第3話 アイドル先輩と急接近

 ギャラリーに囲まれた俺。

 さすがに耐えられなくなって逃げ出した。


 その後、昼休みになってクラスメイトの女子に初めて話しかけられた。


「ねえ、黒井くん。白石先輩が待ってるよ」

「え……」

「廊下にいるから行ってあげて」


 マジかよ。

 俺が呼びだされるとか……やっぱりスマホを拾ったのはマズかったのか?


 とりあえず、廊下へ行ってみよう。


 渋々向かうと、白石先輩が俺の存在に気づいて向かってきた。


「黒井くん!」

「せ、先輩……。その、凄く人が多いですね……」

「ああ、いつものことだよ。気にしなくていいから」


 白石先輩が廊下に来るだけで、人だかりが出来ていた。みんな、先輩に注目している。


「おい、マジかよ。あの黒井に!?」「黒井って超影薄いクセに」「ありえねー! マジでありえねー!」「どうなってんだよ……」「白石先輩の方から男に話しかけるとか、そんな光景見たことないぞ」「なんであんなヤツに」「くそがっ!」


 なんだか、ちょいちょい殺意を向けられている。怖いからヤメテ。


「ここだと人が多いね。黒井くん、こっち来て」

「は、はい……」


 先輩に腕を引っ張られ、廊下を歩く。

 どんどん進んで――なぜかグラウンドに。その隅にある地面に半分めり込んだタイヤに座って一息ついた。


「それでね、今日はありがとう」


 スマホを見せながら、先輩は微笑む。


「いえ、俺はただ当然のことをしただけです。……って、そういえば俺、自己紹介しましたっけ」

「君のことはクラスメイトの人に聞いたから」

「なるほど」


「それでね、お礼がしたくて」

「いや、そんなのいいですよ」

「なんでもいいから言って欲しいな」


 な、なんでもだって!?

 ……って、そんなエロいこととか要求できないな。アイドルに手を出したら、さすがに大問題だ。……となると、うーん。


 あまり浮かばなくて、パッと出てきたことを俺は冗談交じりに言ってみた。


「えっと……そうですね。彼女になってくださいとか」

「そうきたか~!」


 白石先輩は、少しだけ困惑して、でも笑った。


「無理ならいいです」

「ううん。そんなことないよ~。でも、いきなり付き合うのは難しいから、じゃあお友達から」

「そ、そうですよね。分かりました、これからも仲良くしてください」

「うん! じゃあ、まずは連絡先交換だねっ!」


「いいんです?」

「もちろんだよ。男の子で交換するのはじめて」


 おぉ、俺が第一号か。そりゃ朗報だ。

 これから現役アイドルの白石先輩と仲良くなれるのなら、喜んで俺は連絡先を交換する。


 お互いに登録して完了。


 俺のアプリ一覧に『白石 古都音』の名が追加された。

 それからだ、俺と先輩の仲がより深まったのは――。

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