第5話 アイドル先輩の水着動画、再生数爆上がり中

 俺はその後も先輩のハダカ――じゃなくて、水着姿を撮り続けた。



 それから一度解散して放課後。

 席を立った瞬間に廊下がざわついていた。

 その原因は分かっていた。

 白石先輩だ。


 彼女が廊下を歩くだけで、周囲は騒然となるのだ。


 そして、視線は俺に向けられる。

 毎回のことだ。



「くそォ! なんで黒井なんだよ!」「ぶっ殺してやる!!(血涙)」「夜に気をつけろよ」「暗殺者を雇うか……」「刺し違えてでも!」「おのれぇ、黒井ィ!」



 ちょっと待て、犯罪の香りがするぞ!

 頼むから殺意を向けないでくれ。


 このままだと死ぬ恐れがあるので、俺は足早に廊下へ。


 白石先輩と合流。



「先輩、こうなるんですから……俺の方から迎えに行きますって」

「あはは、ごめんごめん。どうしても、黒井くんに会いたくて」

「ちょ……」



 不意打ちをくらい、俺はドキッとした。めちゃくちゃ嬉しい。



「赤くなってる~」

「当然です! でも、ありがとうございます」

「うんうん」



 なんだこの下手なラブコメ。

 でもいい。俺はこういう青春を求めていた。可愛い女子と毎日平和に過ごす、なんて日々を――。


 昇降口と校門を抜け、俺は動画投稿のことについて話した。


「そういえば、動画ですが……もう一万再生突破しました」

「え! もう!?」

「適当にチャンネル開設したんですけどねぇ。エロパワーは偉大です」

「ほえ~、そりゃビックリだね。収益化できそう?」

「まあ、余裕でしょう。ハダカになったマズイですが、水着なら問題ないはず」

「おー! これでおこづかい稼げるね!」


 先輩は嬉しそうに笑う。

 そんなにお金に困っているとはな。

 けど、利益は俺にも分配してくれるようだし……簡単なバイトと思えば、やりがいはある。そうだ、先輩の笑顔が増えるのなら、俺は強力を惜しまない。


「ええ、これから毎日がんばりましょう」

「やっぱり、毎日やらなきゃだよね」

「当然です。毎日投稿しないと難しい世界ですからね」


 人気が出れば別だが、最初のうちは毎日投稿を心掛けた方がいい。それは俺の長年の経験が語っている。


「そっか~。でも、黒井くんがいればきっと大丈夫だよね」

「お任せください。ただでさえ有名な先輩を、顔を映さず超有名にしてみせます」

「それは嬉しいな。今のところ顔出しは考えていないし」


 そう、先輩は体だけで勝負しようとしている……って、なんか、ヤらしいな。でも、先輩の高校生離れしたエロボディなら、簡単にトップを獲れるだろう。


 すでに再生数は二万を超えようとしている。

 コメントも増加中。

 こりゃ、すげぇな。

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