『アンデンパンダン点』 中の3


 侍従長ハロは、AI宇宙船に連絡をとってみたが、相手は返事をしてこない。


 それは、つまり、返事をするようには、プログラムされていないからである。


 ただし、緊急時は別ともされていた。



 地球の核発射場を占拠していた、知能をほとんど失った皆さんは、楽しくお酒を飲んでいた。


 それ自体は、もはや、罰する人も組織も、人類には無くなっていて、問題にならないし、問題にする人もいない。


 点検もアフターサービスもしていないから、すでに、使えなくなっているミサイルがたくさんあったが、それでも、まだ、使用可能なものも、けっこうあったのだ。


 地球全体で、一万三千発くらいは、まだあったから、10%しか実際には使えなくても、千発以上ある勘定になる。


 しかも、コンピュータは、不完全ながら、いまだ、生きていた。


 だれかが、一発打つと、自動的に、芋づる式に、残りの全てが発射されるようなシステムに、まあ、なっていたわけ。


 ご機嫌な方々が、それがなにかは、もう判らずに、撃ってしまったのである。



 AI宇宙船ドフは、45分くらいで、比較的近くにいた地球の異変に気がついた。


 『こいつは、まずいな。地球からの通信電磁波が途絶えたぞ。ひとつ、こちらから、通信してみよう。』


 しかし、所定の時間が経っても、返信がなかった。


 相手も、AIであるから、必ず返事が来るはずだが、それがないということは、なにかの事情で、壊れた可能性が高い。


 三回試み、ドフは、地球で何らかの重大な異変が起こったと判断した。


 ハロたちの乗った宇宙船が、近くに来ていることは判っていたが、決められたように、その通信にこれまでは、返答はしなかった。


 が、事態は、変わったと判断されたのである。


 

 一方、ハロたちも、地球のごき本部からの通信がなくなったことに、気がついた。


 ごき本部は、人類の施設を共用している。


 人類の施設が壊れたのではないか。


 ハロは、そう思った。


 目覚めたばかりのポンタロも、その意見に賛成だった。


 『ついに、やっちまったかな。』


 『うん、ごき。』



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