第12話 お金
12 お金
村ではお金をあまり使わなかったので今日朝市で買い物するまで、実はお金の価値がきちんとよくわかっていなかった。
銀貨が20枚でひと月、贅沢しなければ暮らせるとは聞いていたけど、村の中以外で買い物をしたことがなかったのでお金の価値がよくわからなかったのだ。
宿代と馬車代から考えるとおそらく、銅貨1枚で100円くらいになると思う。
リンゴは3つで銅貨1枚だった。
銅貨100枚で銀貨1枚になるから
銀貨1枚は1万円。
銀貨100枚で金貨1枚だ。
そのほかに、銅貨50枚で大銅貨1枚。
銀貨50枚で大銀貨1枚。になる。
そうなると宿代は一泊、夕食と朝食がついて、たぶん3000円くらい。
馬車は2人で銀貨1枚だったから1人5000円か。
残金はだいたい銀貨20枚くらい。
途中宿にも泊まりたいから、王都まで行くのは予算的にギリギリかも。
次の街に着いたらまず馬車の料金を聞こう。
その値段次第ではどこかでアルバイトをしないといけないかもしれない。
馬車は2台で走っていて、乗客は僕ら以外で4人、それに護衛の冒険者が2人乗って合計で8人。
後ろを走る馬車もそのくらいの人数が乗っていて、満員ではないけどそこそこ乗客が乗っている。
途中お尻が痛くなりお尻の下に毛布を引く。
ちょうど2人座れるように畳んでフェルとそこに座った。
お昼になると馬車が停まって食事休憩をとる。宿でもらったパンを食べた。調子に乗ってパンは10個も持ってきてしまった。
暗くなってきた頃、予定の野営地に着く。
みんなテントを立てているけど、僕たちは持っていない。適当に毛布を敷いて寝るつもりだ。
それを見た御者の人が、特別に馬車で寝て良いと言ってくれた。
みんなが保存食を食べている横でスープを作った。鍋に汲み置きの水を入れ、魔道コンロに乗せる。
ささっとジャガイモとニンジンの皮を剥き、適当な大きさに切る。ホーンラビットの肉を小さく切って中に入れた。買ったお肉はもうこれで終わりだ。
丁寧にアクを取り最後にネギを切って中に入れ、塩と胡椒で味を整えて出来上がり。
少しだけハーブも入れた。パセリみたいなやつだ。
みんなが羨ましそうに見ている中、スープとパンをフェルと2人で食べた。
簡単に作った適当スープだったけどフェルはすごく美味しいと言ってくれる。
これまでの道中でもそうだったけど、こんなかわいい女の人が僕の作った料理を褒めてくれる。うれしいな。
王都についてもこのままずっと一緒にいられるといいな。
残ったスープは鍋ごとマジックバッグに入れて明日の朝もそれを食べることにする。
夜の見張りは護衛の人がやってくれるらしく、僕らは馬車で寝た。
次の日の朝、まだ暗いうちに目が覚めた。
フェルを起こさないようにそっと馬車を出る。
コンロで麦茶を作った。
冷めたら水筒に入れよう。
出来立ての麦茶をコップ3つ分入れて、焚き火をしていた冒険者2人に差し入れした。
3人であたたかい麦茶を飲みながら冒険者について聞いてみる。
冒険者になるにはギルドで登録料として銅貨20枚必要で、お金がない場合は受けた依頼料から後払いもできるらしい。
冒険者にはランクがあって上はSランク、登録したてはFランクから始まるそうだ。
Eランクには3つくらい依頼をこなせばすぐなれるけど、Dランクにはそこそこ実力がついてギルドに認められないとなれない。
そこからさらに実績を積んで認められてCランクに上がるのだそう。
Dランクで冒険者としてやっと一人前。
Cランクは実力者、Bランクだと凄腕と呼ばれる。Bランクで目立った功績を上げると二つ名がつくことがあるそうだ。
Aランクになれば貴族と同じような身分になり、国の依頼などを受けたりするようになる。
Sランクは災害級のレベルの問題を解決できる能力があると認められる冒険者の頂点だ。
国に召し抱えられて領地を与えられることもあるらしい。
