『アンデンパンダン点』 中の2
アキバは、エウロパの海を、静かに下っていった。
同じ頃、後から飛び立った、ハロたちの宇宙船が、早くもエウロパに接近していた。
ハロの乗った宇宙船は、非常に早いのである。
それは、シポクたち、ごく少数の、残された人類の叡知が最後に産み出した、プラズマ推進型エンジンを搭載した宇宙船である。
それを最後に、人類は科学技術からは、引退したのである。
次元跳躍とかは、ついに、成らなかった。
ハダカデバネズミの、ポンタロは、たぬきのハロに言った。
『我々のレポートを聴いてくれる人類はもはやいない。』
『シポクさんは?』
『生きているが、それだけだ。』
『なぜ、人類は、知能を捨てたんだい。』
『それこそが、幸福の入口と、気付いたのだろう。』
『知恵は、悪夢の始まりかい。』
『うん。我々も、このさき、悪夢にうなされることになる。しかし、やがて来る、知恵からの卒業まで、まだ、時間はある。始まったばかりだから。』
『人類のもうひとつの知恵のかたまり、AI宇宙船と、連絡はできるのかい?』
『あれは、別の人類団体が作ったんだ。その団体も、知恵を捨てた。まあ、そうした想定にはなっていないが、やってみる価値はあるかも。』
『人類は、派閥を作るからな。』
『うん。我々の社会は、もっと、苛烈だったよ。最近は、グローバル化したがな。女王は、健在だがな。』
『たぬきは、わりに、パーソナルだ。』
『知恵は、なにかと、進歩をさせるが、また、ややこしくもさせる。』
ハロたちの宇宙船は、エウロパの周回を始めた。
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