第48話 雨

 48 雨


 朝起きたら曇り空。なんだか雨が降りそうだ。

 そういえば僕たち雨具を持ってない。


「ギルドに売っていたぞ、値段もそんなに高くなかった」


 そうフェルが言うので市場で買い物をしてからギルドで雨具を買うことにする。

 今度ゼランドさんのところで傘を買おうかな。


 まだ雨は降らなそうなので、ギルド前で待ち合わせすることにして2人で走り込みにいく。市場でフェルと別れて、僕は買い物。フェルは南東の区画をぐるっと回ってギルドに向かうそうだ。


 牛乳とタマゴを買って、肉屋でベーコンを買う。

 夕飯はチャーハンでも作ろうかと思っている。ごま油はないんだけど。

 お米をこの際大量に買ってしまえと思い、かなりの量を買った。


 そのあと少し食材を選んでいて、ふとケチャップが作りたいなと思って、トマトを多めに買った。


 ギルドに着いたらフェルはもう先に着いていて、依頼表を眺めてどんな依頼があるかチェックしている。ホーンラビット討伐の依頼は2枚ほどあり、ゴードンさんの住んでる辺りの依頼はなかった。

 しばらくは王都周辺のホーンラビットの討伐依頼でも受けてお金を稼ごうかな。


 すれ違う冒険者が、僕のことをウサギと呼んで挨拶してくる。

 僕のあだ名はすっかりウサギになってしまったようだ。

 フェルはフェルなのに。なんで僕だけ。まあいいけど。


 ギルドの食堂で朝定食という銅貨3枚の定食を食べる。食後にフェルが紅茶を、コーヒーがあったので僕はコーヒーを飲んだ。

 コーヒーを飲みながらフェルと少しお金の話をした。


 今持っているお金は銀貨25枚。

 今回の報酬で、銀貨で147枚になる。

 細かい銅貨はこの際無視して、このうち銀貨20枚をそれぞれ自分のお金として分配しないかと提案した。

 フェルは多すぎだといい、結果銀貨15枚をそれぞれギルドに口座を作り、貯金することにした。


 これからの討伐報酬は装備を充実させるのに使うことにして、個人的なものはそれぞれの口座から出すことに決めた。


 ギルドで口座を開き入金する。お互い銀貨1枚だけを手元に残し、それぞれ持つことにした。

 フェルはそれをポーチの革袋に入れ、僕は雨具と一緒に財布を買って銀貨をそこに入れた。


 雨具は銅貨35枚で、財布は銅貨10枚の一番安いものにした。フェルはいらないというので、あとでかわいいデザインのものを買ってプレゼントしよう。

 買い物リストにサイフと傘と書いておいた。


 窓の外を見ると雨が降っていた。


 買ったばかりの雨具を着てスラムまで走った。

 雨のかからない木の下で体を拭いてテントを作って中に入る。


 布団を広げてその上で2人ゴロゴロして過ごした。フェルは編み物の本を読んでいて、僕はフェルの横で少しウトウトした。

 隣にいるフェルの温もりが暖かくてつい眠ってしまったのだ。


 目覚めたらフェルが丸まって僕にくっついて眠っていた。本を読むのに疲れたようだ。読んでいたところで本を裏返し、休憩をとっててそのまま眠ってしまったみたいだ。


 抱きしめたくなるのをどうにかこらえて10分くらい横になっていた。

 フェルが目を覚まして僕と目が合い、にっこり笑った。

 幸せな気持ちになって僕も笑顔で返した。


 外を見るとだいぶ雨も小降りになって来たので、外に出てトマトケチャップを作ることにした。

 フェルもトマトの湯むきを手伝ってくれて、大鍋でトマトを煮込んでいく。


 その鍋で暖をとりながらホットミルクを飲んだ。残った温めた牛乳は瓶に戻し、明日また飲むことにする。これで殺菌もできたと思うし、最近寒くなって来たので1日くらい大丈夫なはずだ。


 明日3男に街を案内してもらう約束をしていたけど、フェルはエリママのところで編み物を習いたいと言う。

 装備を買いにガンツのところにも行きたかったので、午後の3時頃、ガンツの店で待ち合わせることにした。


 そういえばと思い出し、3男のところに行く前に靴職人のサイモンさんのところで、足の装備を発注することにした。


 雨が上がって夕焼け空が広がる。

 その景色はとても美しくて、椅子に座ってフェルと2人、暗くなってくるまでそれを眺めた。


 ランタンで足元を照らしながら公衆浴場に行く。

 ゼランド商会がまだあいていたので、店員さんを捕まえて傘を買った。


 傘はけっこう高かったので、少し大きめの赤い傘を1本だけ買った。


 今日は洗濯もするつもりだったので、洗濯場で待ち合わせして受付でフェルと別れた。


 洗濯を終わらせて外に出ると、また雨が少し降っていたので2人で相合傘をして帰り道を歩く。


 途中この方が歩きやすいと、フェルが僕と腕を組む。

 帰りは時間をかけてゆっくり歩いた。


 家に着いたらけっこう遅い時期になってしまったので慌てて夕飯の支度をする。

 ご飯は夕方炊いていたので、フェルにテントの設置を任せてチャーハンの支度をする。


 ふと思いついて、せっかくケチャップを作ったのだからオムライスに変更することにした。材料もほとんど一緒だしいいかもしれない。


 ケチャップはミキサーがないから少しトマトの形が残ってしまったが、その味は良かった。


 雨は家に着いた時もう上がっていたので

外で夕食を食べた。

 フェルはオムライスをとても気に入って、一口食べる度に幸せな顔をする。

 コロコロ変わるその表情がとても可愛らしい。


 フェルがまだ食べたそうにしていたので、さっきより少し大きめに作って僕と半分こした。

 少し大きい方をフェルに渡すと目を輝かせ、ゆっくり大事そうに食べていた。


 後片付けをして麦茶を飲む。オムライスにけっこう砂糖を使ったので、今日は普通の麦茶だ。

 フェルも砂糖入りの麦茶はたまに飲むから特別なのだと言い、息を吹きかけて麦茶を冷ましながらゆっくり飲んだ。


 テントの中は少し湿っぽくて、ドライヤーの魔法をかけたら少しはマシになったけど、明日晴れたら外に干して出かけようと思う。

 防水布も買わなきゃなあ。

 フェルに銀貨3枚渡して、エリママのところで買って来てもらうことにする。


 その時フェルの胸の辺りの尖った部分を凝視してしまったのは内緒だ。


 けっこう寒かったので腕まくらをして、フェルとくっついて寝た。

 暖房の魔道具も欲しいな。

 でもまずは装備かな。


 そんなことを考えながら眠りに落ちた。













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 今後ともフェルのこと、よろしくお願いします。

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