第189話 混戦

 189 混戦

 

「着きました!撃ちます!」  

 

 僕はそう叫んで矢を放った。

 その矢はアーチャーに命中してその姿が見えなくなる。

 早撃ちしたからちゃんと急所に当たったか微妙だ。


「フェル、さっき撃ったアーチャーのところ注意してて!まだ仕留めきれてないかも。僕は少し状況を見るから!」


 物影に隠れつつ、下の状況を確認する。


 右側は均衡を保っている。

 左側にソルジャー?2体、1体は瀕死だ。中央はけっこう混乱してるな。


 中央奥から新手だ。これもソルジャーなのかな?普通のオークよりひと回り大きい。


「中央から新手の上位種!2体、左右に分かれて向かってきます!」


 聞こえてるかわからないけどとにかく叫んで、僕は中央の混戦してるあたりのオークの数を減らしていく。

 後ろで待機しているやつから順番に矢を放っていった。


「ケイ!左のアーチャーに動きなしだ!おそらくもう死んでる!」


「フェル、バッグから矢をありったけだして、下にばらまいて!」


 ザバザバ床に矢がばらまかれる、


 取りやすいように並べてくれてるみたいだ。とてもやりやすい。


 中央の物陰から魔力が高まる気配がする。

 メイジだ!でもこの角度からは一撃では倒せない。でもとりあえず詠唱をやめさせればいいんだ!

 チラリと見えてる足を狙って矢を放つ。

ギャァと悲鳴が聞こえた気がした。

 魔力の気配が消える。

 もう1体メイジがいるはずだ、探せ!気配察知を全開にして頭の中でこの混戦を立体的にイメージする。なんか気持ち悪いけど、とにかくもう必死だ。

 

 できることをするんだ。僕にしかできないことを全力で!


 見つけた。中央やや左、オーク3体の影にメイジ!

 少し時間をかけて集中する。メイジの頭が一瞬見えた気がした。オーク3体の中に吸い込まれるように矢が消える。

 気配察知のイメージでは倒れたメイジの頭にしっかり矢が刺さってる。

 

 次だ!

 

 右側奥のソルジャー!

 かわされたけど右肩に深く刺さった、もうまともに剣は触れないはず!


 次!中央、弾き飛ばされたオーク。

 放った矢が吸い込まれるように心臓に突き刺さる。


 中央はもう大丈夫そうだ。盾持ちの騎士たちが前線を押し返す。


 今度は左だ!マリスさんがソルジャーに体勢を崩されてる!

 オークソルジャーの後頭部を狙う。

 間に合って!


 放った矢は間一髪とどめを刺そうと振りかぶったソルジャーの頭蓋骨を貫通し、ゆっくりとソルジャーの体が崩れ落ちる。


 まだだ!


 マリスさんを囲むオークを速射で狙う。

 とにかく体のどこかに当たればいい。

 マリスさんの体勢が整うまでの時間を作るんだ。


 3体のオークに次々と僕の矢が突き刺さる。

 1体は倒れたけどあと2体!

 そのうちの1体に狙いをつける。


 ところが素早く小柄な騎士が動いて瞬く間にオーク2体を切り捨てた。

 すごい。スピードだけならフェルと同じくらい。

 良かった。もう大丈夫みたいだ。


 魔力がまた集まっていく気配がする。

 

 中央で足を引きずりながらメイジが詠唱していた。でも今度は当てられる。

 集中して狙いをつける。

 メイジの左目を射抜いた!


 頭が痛い。頭の芯がズキズキと痛む。


 中央の建物から大きな魔力が!

 

「キングが出てきます!」

 

 僕は痛みを堪えて下に向かって叫んだ。


 他のオークより二回り以上大きいんじゃないだろうか。

 しっかりとした鎧を着込み、その手に巨大な槍を持ったオークがゆっくりと建物から出てくる。


 オークキングだ。





 









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