第5話 幼少期

 今日は俺の5歳の誕生日。長かった、まじで長かった。軽く今までを思い返してみるか。




 0歳~1歳


 マジで暇だった。特に最初のほう暇だった。起きては寝て起きては寝て、たまに漏らしたら全力で騒いで騒いだらまた寝て、起きておなかすいたらまた全力で騒いで、どうやらうちの家はそこそこデカいらしく全力で騒がないと人が来ないのだ。空腹のときに誰も来ないのはマジできつかった。体感で3日くらい待たされた。いやまあ実際は30分とかそこらだろうが、このころの30分はマジできつい。しかも、そんな状態で全力で騒がないといけないのだ。さすがに死ぬかと思ったよね。全然頭回んないし、たまに来る両親に手を伸ばしたりする意外にすることがなかった。


 半年もすれば立てるようになったから若干楽しくはなったが、それでもだいぶ暇ではあった。基本はいはいだし、ブロックをガチャガチャやるくらいしかやることがなかった。ただ立てるようになったときはさすがに感動したな。泣くかと思った。


 離乳食はくそまずかった






 2歳


 2歳はまだましだったな。お散歩できたからな。言うて草むしりと虫いじめくらいしかやることなかったがそれでも回らない赤ちゃん頭にはだいぶ楽しかった。それ以外はまぁなんもなかったな。


 あと言語を理解できるようになった。話せるようになったのはマジでデカかったな。


 やわらかいご飯になったのは救いだったな。


 もらったあのくそ能力は発動しなかった。






 3,4歳


 この時期はそこそこ楽しかった。


 まず妹ができた。どうやらフィリアというらしい。フィリア・アンブロシアになる。したがって俺はユージーン・アンブロシアがフルネームになるらしい。これがばかかわいいのだ。前世で一人っ子だった俺にとっては念願の妹なのだ。まずこれが楽しかったポイント1つ目。


 次に町にお出かけに行けたのだ。いや、あれは町というより街?都市?そんなレベルでいろいろとでかかった。くそでかい城壁に、負けず劣らずの城郭。あきれるほどでかい公園に、何これっていうくらいデカいショッピングモール。異常な科学の発達の仕方をした地球には及ぶべくもないが、それでもかなり大きい。多分佐賀にはこの大きさのものはないな。いや俺が小さいからめちゃくちゃ大きく見えてるというのはあるが。これが楽しかったポイント2つ目。


 しかもそのショッピングモールには剣やら鎧やらがショーウインドウに所狭しと並べられているのだ。大歓喜である。あれには恥も掻き捨てて年甲斐もなくおねだりしてしまったね。まぁ、それのおかげで子供用の小さい剣を買ってもらったので結果オーライだったけど。ちなみにこの時買った剣に“鳳雛”という名前を付けたんだが、1週間で折れちゃってねさすがの俺も泣いたよ。


 あと、本を読めるようになったのもデカかった。そのおかげで、この世界のことがなんとなーく分かった。これが楽しかったポイント3つ目。


 どうやらこの世界には3つの大国とその周りにある小国たちがあるらしい。まず国土が最も大きいのが“ステイン王国”で、8代目のアルス・ステイン王が統べる国。どうやら、ここにはほとんど人間しかいないらしい。特に住人による差別とかはないが、亜人がいないのは立地的に亜人の国から一番遠いのと隣の国の影響によるものだという。


