少しだけ贅沢なものが食べたかったのです。

 普段は食べないような、少しお高めの美味しいもの。

 ですから、私が牛タンを食べに行くのは仕方のない行動だったのです。

 開店直後に訪れましたので待つこともなくスムーズに案内されました。

 あぁもう、メニューの金額が私の普段のお昼よりも高い。

 なにか罪悪感すらありますけど、お腹は既に空っぽで何もかもが美味しそうに見えてしまいます。

 メニューの写真が全部魅力的に映る中で、一際目を引いたのが三種盛り定食というメニューでした。

 牛タンなのに三種も何があるのだろうか、と思いましたが赤身だとか熟成だとかの種類があるようなのです。

 心が惹かれます。

 なにせ飽き性なものですから、せっかくの美味しいものを食べ飽きることだけは避けたいのです。

 種類があるのなら味も違うだろうという推測で、その三種盛り定食を選んだのでした。

 お盆に乗って出てきた定食は、素晴らしいものでした。

 ご飯とテールスープ、お漬物にとろろ、そしてメインの牛タン。

 三種の牛タンは小鉢に入った細切れの赤身と、切れ目を入れて焼かれた上牛タンが四切れと熟成タンが三切れでした。

 牛タン、厚みが知ってるものと違います。

 親指の幅と大体同じほど、おおよそ0,8インチでしょうか。

 お皿の端に調味用の塩、ワサビ、塩レモンが置いてあって、他にも醤油や一味で好きなように味を付けられるようです。

 まずは赤身を一口。

 とても美味しい。

 ネギ塩とごま油のタレが良い風味で、ついついご飯が進んでしまいます。

 続いて塩レモンを付けた上牛タンを一切れ。

 歯を立てるとするりと嚙み切れるほど柔らかいお肉。

 口の中に微かな柑橘系の香りが広がって、牛タンの旨味と相まってするりと食べられてしまいます。

 気が付けば茶碗一杯あったご飯が消えていました。

 ご飯のお代わりができるそうなのでもちろん貰います。

 二杯目はとろろをかけて。

 とろろ自体にも味が付いていて、これだけでもご飯が食べられるぐらいです。

 今度はワサビをのせた熟成タン。

 すっと鼻を抜けるワサビと塩味のついたタンが相性良く、箸が止まりません。

 今幸福ですか?なんて聞かれたら、迷わず、力強く、首を縦に振るでしょう。

 とろろご飯がするりと喉を通って、いつの間にやら二杯目も無くなっています。

 どうしよう、三杯目行けるだろうか。

 そんなことは悩みもせずに、ご飯のお代わりを貰いました。

 仕方がない、お肉がまだ残っているのだからご飯が必要なのです。

 きっと食べられてしまう気がするので怖いです。

 お漬物もちょうどいい漬かり具合、テールスープしっかりとした味わい。

 総じてお盆の上にあるもの全てがご飯に合うもので構成されていて、箸の休まる暇がありませんでした。

 たまに贅沢をするのもとても良いことだ、そう思える味でした。

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