第9話 偽装
9 偽装
「すみません!お待たせしました!」
急いで駆けつけたように装い、待ち合わせ場所に走り込んだ。
ずっと家から走ってきたわけではない。
それらしく見えるように直前から走ってきたのだ。
「すぐご案内いたします。騎士の方は準備はよろしいですか?」
「マジックバッグに食料も水も入っているので平気だ、それより早くしろ」
そう言われたのですぐ山に入って案内をはじめる。
山を適当に登って、捜索しているフリをしながら、少しずつキラーウルフのいるエリアに誘導する。
そのエリアのかなり手前で騎士たちに話しかける。
「この先キラーウルフの縄張りになります。僕はキラーウルフとは戦えません。僕もこの先入ったことがないのですがよろしいですか?」
「キラーウルフなど我らの敵ではない。もし出てきたらお前は木に登っていろ。オレたちが倒してやる」
騎士の1人が言う。
僕はビクビク怯えてるフリをしながらゆっくり偽装した鎧のある方に誘導した。
「あれは何でしょう?」
遠くにある鎧を指差して言う。
騎士たちは急いでその場所に向かう。そして昨日僕が転がした鎧を手に取った。
僕はそれを遠巻きに見ながらキラーウルフを怖がってるフリをする。
「副団長、どうやらフェリシアの奴キラーウルフにやられちまったようですぜ」
「いい女だったが仕方ない。まあ捕まえたとしても充分楽しんだ後でどのみち殺すつもりだったしな、この件は訓練中の事故として処理する。いつものようにうまくやっておけ。おい、近くに死体はないのか?それから他に鎧があったら持ってこい」
そう言って副団長と呼ばれた一番偉そうな男は、部下の騎士に命令する。そして僕に向かって横柄な言い方で叫んだ。
「そこの村人!怖いなら木の上に登っていろ。我々はこの付近をしばらく捜索する!」
そう言われたので登りやすそうな木の上でのんびりと待つことにした。
鎧の回収を手伝わされなくてよかった。
そのあとその場所で騎士の捜索は続き、フェルの装備は騎士のマジックバッグに入れられた。
「おい、そこの村人」
呼ばれたので木の上から降りて副団長のところに行く。
用事が済んだので山を降りるとのことだ。
「わかりました。こっちです」
そう言って森の入り口まで案内をした。
村長のところまで付き合わなきゃダメかなぁと思ってたら、もう行っていいと言われる。
わざとダサいお辞儀をしてさっさと離れた。
帰りに雑貨屋で、旅に必要なものをまた買い足して、家に帰った。
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