第6話 麦茶

 6 麦茶


 フェルが僕の部屋を使っているので、夜は食堂に布団を運んで寝た。

 椅子を上手く並べて布団を敷いたらなかなか寝心地が良かった。


 布団を片付けて朝の支度をする。


 麦茶を作って水差しにいれ、外にある井戸の水で冷やしておく。家に戻ったらじいちゃんが起きてきて朝ごはんを作りだした。洗濯物が乾いていたので取り込んで、桶とタオルを持って2階に上がる。

 部屋をノックして声をかけた。


「フェルー?起きてる?」


「ああ、入って大丈夫だぞ」


 それを聞いて中に入る。


「おはようフェル。顔を洗う水を用意するね。洗濯物も乾いてたから持ってきた。服はちょっと破れてたよ」


 たたんだ洗濯物をテーブルの上においた。


「えーと、着替えは……ちょっと下に降りて母さんの服を選んでくれない?まだ朝早いから村人も来ないし、今のうちに」


 フェルを両親の遺品や、使わないものを放り込んでる物置部屋に案内する。

 好きに選んでねと衣装箱を開けて、部屋を出た。


 2階に戻って桶に水を入れる。プチファイアボールで少しぬるめのお湯にする。


 置いておいた水差しとコップを持って下に降りれば服を選んだフェルが物置部屋から出てくる。


「それあげるから好きに使って、どうせもう誰も着ないし。売れるほど上等なものじゃないから」


 そう伝えるとお礼を言ってフェルが2階に上がっていく。


 じいちゃんが朝食を作り終えたので、2人分お盆に乗せ、冷やしておいた麦茶と、コップを持って2階に上がる。


 ノックして部屋に入る。

 フェルは母さんが森に採取に行く時の服に着替えていた。スタイルがいいからどんな服でもよく似合う。

 よかった、サイズもちょうど良かったみたい。


「どう?大きさも問題なかった?よく似合ってるよ」


「少し大きめだが大丈夫だ。感謝する。ケイ」


 よくみたらズボンは少し折り返していた。

 まぁこれくらいは大丈夫だろ。


 そのあとフェルと朝食を食べた。

 フェルは冷やした麦茶が気に入ったらしい。


「良かったよ。村には紅茶なんてないからさー。このお茶、麦茶って言って大麦を乾かして炒って作るんだけど、村にはこれくらいしか飲み物はないんだ。あとはたまに果物を絞って果実水を作るくらい」


 食べ終わった食器を重ねてお盆の上に置いた。

 お盆を持って立ち上がり、フェルに声をかける。


「僕はこれから森に行ってくるからまたお昼にね。洗濯物はそこの袋に入れておいて、後で洗濯するから。部屋のものは自由にみていいよ。本はあるけど物語の本はないんだ。薬草辞典と、読み書きを勉強する絵本があるくらい。でもこれじゃあ退屈だよね、どうしようかな」


 フェルが破れた服を繕いたいと言うので、暇つぶしになればいいと裁縫道具と布を届けた。


 食堂に行って食器を洗う。じいちゃんはもう食べ終わったみたいで流しに食器が置いてある。

 水魔法でさっさと洗って片付ける。


 水魔法は便利だけど、料理を作るなら井戸水の方が美味しく作れる。

 村の井戸の水は沸かさないと飲めないけど魔法で作る水より美味しい。

 水の魔法は洗濯や洗い物、畑の水やりに使っている。畑といってもうちのは家庭菜園のレベルだけど。


「じいちゃん、ちょっと森に行ってくるね。すぐ帰ってくるから昼は食堂手伝うよ」


 マジックバッグと矢筒、ナイフを腰に刺し、弓を肩にかけて森へ向かった。



















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