第7話 村を出る決意

 7 村を出る決意

 

 森の奥に入って、昨日、鎧を捨てた場所に向かう。

 あたりに魔物の気配はしなかったが、予想通りその場所はキラーウルフにより荒らされていた。


 鎧の残骸には歯形がついてたりして、どうやら上手く細工ができたようだ。


 指の跡がつかないように慎重に鎧に残った鶏肉を取っておいた。


 一番目立つ胸のパーツと兜をわかりやすく置いておき、残りは適当にあたりに放り投げておく。


 そのあと森でキノコを収穫して、薬草も集めた。


 家に帰って食堂を手伝い、昼の営業が終わったところで、余ったスープとパンを皿に盛り、フェルの部屋に持っていく。


 部屋に入ると渡した布でフェルはハンカチを作っていた。

 

「これは良い暇つぶしになる。もっとも私は普通の令嬢みたいに刺繍はできないのだが、ハンカチくらいは縫えるぞ」

 

 そうフェルが言うので、古いタオルを持ってくるから雑巾を作って欲しいとお願いした。

 これで私も少しは役に立てそうだと、フェルは喜んでいた。


 水差しに麦茶はまだ残っていたので、フェルには夕食になったら下に呼ぶと伝えて部屋を出た。


 夕方からの営業まで特にやることもないので、じいちゃんにちょっと買い物してくると言って外に出た。


 村には雑貨屋が1軒ある。

 あまり大したものは売ってないのだけど。


 僕は今回の件がうまく行ったら、フェルと一緒に村を出ようと思っている。

 王都まで2人で行ってそこで暮らそうと考えていた。


 フェルがこの後、村で暮らしていくことは難しいだろう。1人で村から出ていってもらうのは心配だし、一緒に王都に行けばその後もいろいろ会う機会があるかもしれない。あわよくば一緒に暮らせるかもしれないな。そうなったらいいのにな。


 王都でのフェルとの生活をあれこれ想像してにやけながら雑貨屋で買い物をする。

 店では水を入れる大きめの樽とロープそれから安い毛布を買った。

 あまり一気に買い込むと何かあったのかと思われるので何回かに買い物を分けて少しずつ旅の準備をしていくつもりでいる。


 こんな形で村から出ていくとは思わなかったけど、どうせ来年には村を出るつもりだったのだ。

 じいちゃんにもそのことはもう話してあるし、その時期がちょっと早まるだけの話だ。

 それにあんなに綺麗な女の人と旅ができるんだ。これはきっとチャンスだ。

 あんなに理想的な人にはもうこの先、出会えないだろう。

 旅の間にもっと仲良くなって、それで王都に着いたら2人で協力し合いながら暮らせればいいな。

 そしていつか……


 はたから見れば変態だと思われるようなやばい妄想をしながら、僕は家にもどった。


 じいちゃんの手伝いをしながら夕食の支度をする。

 

 食堂では僕の作った料理は出さない。

 以前は出していたけど村長の息子に嫌がらせされてからは作っていない。

 かわりにその日の夕食を作るのはいつも僕の仕事だった。


 最後の客が帰って、店の入り口に鍵をかけた。

 フェルを呼んで夕飯にする。

 今日は鶏肉とキノコ、キャベツのスープにした。


 固くなったパンをスープに浸して食べる。


「ごめんね、パン固いでしょ。明日パンを焼く日だからもう少し美味しいパンが食べられるよ。今日は我慢してね」


 そうフェルに謝った。


 村では1週間に一度パンを焼く。

 僕たちはそのパンを無償でもらえることになっている。食堂で出す分も含めて。


 食事も終わり後片付けはじいちゃんがやってくれた。

 じいちゃんに声をかけて洗濯をすることにする。

 僕は寝る時の格好に着替えて洗濯物をまとめる。じいちゃんも着替えて洗濯物を持ってきた。

 洗い場に行くとフェルも手伝ってくれるらしい。フェルには自分の服を洗ってもらった。

 

 フェルに隣国の暮らしとか都会の様子など、話を聞かせてもらいながら2人で楽しく洗濯をした。


















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