詩たち

青い星

ナレーション　青い星、というのは、あなたの名前だっただろうか、

それとも、私の名前だっただろうか。

【回想】

先生　実は、赤い星よりも温度が高いんです。

クラスメイト　クールだけど冷たいわけじゃないのがいいっていうか、

班の人　知ってるよ、この前、ヒーロー戦隊でもみたよ。

テレビ　青い星は、重い星です。重い星は、激しく爆発を繰り返し、軽い星よりも早くに消えます。

ナレーション　静かに燃える、燃えている。笑っているのに悲し気で、ひとりじゃないのに寂し気で。

【タイトル】

　青い星。

【回想】

少女　君の熱量に惹かれたの。

　　　だから一生、ひとりでいてね

＊＊＊

【銀河】

影アナ　星は、星はひそかに、自分のことをMVなのかもしれないと思っているので、ひとりのときは、そういうつもりで光を震わせてみる。闇の静けさに、そっと後ろを振り返ってみる。夜に包まれながら、うっとりと目を細めてみる。

そうしているときの青い星が、いちばん美しいのだということ。

君がそれを知っていることのほうが、間違っているんだ。

＊＊＊

僕　静かに燃える、燃えている。笑っているのに悲し気で、ひとりじゃないのに寂し気で。

影アナ　星は、自分の出している光に気づいているに違いないんだ。地上で人々が、自分たちの光を勝手につなげたり、眺めたりして夢を見ていること、知っているんだ、絶対に。気づいてない星もいるけど、青い星は絶対に、知っているよ。

ナレーション　唯一無二なんかからはかけ離れた、だって宇宙には何千万という星があるから、だから青い星はきれいなのです。

少女　毎日ちがう星の下で、私、ぐるぐる回って夜空に飛んでいきたいな

【夕方の理科室】

子ども　ふれたら、冷たいですか。

先生　いいや、熱いだろう。

子ども　星だから？

お父さんガニ　ちがうよ。星じゃない、

僕　星じゃないから、

　〈以下５秒間〉水だけが入った水槽・耳鳴り・アイスティーのグラスについた水滴・零れる・理科室のカメ・遠くに見えたオレンジ色すぎる夕焼け・群青・鼻歌・はねた毛先・天使の輪・沈黙の幸福・飴色の机・グラウンドの砂埃・トランペットの音が屋上から伸びる・ローファー・悪態・メガネ・キーホルダー・海・白い砂・街灯・瞳の脇の空間

　ブラックアウト（宇宙かもしれない）

＊＊＊

ナレーション　青い星、というのは、あなたの名前ではなかった。そしてそれは私の名前でもなく、

この世界の、誰のことでもなかったのだった。