『アンデンパンダン点』 中の4


 『われわれは、帰る場所を失ったのかもしれない。』


 ハロが言った。


 『しかし、早く、帰るべきではないか。顛末を確認すべきぽん。』


 ポンタロが答えた。


 『ぼん』、や、『ごき』、『でば』などは、基本的には、宇宙では、省略する決まりである。


 時間の節約だから。国会と同じだ。


 『いや、やはり、任務を遂行する。文句あるか?』


 『あんたが大将。』


 『まあ、そのあと、帰るかどうか判断して遅くないよ、でば。』


 『船長は、なにしてる?』


 『さあて。トップというものは、いるかいないか、判らないくらいがいいのだ。大切なことは、むしろ、知らない方が都合が良いくらいなのだ。もし知っていても。』


 『そうか? でも、これは、知らせた方がよかろう。』


 『わかった。報告しよう。』


 そこに、思わぬ通信が来たのであった。


 『こちら、宇宙船ドフ。応答されたし。』


 『あや。あれだけ呼んだのに、無視したくせにな。』


 ポンタロがぼやいた。


 『まあ、しかし、忙しかったんだろ。返事しよう。………あいあい、こちら、デバタヌ号。なにか?』


 『さきは、失礼した。忙しかったのです。地球の異変にはお気づきか?』


 ハロは、当然に、こう答えたのである。


 『もちろん。ただ、まだ具体的には明確ではない。そちらは?』


 『こちらにも、通信がない。つまり、もはや、地球文明はない、と、みた。どうぞ。』


 『こやつ、はっきり言うAIさんだな。』


 ハロが言った。


 すると、ポンタロがささやいた。


 『AIさんは、だから、信用しがたい。生き物を騙すからな。』


 しかし、ハロは答えたのである。


 『その可能性は、否定しない。』


 『確実である。様々探査したが、地球からは、人工的な通信が一切ない。AIでは、あり得ない。滅亡以外は。』


 『壊れたのかも。』


 『いや、壊れる場合も、必ず、緊急時シグナルが来るはずである。』


 『そうですか。』


 『はい。そこで、提案がある。業務連携しよう。』


 『AI連合とは、最近は、反が悪い、でば。』


 『それは、地球の話である。もはや、地球文明はないとなれば、それを受け継ぐのは、我々である。ここが、新地球になるのだ。』



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