春馬と飴玉


神城の姿が見えなくなって、俺は喉が渇いてることに気づいた。


目の前で、ラッシーも、ハッハッハッ、って息をして、舌をだしてる。


ージャーキー食べたしなあ。


冷たい水が飲みたい。


そう思った時、


「こんな所で何をやってるんだ?」


そう声がして、振り返るとスポーツサイクルを手押しして公園に入ってくる兄貴がいた。


こういうところが、兄貴はさりげなくできるから、すごい。


俺も親父から何度も、


ー許可ない公園は自転車は、おりろ?小さな子や高齢者があぶないぞ?


と言われても、つい、いなければやる。


けど、兄貴は、もう習慣としておりる。


やっぱり、めちゃくちゃ、かっこいい。


俺は、たぶんいないなら、乗りまくる。というか、


ーやってた。やってたら、ますます、自転車乗れる公園がなくなってた。


母親から、こっぴどく怒られていた。


ーなんでだよ?人いないから、いいだろ?


ルールだから?


なんのルール?


ただ、毎回言われる。


ー少しは考えなさい。


考えたよ?小さな子や高齢者があぶないなら、


ーどっもいなければ、乗れる?


でっかく自転車マークに、赤いばつ印で看板がたって、公園内は降りるマークでも、わかった。


言葉より、はっきりわかった、


ー絶対的な、視覚。


だけど、兄貴はふつうにスポーツサイクルをおして、背負ってたリュックから、ミネラルウォーターのペットボトルをだすと、俺にくれた。


俺よりラッシーが兄貴に吹っ飛んでく。


「あとは炭酸だよ。春馬にもらえ、バカ犬」


兄貴はラッシーの頭をなでながら、俺をみた。


ラッシーは、ぶんぶん尻尾を振りながら、俺のところにきた。


ー兄貴の言うことは、きくんだ。


やっぱり、兄貴は、すごいな。


「礼くらいいえよ?」


「ありがとう、けど、金がない」


兄貴が持ってる水には、足りない。消費税分足りない。


兄貴が舌打ちした。


「素直にありがとうって、言ってろよ。あとから母さんにでも、もらうからいいよ。母さんに言え、俺から水もらったって。母さんに言えないなら、父さんに言えよ?」


「ーわかった」


けど、もらって、いいのかな?兄貴は足りるのか?


ラッシーに、さっき、投げたビニール袋で水を入れて、あげようとして、気づいた。


「あれ?飴?」


重石かと思っていたら、ちいさなミニのビニール袋にいれて、入ってる。


エネルギーチャージ系の飴玉が2個。


可愛らしさのカケラもないけど。


ーたしかに、効率は、いいよな?また、もしも、あんなことがあるなら?


これから、ますます暑くなってくる。今日だって、もう暑かった。


もしも、真夏の屋上に、しめだされたら?


考えただけで、


俺の背筋に、嫌な汗がつたう。


ーもはや、それは、殺人だぞ?


俺はぎゅっと飴玉を握りしめる。無理だろ?南九州の片田舎の陽射しはつよくて。


俺は、ラッシーにすら、あげる水すら持ってなかった。


どうすんだ?


傘やクロックスなんかじゃ、守れないぞ?


ーマジで、ストーカーすんのか⁈


いや、マジで、それは、やばいだろ?


俺にはそんな資格ないし、それに、


ーこの場所に、いるかぎり、神城はムリだ。意味なく悪意にさらされ、


ーまた、屋上は、きっとある。


もっと、もっと、エスカレートしていくぞ?


だって、神城はもうあきらめて、しまってた。


あの日、あの冬の日。


はっきりと、見えた。


あんなに、とおかったのに。


あんなに、豆粒くらいに小さかったのに。


ーああ、キミがいる。


どうしたら、いい?


ー傘やクロックスじゃ、守れない。


どうすれば?


俺が頭を、フル回転させようとしたとき、


「なんだ?飴か?」


兄貴の声に、我に返った。


気がついたら、兄貴が飴をみている。


「ああ、なんかラッシーが、もらってた」


そういえば、もらったのは、ラッシーだ。


俺は、目の前のラッシーと飴を見比べて、首をかしげる。


「この飴って、犬は、食べていいのかな?」


「ダメだろ?というか、お前、ほんとうにバカだろ?」


俺は黙った。


バカはたしかだ。


俺は兄貴より頭が悪い。たしかに。


ー春馬?ラッシーに、人間の食べ物は、あげちゃだめだぞ?


人間と犬は、やっぱり、違うんだよ?


