第50話 時計

 50 時計 


「この辺りが今、ちょうどボロ市をやってるんだー。中には掘り出し物もあるけど、騙されることもあるから、買う前には僕に言ってね。良い物だったら値段も交渉してあげるからー」


 なんだか3男が頼もしい。


 ボロ市にはさまざまな物が置いてある。

 壊れかけの魔道具や、中古の食器。ティーセット。

 武器はなかったが壊れかけの鎧など路上に商品を広げて販売している。


「お店の人の言うことをあんまり信じちゃだめだよー。半分くらいはウソだと思った方がいいからねー」


 その中で小物が並ぶ店の前でしゃがみ込み、フェルの財布を探す。


「うーん。ケイくん。それってフェルちゃんの贈り物にするんだよねー。他の小物ならいいけど財布はあんまりオススメしないなー。ここは盗品とかも流れてくるんだ。

全部がそうとは限らないけどやめておきなよ」


 そう言われてなるほどと思った。財布をここで買うのはやめておくことにする。


「お財布ならさー、今度母さんの店でいいの見繕ってあげるよ。そこまで高いもんじゃないから大丈夫だよー。母さんにも内緒にしてあげるからー」


 3男がそう言ってくれるのでお言葉に甘えることにする。


 その店で、フェルのために栞を買った。最近熱心に編み物の本を読んでいるし。


 時計の他に中古でいい暖房の魔道具があれば欲しいと言うと、3男は暖房の魔道具を探し始めた。


「いいのが見つかればケイくんにサインを送るから、大きさとか汚れ具合とか問題なかったらうなずいてくれる?」


 3男はそう言って、次の店を探す。

 3件目で3男は小型の程度の良い魔道具を僕に見せて僕に合図を送って来た。少し汚れているけど問題ないだろう。

 僕が頷くと3男がお店の人と交渉する。

 銅貨60枚になった。助かるぞ3男。


「よかったねー。もう少しいけそうだったけどやめておいたよ。3年前の型で、小型で使いやすいんだ。確認したけど動作も問題なかったし、うちの店だと定価銀貨5枚だったからかなりお得」


 3男が笑顔でそう言った。


「時計はねー。さっき通り過ぎた店にちょっと外側が欠けてたけどいいのがあったよー。銀貨4枚って書いてたけどケイくんいくらまでなら出せそう?」


 時計は小さな置き時計でも銀貨10枚はする。

 それでもがんばれば買えない値段ではないので王都に住む人の家にはだいたい1個は置いてあるらしい。


 王都の教会では昼の鐘と午後5時の鐘しか鳴らさない。朝の鐘は貴族からうるさいと苦情が入って鳴らさなくなったそうだ。


 銀貨3枚までならと3男に言うと


「それくらい余裕だよー。もう少しいけるんじゃないかなー。あ、あの店だよ、あの奥にある時計、端っこが少し折れてるけど、安い方がいいよね?どうする?欲しい?」


 3男にお願いして買って来てもらうことにする。


 時計を持ってニコニコしながら戻って来た3男。銀貨2枚と銅貨20枚にしてくれたそうだ。

 3男にお金を渡して時計を受け取った。


 お昼も過ぎたので3男と何か食べようという話になり、この間行ったハンバーグの店に行くことにした。


 店の名前は小熊亭と言う店だそうで、前に3男が話していた、醤油を持ち込んで、その値段を伝えたら高いと言って怒られた店なんだそうだ。


「マスターなら絶対美味しい料理にしてくれると思ったんだけどねー。あんまり料理の値段あげたくないんだってさー」


 3男が不機嫌そうに僕に言う。


「この時間は昼のメニューだからハンバーグか、あとはオークのステーキだねー。ハンバーグもいいけどステーキも美味しいよー。トマトソースで味付けしてあるんだー」


 フェルは今頃何食べてるのかな?

 たった半日だけどこんなにフェルと離れているのは村にいた頃以来だ。

 楽しんでるといいな。


 店の前には3人ほど並んでいた。

 ひょいっと3男が店のなかをのぞいて、そんなに待たされないと思うから並んで待とうと言う。3男が言った通り、5分ほどで僕たちの番が来た。
















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