第9話 軍法会議前日

「これ、僕大丈夫なんですかね...?」


「どうなんでしょう...私も随分と生きてきましたが禁術なんてものがあること自体、今初めて知りましたから」


「父上なら何か知っているのでしょうか?」


「おそらく。ゴネリル様は近衛騎士団副団長であらせられますから知っていてもおかしくないとは思います」




 こうしてドロシアさんと迎えを待つこと約一時間。うちの馬車がやってきた。




「あ、父上。すみません。」


「話は家で聞こう。」


「はい。」


「付き添い感謝するぞ、ドロシア。」


「有り難きお言葉でございます。」


「馬を出してくれ。」




 親父殿、感情を表に出さな過ぎて怒ってるのかどうかもわかんないな。にしても、禁術だったのか。あのジジィにあとで問いたださないとな。




(おぬしが聞いてこないのが悪かろう)




 というか、このイマジナリージジィはいつまでいるんだ?さすがにちょっとうっとうしくなってきたんだが。もしかしてこれずっとこのままか?というかなんで出てきたんだ、こいつ。




(こいつとかいうんじゃない。あと、イマジナリーじゃないからな、わし)




 ん?




(だからイマジナリーじゃなくて本物としゃっべてるんじゃよ)




 え、なんで?なんでそんなことになってんの?




(いや、さすがに、禁術って伝えずに教えた技で軍法会議にかけられるのはかわいそうかなと思ったからじゃ。特別措置ってやつじゃの。)




 え?そんなことしていいの?というかどうやってやってんの?




(質問が多いのぉ。ちいとは自分で考えんか。まぁ、今回は考えてもわからんだろうから教えるが。先ずさっきも言うたとおり、これは特別措置じゃから普段はこんなことせん。われらがむやみに干渉することは禁じられとるからの。ただ、そもそもおぬしはスキルで普段から会うことができるから許されとるって感じじゃの。この会話もおぬしのスキルをこう上手くいい感じに流用して成立させとるんじゃ。)




 なるほど。なんかだいぶイラっとすること言われた気がするが気にしないでおくか。ジジィの話を聞く感じこのふざけたスキルってだいぶ特殊なのか?よく考えてみればいつでも神にあえるっておかしいものな。




(まぁ、そうじゃの。特に実害がなさそうだから評議会でも可決されたが、おかしさで行ったら過去一じゃの。)




 あ、やっぱりそうなんだ。ちなみに過去一って今までどんな変なスキルがあったんだ?




(個人情報保護法のもとに秘匿されとるの。)




 ケチな奴らだ。




 そんなことを考えたり話したりしていると家の前についていた。家に入ると親父殿が口を開いた。




「さて、ユージーンよ。どこで禁術を知ったのか教えてもらおうか。」


「いや、知ったっていうか、思いついたんです。」


「空中を固定し足場にするということをか?」


「はい。」


「それが本当であると自らの誇りに誓えるな?」


「はい、誓います。」


「そうか、そこまで言うのなら信じるとしよう。軍部の使いはおそらく明日には来るだろう。それまで家から出ることを禁ずるがよいな?」


「はい、父上。」




 罪悪感がすごいー。誇りに誓うとか言っちゃったよ。せめてこの嘘が露呈する事態だけは避けないとな。にしても親父殿、そこまで怒ってる感じじゃなかったよな?なんでだ?

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