第51話 カイからの手紙
―――やあ、黒瀬カゲヒサくん。
キミとの話がまとまらなかったときのために、話を聞いてくれなかったときのために、
こうして手紙を用意したよ。
ボクのことはカイと呼んでくれ。
無いと不便だろうからね、名前。
決して怪しいものではないよ、不審者ではないよ、本当だよ信じてね。
怪しさがどうの、等と言い出したら女神に勝るものはない―――と、思っているんだが、どうだろうキミなら、納得してくれるだろうか。
まずキミへ手紙を送った理由から話すけれど、———連中に殺されそうになってね。
つまりボクは、女神に追われている身だ。
そういった意味でシンパシーを感じていただけると、幸いだよ―――。
今、仲間を募っている―――そこでキミの存在を知ったわけだ、黒瀬くん。
キミは複数回、女神を撃退しているという。
実際に女神を相手に立ち回っている―――目撃して嘘ではないと得心がいった。
痛快だよ。
自分が倒したわけではないと、わかってはいても。
ともかく、ボクらは女神の連中に対抗する。
そういう話をキミとしたい。
ボクにも、ここで生きることを優先する仲間がいる。
多くは、女神の襲撃を受け、転生一歩手前まで行きつつも生き延びてきた連中だ。
出来れば直接あって話したい。
これだけだと、一方的な話になると思う。
ので―――キミにとって、今すぐメリットとなり得ることを伝えたい。
女神の指輪に気をつけろ。
連中が襲ってくる時の、転生ゲート―――あれに気づいたかな?
魂の異世界転生に使われる転生ゲートはいつでも出せるわけじゃあないんだ。
女神の使う道具によって出されている。
この場合は指輪で出現させている。
神は人間よりも遥か大きな力を持っているけれど、ボクたちの世界では全力を出せないらしい。なんでもは思い通りに出来ないと、いうべきか。
逆に言えば、指輪だけ注目して見ておけば致命傷にはならないだろう、キミの動きなら。
大した体術だよ、ボクには全くマネできない。
ついでになるけれど、ボクのサングラスや古すぎる古着の数々はナンセンスと思ったかな。ボクは思ってる。
これは、変装でね。
実は女神対策なんですよ、これが……本当に、連中に追われると色々あるんだから、困っちゃうね。
まあ元々、服選びとかそういったセンスは人任せだったんだけどね。
神に追われ過ぎて色々面倒になってしまったよ。
あとはボクのアカウントを付記しておこう。別紙に書いておくよ。
連絡を待っている。
神から命を狙われている場合は、猫の手も借りたい時には、不審者でも何でも頼った方がいい。
これは闇バイトじゃないからね。
本当に信じてくれよ黒瀬くん。
闇バイトじゃないから
本当だよ?
なんてったって、時給は出さないんだからね。
月給も出ないよ。
会ってくれれば、女神協会のことでボクが知る限りのことも伝えられる。
異世界転生の増加についても話そう。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
封筒に入っていたのは、印刷された活字だった。
手書きや悪筆を想像していたが、あの怪しい人間……。
不審者だという自覚はあったようだが。
「カイ……ね」
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