもこれが禁術なのは城壁が意味をなさなくなるからで、そこまで使われて困るものではないからな。それに対して魔力もないんじゃ城壁すら超えれなかろうて。ただ使用の禁止はするが。どうだ?ヴァルト、レコア?」


「自分も不問でいいかと。実際に戦ってみたうえでの所感ですがこの歳であれだけ腕が立つなら、学校を卒業するころにはそう簡単に術を奪われるようなことにはならないと思います。それでも学生の間は禁止にしたほうよいでしょう。」


「ヴォルト殿が認めるほどの実力であるなら私も異論はありません。」


「ふむ、そこまで言うなら1つ実力を見てみたい気もするな。よし、今回の件は不問にしよう。ただ...エミリア!」




 部屋に入ってきたのは全身鎧騎士さんだった。




「レコア、今使ってない訓練場はあるか?」


「確か、3番訓練場は使ってないかと。」


「エミリア、3番訓練場に向かってくれ。それとだれも入れないようにすること。」


「はい!」


「さて、ユージーンといったな。俺に実力のほどを見せてもらおう。」


「はい...」


「くくく、そう緊張するな。特に罰などあたえんよ。これで今回の会議は終わりとする。ヴァルトはこのあと仕事が残ってるんだったな。レコア、ゴネリル、ユージーン、行くぞ。」




 こうして、3番訓練場とやらに向かった。




 というか怖ええええええ。ヘクトール様目が鋭すぎますよ。怖すぎて下手なこと考えれなかったな。というか、2代連続で禁術を使用したって言ってたけど親父殿も禁術を使用してたんだな。親父殿がそこまで怒らなかったわけだ。実力を見せてもらうとか言ってたけど決闘でもするのか?お、ついたっぽいな。




「さて、エミリア。お前は確か去年の学生大会の優勝者だったな?」


「はい。」


「よし。鎧はなしにしておこうか。手加減もなしでいい。」


「はい?」


「ん?ああ。言ってなかったか。このユージーンと戦ってくれ。ユージーンの実力を見たいのでな。ユージーン、あれを使っていいぞ。」


「いいんですか?」


「ああ、いいとも。使えるもの全部使うといい。」


「わかりました。」




 全部使っていいって言われてもな。そんなにないんだけど...。お、鎧脱いでる。ん?




「女性?」


「男だよ。」


「あ、失礼しました。」


「別にいいよ。よく間違えられるし。さて、本気で行くよ。」




 まずは様子見になる。エミリアさんは片刃の剣を下段に構えていた。あの空中飛び(仮に「空踏」と名付ける)は不意打ちで出すのが一番効果的だ。多分カウンターで出すのがいいだろう。実力を見せろと言われている以上半端な戦いはできないわけで、とするなら1つ新技でも見せるか。


 剣を上段に構え一息で近づくと振り下ろした。エミリアさんはそれを簡単にはじくと手首を返して袈裟懸けに斬り込んでくる。体勢を崩しながらもどうにか後ろに跳んで避けると、踏み込んで右に薙ぐ。しかしそれも簡単にいなされまたも斬りこまれる。こうして、数合剣を交える。


 隙がなさ過ぎて新技とか出してる余裕ないな。どうにかして隙を作んないとな。ジジィになんか教えてもらってたな。あれ、速攻で決めないといけなくなるからあんま好きじゃないんだけど。というかここだと怒られるかもな。


 エミリアさんが俺の剣をはじくとともに後ろに下がる。こうして、距離をとると全身の身体強化を右足に集中させ全力で地面を踏みぬく。




 ダアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンンンンンン!!!!!!




「うおっ!」


「なに!?」




 轟音とともに地面に大きくひびが入る。そして体制を崩したエミリアの首めがけて左腰から剣をふりぬく。エミリアはどうにか剣を割り込ませるが、




「エミリア、受けるな!」


「!?」




 どうにか、エミリアは体をのけぞらせ剣を避けることに成功する。




「父上!」


「あ、すまぬ。」


「ユージーン、許してやってくれ。エミリアはゴネリルの一番弟子なんだ。」


「いや、私は息子なんですが...」


「ところでなぜ受けるな、と?」


「剣の軌道と鏡写しになるような位置に、魔法の刃があった。剣を受け止めたら反対から魔法の刃に斬られるという寸法だな。ただ消費魔法量が多めなことと事前のマーキングが必要なこと、あと私のような魔法を見れるものには仕掛けがばれること、避ければ簡単に対策できることなどの問題点はあるが、初見にはかなり刺さる点はあるな。」


「その通りです、父上。」


「面白い小技を見つけるな、ユージーン。さて続きと行こう。」


「ヘクトール様、練習場がここまでがたがたですと決闘どころではありません。それに、ユージーンの魔力も切れかけのようですのでここで終わらせるほうがよろしいかと。」


「ふむ、そうか。ではまた今度決闘してもらうとしよう。今日のところは帰ってよいぞ。」




 ふぅ、何とかなったな。ただ、魔力切れと疲労でもうくたくただよ

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