今はSランクの冒険者はほとんどこの国にはいないそうだ。
10年前はけっこういたみたいなんだけど、みんな引退してしまったらしい。
収入の話も聞いた。
はじめは薬草採取やホーンラビットなどを狩り、お金を貯めて装備を買って、単独のゴブリンなどを倒して実力をつけるのだそうだ。
この時が一番辛いらしい。
やがて複数のゴブリンに囲まれても対処できるようになれば一人前、そしたら今度はパーティでオークなどを狩って、お金を稼いで、大きめのマジックバッグを買えるくらいになったらその頃にはだいたいCランクくらいになっているんだそうだ。
ゴブリンの討伐報酬は銅貨50枚。
オークで討伐報酬はだいたい銀貨2枚、オークは素材も取れるので持ち帰れば1体で銀貨7、8枚くらいになるそうだ。
4人くらいでパーティを組んでオークを1日3体狩ればそこそこいい生活ができるようになるらしい。
フェルが起きてきたので冒険者たちにお礼を言って別れた。
お茶のコップも回収する。
「ご馳走さん。朝は冷えるからありがたかったぜ」
無精髭を生やした体の大きい冒険者からお礼を言われた。
昨日の残りのスープを温めて残りのパンと一緒に食べる。持ってきたパンはこれで終わりだ。
やがてみんな起きて来てテントを片付けはじめる。
片付け終わってみんなが乗り込んだら馬車が動き出した。
さっき話してた冒険者2人が僕らの向かいに座る。
「坊主、冒険者になるのか?登録は15歳からだぜ」
そう言われて、これでも15歳だと抗議する。
「冒険者になるなら王都に行ったほうがいいぜ。これから向かう街は税金が高いんだ。俺たちは直接商会と契約してるからあまり関係ないが、次の街はギルドでもかなり税金は引かれるし、物価も高い。暮らしやすいとは言えない場所だからな。あんまり大きな声では言えないが、治めてる貴族があんまり評判がいい人物じゃねえんだ」
無精髭を生やした冒険者は次の街のことをいろいろ教えてくれた。
「そうなんだ。物価が高いって、じゃあ宿代も高いの?」
「ああ、高いぜ。昨日出発した町に比べると倍以上する。街に着いたら比較的安くていいところを教えてやるからそこにいきな」
「ありがとう。ところで王都行きの馬車の値段ってわかる?あんまり高いと宿に泊まれないかもしれないんだ」
「ひとり銀貨6枚だな。途中の街に寄って4日かけて王都に向かうんだ」
「銀貨6枚か。けっこう高いね」
「それも税金のせいだな。その貴族が街道を整備してから高額な通行料を取ってるんだ。そいつはそれで儲けた金を賄賂に使って王城ではそれなりの地位についてるって話だぜ。自分の領地では税金に苦しめられている奴が大勢いるってのによ」
そう言ってその冒険者は苦い顔になる。
「領地では借金奴隷になる奴も多くてな、街道はその借金奴隷たちをこき使って整備したらしいんだ。一応迂回するルートもあるんだが、そっちは盗賊も出るし、しかも遠回りで、馬車でも1週間以上かかっちまう。ちなみに街道を歩いては行けないからな。関所みてえな料金所で止められちまうんだ。一応その料金所だけ迂回して歩く道もないことはないんだが山道で険しいうえに魔物が出る。坊主とそこの姉ちゃん2人だけで行くのはあまりお勧めしねえぜ」
「いろいろ教えてくれてありがとう。お金はなんとか節約すれば足りそうだよ」
「おう、気にすんな。さっきのお茶の礼だ」
そのあとうとうとして馬車で眠ってしまった。昼休憩で馬車が止まって、フェルに起こされるまでずっと寝ていた。
昼食はリンゴをむいて食べた。
「パンもうちょっともらってくればよかったね」
「気にするな、毎回手の込んだものを無理に作る必要はない。干し肉だけより全然良いではないか。それにこんな食事も楽しいな。このリンゴも甘くてうまいぞ」
フェルは明るく笑ってそう言ってくれた。
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