2日目 朝
ーあまり眠れなかったな。
私は欠伸をかみころす。
また、かすかなシャッター音がして、ため息がでそうになる。
誰よりも、早く寝た、ふりをした。
柴原さんがさりげなく背後に、かばってくれてた。
ーどうして、彼女は、そんなに、よくしてくれるんだろ?
私には、わからない。
演劇部の部長は、優しい人だったけど、お姉ちゃんの友達だった。
理由がある。
だけど、柴原さんには、理由がない。
あれ?
でも、理由がないなら、
ー彼、も?
いつだって、姿は見たことない。
ー声、だけ。
ー声、だけ。
ー声。
かあ。
あの子の飼い主だよね?
ちょっととぼけた子だったな。
ーあのキャンディーに、気づいてくれたかな?
けど、なんにもなく、クロックスや蛍傘のやりとりは、続いて今日になった。
ーはじめて、彼にあう。
どんな顔をしてるの?
けど、どんな目で、私をみてくれるんだろ?
その瞳に、赤木くんみたいな熱をみたら、私はどうするんだろ?
朝ごはんのときは、もう部屋に帰ってた。だからあわなかった。
赤木くんが柴原さんに声をかけてきても、その中に彼はいなかった。
もうひとりいない子もいたらしいけど。
私の関心は、彼、だけにむかってた。
部屋でいつも通り、ブラッシングしていたら、柴原さんが隣から小さな紙袋をくれた。
「明日菜、せっかくだから、使わない?」
どこの薬局にでもある、色つきのリップクリーム。
それに、さわやかな果実の匂いがする制汗スプレー。
みんなふつうに使用してる。私は使用してないけど。
「大丈夫だよ?人がたくさんいる博多駅にもいくし、目立たないよ?明日なくらいの美少女なんか、たくさんいるよ?」
って、柴原さんか、わらう。
ー言ってる内容は、かなり手厳しいけど。
笑いながら、小さく私の耳元で囁いた。
「あいつに、はじめて.逢うんだよ?かわいいって、おもわれたいよね?」
「アイツって、村上くん?」
「そう、弟の方」
「弟じゃなくて、村上春馬くんだよ?」
たしか昨日の夜に、同室の子たちが騒いでたのは、村上先輩?
まったく知らない存在。
柴原さんは、笑いながら、
「塗ってあげるよ?上むいて?」
って、私の顎に手をそえた。
色とは違い無臭だった。
「だって、唇は食べ物に触れるもの。せっかくおいしのがダメになるの、こまるよね?うちの和菓子を美味しく食べる気ある?って思うんだ」
そういえば、和菓子屋さんだっけ?彼女の家は。
そんなに匂いなんかしないと思うけどなあ。
ただ、うん。
私は、素直にお礼をいった。
「ありがとう、柴原さん」
かわいいって、彼には、おもわれたい。
素直に、そう思える。
だって、話しかけるつもりだから。
ーいままでのお礼を言って。
そのあとは?
ーどうしたい?んだろ?
だって、ただ親切なだけだったのに。お礼いわれて、嫌じゃないかなあ。
昨夜、散々入ってきた噂は、彼のお兄さんの話ばかりだった。
彼自身は、ほとんどなかった。
そもそもクラスがちがう。
ー違うのに、よく見ず知らずの他人のこと、そこまでいうんだ、、、。
かなり、ひいちゃった。
まあ、それが女の子たちの会話だろうなあ。
女の子たちは、噂好き。
だけど、いまの時代、ネットで呟いたら世界レベルで、ひろがる。
は、あまり知らないんだろうなあ。
ネット小説も世界から、閲覧できる。
ー翻訳機能、べんり。
ただ、芸能人とかは大変そう?
がある。
まあ、南九州の片田舎にすむ私には、まったく知らない、遠いせかいのはなしだし。
そうおもいながら、私からブラシを取り上げた柴原さんの手により、私の黒髪は、ハーフアップになっていた。
私は、自分がまったくしない髪形に、びっくりした。私が口をひらくまえに、柴原さんを女子かかこむ。
「真央!わたしも!」
「ずるい、わたしも!」
「はいはい、ならんで。柴原美容室にようこそ。ちなみに、店主は、私。柴原真央。アシスタントは神城明日菜でございます」
「えっ?私が⁈」
「だって、明日菜は、演劇部でしよ?髪形くらい練習してるよね?」
「まあ、うん?」
「バスの時間あるから、はやく、はやく」
そう柴原さんが言って、私はクラスメイトたちのヘアメイクをしていた。
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