2日目 朝 春馬


ーよくねた。


俺は、つい寝過ぎたせいで、あくびをかみころす。


予想外にバスにずーっと乗るは、疲れたらしい。


大浴場も珍しくて、それなりに腹一杯たべた俺は、赤木たちの異世界人談話にも興味なく、


ーぐっすり寝た。


修学旅行の夜に、爆睡した俺に、黄原はあきれた顔をしていた。


「そりゃあ、小学生でもないし。いまさら枕投げもないけどさ?こう、なんか非日常を噛みしめるとか、お前にはないのか?」


「いまさら、非日常を求めないというか、興味ない話に付き合って、寝ない選択はないな」


俺、基本的に、異世界人に興味ないし。赤木は異世界に近いしな。


福岡の夜空は、たしかに俺がすむ南九州の片田舎とは違うけど。


ー手がとどかない夜空は、同じだって気づいたんだ。


それならさ?


ー寝る。


だった。だって、いつだって、ぐるぐるまわる俺の思考は、いつだって、


ー休みをもとめてる。


目に入るものすべてが、不思議すぎたら、頭の中はぐるぐるまわる。


だから、小さな頃、俺は爆睡したらしい。ただ眠って起きないが、たまにある。


兄貴は勉強したら頭痛や目が疲れるって言うけど、俺は、たぶん、


ー刺激に、つかれてる。


赤木や黄原がよく口にする刺激が欲しい、は、俺にはないなあ。


ーこれ以上の刺激なんかいらない。


って、思ってしまう。


それに赤木の異世界人って、俺にはリアルになってしまったしなあ。


ーアイツは俺と同じ世界にすんでる。


柴原。


黄原は俺には友人だけど、それでも、違うんだ。


ーけど、柴原真央。


は、たぶん、いや、絶対に、今日に勝負をかけてくるよな?


プレイボールの声がなるのは、今日しかない。


野球は、延長あるけど。


サッカーは、PK。


そういえば、俺は、キーパーの経験は、ないなあ。


いつもキッカーだ。


兄貴は、たまにキーパーをしていた。兄貴はできる。


俺には、PKが基本的に無理だ。たぶん、キッカー以外に視線がいくんじゃないかな。


サッカーゴール枠内を目指すは、キャッチャーミットに投げ込むににてる。


もちろん、バッターやキーパーもいるけど。


むしろ、そっちを気にすんのかな?


ただ、キックオフじゃない。


プレイボール、だ。


ー延長戦でも決着つかないなら、再試合?


それだけは、ないよな。


「あいつ、バスケ部なのにな」


「バスケ部?赤木か?」


「バスケって、面白いかな?」


「まあ、走り回って、体力いるよな?俺は、文化部だからわからないけど」


テレビでみてる分には楽しい。と、黄原は言った。


たしかに常に走ってるイメージあるなあ。


サッカーもわりと走るけど、そう考えると野球はあまり走らないな。


キャッチャー大変そうだけど。


「なんだ?お前、野球部からバスケ部に移籍すんのか?陸上部の方がよくないか?」


「陸上部?」


「お前、持久力あるだろ?校内マラソンとか陸上部の先輩より速いだろ?」


「たまたまだろ。あれ、先輩転んでたし」


そういえば、なんかの競技で運だけで、オリンピックで金メダルって話よんで、不思議だったよな?


ーそもそもオリンピックにでてるなら、運だけじゃない。


たしかそう思える国だったような?


クラッシュを避けるも、まあ、運もあるかなあ。


自転車競技とか、ほんとうにすごいしな。


ー親父が俺にママチャリ渡した理由に納得した。


カゴあるし、便利だしな。南九州に片田舎は、自転車が俺たちの年齢だと、主力な移動手段になるしな。


「おまえなら、竜生先輩に、負けないと俺は思うんだけどなあ」


黄原が首をひねってる。


「兄貴には、勝つ気ないよ」


「お前、それ…、まあ、いっか」


黄原がまたあきれたように俺を見たけど、肩をすくめた。


そして、スマホをとりだす。


「今日こそ、神城明日菜の写真をゲットだぜ?」


「ポケット怪獣みたいだな」


「神城をそう言う表現するの、お前くらいだよなあ。ゲットできたらお前にもやるよ?」


「いらない」


「即答かよ⁈」


だって、プレイボールだぞ?


もうすぐ試合がはじまるんだ。


きっと、柴原が全力で可能性をひきよせる。


チャンスは、必ずくる。


だって、


ー俺たちは、頭にたたきこんだ。


福岡空港のフライト。新幹線や地下鉄、その他の時刻表。


あれは、俺たちの大好きな表と数字のパズル。


組み合わせていく。


確率。


誤差も何もかもを、ただ、


ー計算するだけだ。


PKみたいに相手の動きや思考を読まなくていい。心理戦は苦手だ。


けど、さ?


俺はポケットから小さな石を取り出す。


あの日、ラッシーに話しかけていた神城。


ラッシーに優しく話しかけてた。


あの日、みた分光器の中身。きっと、未来はもっと電子分光器は発達していくんだろうな。


手作りの俺の分光器もどきじゃなく世界は、どう映り輝いていくんだろ。


そして、こんな川べりの石ころなんかより、きっと、キラキラな大都会に行くアイツには、


ーもう届かない。


それなら、 


「俺はいらない」


はじめから、いらない。


そう言葉にしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る