親父が俺に、言ってたけど、


ードックフードを、食べたらダメは、言われなかった。


犬の食べ物について、逆は、言われなかった。


だから、食べた。


ラッシーが美味そうに食べるから。


ちなみに、ジャーキーは、


ー味がない。


親父の酒の肴より、かたい、


ー?


あの時も母親と兄貴から、怒られて、親父は額をおさえていた。


じいちゃんは、大爆笑していた。


そして、俺と一緒に、母親という名の異世界人から、小言を言われていた、


異世界には、ドックフードは、人間の食べ物じゃないらしい。


ジャーキー前に、ふつうに、カリカリも食べたけど、


ーかたい。


猫は飼ってないから、食べたことがない。亀や金魚の餌は、


ー同じ味?独特の味だ。舌にザラザラしていた。


いちばん、まずい。


ただ、いろんな意味で、腹は下した。


よく見たら、裏のパッケージに、


ー食べないでください。とくに子供達は、注意してください。


書いてある。


いつから⁈


ー俺みたいなヤツが、いるから。


ただ、最近ネットで動画サイトが人気だ。


たぶん、やってるよあなあ?俺みたいな好奇心じゃなくて、


ー面白おかしく、


野生、愛玩、人間すら、関係なく、対象が犠牲になってる。


ある種の映像には、必ず、カラクリがある。


じゃないと、その映像は、


ー自然界では、撮影できない、


は、テレビよりひどくて、だけど、知らないなら、あの世界的大スターの配管のなかだ。


金貨ザクザクだ。


あの映像を見てから、やっぱり俺には、スマホあんまり必要ないな?


そう思った。


けど、さあ?


ーばれずに、ストーカーやる方法とか、あるのかな?


いや、ネットにあるなら、


ーもうバレてるぞ⁈


謎だ。


ただ、俺にだって、好きな動画は、存在する。


たまに天才か⁈


って思うのは、やっぱり、かなり、違う。


ネットに、やり方のってない。


か、めちゃくちゃオリジナルに、ひねってくるし、


ーそこに悪意もなにもなく、ただ、笑える。


大爆笑してる。


わりと科学的なヤツでも、大爆笑してる。


家族はひいてる。


ーお前、どこにツボった?


よく言われる、


そもそも兄貴や異世界人は、そんな動画やネットは.見てない。


うちのわりと、ひまな異世界人は、流行りなら、観に行く。そんなものらしい、


ただ、よくわからないのが、帰ってきて、面白くなかったって、前は言ってたのに、賞なんかをとると、


ーあれ感動したもの。さすがよね。


に、かわる。


異世界は、やっぱり、俺には、異世界だ。


だから、すごいんだろうな?


って、みてる。みていても、


ー?


だから、いつも、


ー?


になるし、まあ、俺は有名人でも、顔がわからない。


名前は、知るんだけど、わかんなくなる。


ただ、若い頃のチャップリン、めちゃくちゃハンサムは、最近知った。


ぼんやり、そう思ってたら、兄貴があきれた。


「だから、言い返せよな?とにかく俺、もう塾に行くから」


「あっ、兄貴、この飴いる?」


俺の言葉に、珍しく兄貴が迷う表情になった。


そして、手をだす。


「ーいいのか?」


「なにが?」


「いや、だって、これは、お前がもらったんだろ?」


「ー?もらったのは、ラッシーだよ?」


俺の言葉に、兄貴がふかくため息をついた。


「ー絶対、苦労するだろうな」


ー?


「まあ、いいや。ありがたくもらうよ?これでチャラだ。水代」


「えっ?この飴そんなに高いの⁈」


飴一個、100円すんのか⁈


だとしたら、神城、ラッシーに、チップやりすだぞ?


ーお返しは、


「ージャーキーなんか、やるなよ…」


口にでていたらしい。


「とにかく俺は、行くから。じゃあな?」


兄貴は飴玉をポケットじゃなく、わざわざリュックに入れると、また自転車をおして、公園の外に出た。


そして、いつものように、かっこよく、スポーツサイクルが走ってく。


「わふっ!」


って、ラッシーが俺の手にある飴玉をみてきて、


「おまえは、食べちゃダメらしい。水をのんだろ?」


そう言いながら、俺は飴玉を躊躇なく破って、口に放り込む。


ーへんな味だ。


そう思って、ベンチに置いた分光器を、手に取る。


箱が熱をもってた。


南九州の片田舎。5月でも暑い。


ただ、暑くて、


ーどうしたら、神城を守れるんだろ?


今年も、


ー夏はくる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る