春馬 真央 野球
翌日からも、俺たちの学年は修学旅行の自由行動の話題が多かった。
小学生の頃の修学旅行は、班行動だけど、指定された場所で、遠足みたいな班行動だった。
だから自分たちで、電車に乗ったり、行き先きめたり、食事をきめたり、一応、先生のチェックポイントに行く時間指定があったり、まあ、計画作りに、わいわいガヤガヤしていた。
俺は、ぼんやり赤木や黄原、柴原たちの話をきいていた。
神城は、今日も参加してなかった。
「明日菜は、いま部活や習い事なんかが忙しいみたいで」
柴原はそう俺たちに説明していたけど、赤木たちは、不機嫌そうにしていた。
「いちどくらい顔を出すべきだろ?」
「あら?私より、明日菜に会いたいわけ?」
目の前でバスケ部カップルが、ちわ喧嘩しているけど、
ー赤木は、神城ねらいだろ?
兄貴が言ってたなあ?
俺はじっと柴原をみつめる。柴原の目は、赤木を見てるけど、
ー?
兄貴のまわりにいる異世界人たちは、兄貴を柴原みたいな目で見てないぞ?
赤木は、ヘラヘラ笑ってる。
そもそも兄貴はヘラヘラはしないか。
そういえば、兄貴は、あの変な味の飴を食べたのかなあ?
あれは、変な味だけど、いまは、ラッシーと行く、散歩のお供になっている。
ーへんな味だけど。
なんとなく食べてる。
ーへんな、味、だけど。
ただ、やっぱり、噛み砕く。
あの時、神城がくれた飴玉だけ、噛み砕くは、しなかった。
なんでかな?
あんなに変な味なのに。そもそも謎に蛍光色だし?
ただ、毎日、ポケットにいれて、ラッシーと散歩に行っている。
いや、散歩よりランニングか?いや、なんだあれ?
ラッシーがスタートしたら一気に走り、いきなりストップするやつ。
なんだたっけ?体力自慢のスポーツテレビバラエティなんかでみたような?
ちなみに、俺は自宅のような古い家屋なら、屋根まで外からいけるが、わりと雨樋とか風化で、脆いから、やめたほうがいい。
バキバキに折れる。
あの蛍光ペンでサインしたクロックスは、神城が今日はもっている。
ー使用頻度、たかいよなあ?
窓からはいる太陽の光は、はじめてクロックスを渡した時とは違う。
1日、1日、が、夏になっていく。
雲や雨、風なんかで気温は、変わるけど、確実に夏は近づいている。
ーもうすぐ30度をこえてくる。
「どうしたらいい?」
つい、つぶやいたら、
「私は、表は嫌かなあ」
「裏なら?」
「どこ?」
「二死満塁?」
「サヨナラ?」
「いや、延長?」
「ノーゲームになるだけじゃない?」
「だよな」
いくら延長したって、無駄だよな。
だからって、ノーゲームもなあ。
いっそラッシーを神城にやるか?
ームリだな。
うちのラッシーは、そんなに名犬じゃない。そもそも名犬なら、あのクロックスは、神城の手元に届かない。
「ゲームオーバー?」
「いや、それはダメだろ?」
「なら、いっそ、甲子園めざす?」
「全国放送?」
「そ。プロ注目だし?」
「ー確率は?」
「天気予報?」
「だよな」
けど、それなら、たしかに。
「村上も博多駅だって。多数決で、博多だね?自由行動の範囲」
いきなりパン!って、目ので手をたたかれた。
ビックリして、その手の主をみると、柴原がニヤニヤしていた。
「なんだ?いまの会話?その会話ならホークスだろ?」
黄原が不満そうに言った。そういえば、ドームのそばには、アイドル関連があったような?
どうやら、自由行動の場所をきめていたらしい。
というか、
ーなんだ?この異世界人。
俺は柴原をみる。
前といい、今回といい。
ーだけど。
「村上も博多だよね?」
「まあ、そうなるよな」
福岡は再開発で、天神より博多駅周辺が元気がよくなってるし、博多駅の地下鉄は、福岡空港と繋がっていて、交通の便利がいい。
ー全国大会までは、行かないけど、九州大会決勝トーナメントくらいには、確率が上がるはずだ。
「…それしか、ないよな?」
「さびしいけどね」
柴原は神城と仲がいいなら、なおさらなんだろう。
目を伏せたのは、一瞬で、すぐに笑った。
「で、サヨナラは?」
「ねー、よ」
俺のこたえに、柴原は、声を上げて笑った。
「正解!さすが村上!明日菜を頼むね?」
…やっぱり、異世界人だな。柴原も。
なんで、いまの会話でそうなる?
けど、
ーなにが、
ねー。
だろ?
ーなんで俺は、無いや、0って言わなかったんだろ?
もし、目の前でその出来事があったら、
ーサヨナラ?
ーホームラン?
それとも、
再試合で、また、
ープレイボール?
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