 その隣の国というのが、俺の住んでいる国“ネクタル帝国”で、13代目のヘクトール・ネクタル皇帝が統べる帝国。この国はこの世界で最も歴史ある国だが、どうやらこの国の皇位継承の仕組みは特殊らしく、ある程度の血のつながりがある人間の中で最も強い人間が継承するシステムらしい。ちなみにここは亜人たちのいる国と一番近く、基本的に亜人だろうが何だろうが関係なく商売を行うし、先代の皇帝が亜人に対する理不尽な差別を禁止する法律を作ったことで亜人たちにとって最も商売や交流のしやすい場所となっている。これが、ステイン王国に亜人が流れない理由で、ステイン王国では法の制定まではなされていないうえにもう1つの大国から流れてきた人間からの差別は存在するからである。さらにステイン王国はその膨大な土地を生かした政策で、食料や生活必需品の自給率がかなり高いらしく輸出入に頼る必要がないんだとか。その国土はだいたいネクタル帝国の3倍近くになる。ちなみに3つすべての国で唯一ネクタル帝国だけが、亜人の居住を認めており、普通に亜人を見ることのできる。俺は別にけもなーではないので興奮したりはしないが。


 そして最後の大国が“金龍連盟”である。この国、というか連盟は5代目八千代・菖雪の名のもとに提携しており、正直国と言っていいのかすら怪しいが連盟国間は固くつながっており、国とみなすほうが自然なんだとか。亜人に対しては強い敵愾心を持っており、というのもそもそも大半の国は連盟を結んだ理由に亜人によって国が攻め込まれたことが理由になっており、また、直接の経験はなくとも亜人達と同盟を結んだネクタル帝国によって攻撃を受けたという苦い思い出がある国もかなり多いからだ。このことから、亜人に対してはかなり差別心と敵愾心を抱いており、さらにほとんどの連盟国はネクタル帝国に対しても恨みを持っている。それでも、ステイン王国に対しては連盟の助力をしたことや難民の受け入れ先になったことで仲間意識を持っているため国境の開放や関税撤廃などを行っている。ちなみに、盟主は10年を一区切りとし、各13連盟国の間で盟主国の存続が行われている。そのため歴史は最も浅いが人口は一番大きい。


 これだけの確執があって今戦争になっていないのは、30年前の魔族との戦いによるところが大きい。ネクタル帝国、金龍連盟間で戦争を行っているさなか、ステイン王国の東で魔族の王ヴォルフガングが魔族の国の建国を宣言し、その他すべての国に宣戦布告した。ヴォルフガングはまず初めにステイン王国に侵攻し一時はステイン王国の国土の半分近くを占領するまでに至った。これが宣戦布告から約1年の出来事である。これに対し、ステイン王国はネクタル帝国、金龍連盟の両方に同盟の締結を要請、この事態を重く見た両国は人類全体の敵であると判断し同盟を締結。世界同盟と号されたこの共同戦線はヴォルフガング軍と正面からぶつかった。この共同戦線はヴォルフガングには予想していなかったことであり、3か月後には奪った領土の半分を失うこととなった。共同戦線を張るという可能性をヴォルフガングは考えていなかったわけではなかった。もし同盟を結ぶ事態に備えてスパイを両国に潜り込ませ、情報操作を秘密裏に行っていた。しかし、アルス・ステイン王のほうが1枚上手であった。アルス王は内密に両国から人質の交換をさせており、また同時に自分の娘を人質として渡していた。こうすることによって両国に圧をかけ牽制することで裏切りの目をつぶしていたのである。そしてその3年後、ヴォルフガングは必死の抵抗むなしく、10代目皇帝ガレイン・ネクタルの手によって打ち取られた。この戦争により受けた被害の復興という名目でステイン王国が戦争行為を同盟破棄と同時に禁止しており、今に至るというわけである。


 ちなみに、戦争行為禁止の制約は有効期限を40年としており、もう少しで切れるのだが近衛騎士団の副団長をやってる親父に聞いたところ、多分しばらくは戦争はないと言っていた。






 とまぁ、こんな感じの幼少期を過ごしていたわけだがついに5歳になったということであれが始まるのである。そう!剣の訓練だ!早くしろ早くしろとねだっていたら1年早めてもらうことができた。前世ではわからなかったが実は剣の才能はあるかもしれないからな。俺はうっきうきしながら庭に出た。

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