第14話 ラッシー 散歩


ラッシーに、リードをつけて、ラッシーに、リードされながら、走っていく。


ラッシーは、よく走る。


ーテリア系の雑種って、みんな走ってんのかなあ?


親戚の家の犬は、走らない。走るの嫌いな犬もいる。


外はもう暑くて、南九州の片田舎に、初夏を教えてくれる。


ただ、あつくて、はいてる靴底も、もうあつい。


だから、たぶんー。


ー明日菜は、用事があるって先にかえったよ?


そう芝生が、言ってたよなあ?


違うか。柴原だっけ?


緑の原っぱ。


ー野生馬がいる場所。


南九州にある都井の岬にいる、


ー御崎馬(みさきうま)


岬馬とも呼ばれる。 


300年前からある藩営牧場のひとつで、極めて自然な形て繁殖と放牧されていた、


現存する日本在来馬(北海道和種、木曽馬、御崎馬、対州馬、トカラ馬、宮古馬、与那国馬)のひとつ。


昭和28年(1953年)に、純粋な日本在来馬として国の天然記念物に、指定されている。


見た感想は、


ー小さいなあ?


ガキの俺がそう思ってた。


馬っていうと、たまに競馬中継や、時代劇に出てくる馬のイメージがあったんだ。


それに比べたら,


ーぬいぐるみみたいに、小さな馬。


ただ,岬にいて、その日は、晴れていたから,


ーうみが青くて、緑があざやかで、


馬がいる?


親父は,毛色のちがいを、いろいろ兄貴や俺に、説明してくれたけど、


ー目の前の光景が、すごくて、覚えてない。


真っ青な空に、青い海。


そして、風にそよぐ緑の草に、


ーへんな馬。


幼い俺に、強烈な印象を残した。


光の三原色。


ー青。


ー緑。


そして、


ー馬。


いや?赤じゃないだろうけど、赤馬っているけど、あれはまあ、いろいろあるし?


いや、あれより。


藩営牧場、つながりで福島?


ーあかべこ。


なら、やっぱり、


ーそろったのか?


…なんか違う気がするけど。


つながりも、ちがうとおもうけど、


「いや、ちがうだろ?俺」


俺の声に、ラッシーがたちどまる。


俺は無口と言われるけど、俺自身は、わりと俺をあいてに話してる?らしい。


ひとはそれを独り言と言うらしいけど、会話してるぞ?


ー俺、と。


あれ?


これ?


はた、からみたら?


ー危ないやつ?


ならレッドカード?


「そろったな?」


けど、なんか納得いかない。まあ、いっかあ。


いや、よくないか?


俺はラッシーが足を、とめた方向をみて、かるくため息をついた。


まだ修学旅行前なのに、雨も降ってないのに。


ほんとうに、俺は、


ーナガレタゴカエル?


ってつぶやきたくなる。


近所に新しい大きな公園ができて、遊具なんがもたくさんあるから、その小さな公園は、人気がなかった。


そして、やっぱり。いたんだ。


俺にとっての、異世界代表、


ー神城明日菜が。


汚れたくつ下で、ただ、うつむいていたんだ。


だから、


俺はラッシーと100きんに、ダッシュした。


ラッシーが喜んではしり、だけど、俺はちゃんとリードで、ラッシーをリードしながら、走って、ラッシーを人気のない場所に、しっかりつないだ。


吼えようとしたから、待てと言って、とにかくダッシュで、それを買う。


店員さんが慌ててる俺にびっくりしたけど、ビニールがいること、ハサミできってもらう。


そして,白いそれに空色の蛍光ペンで、小さな線をひいた。


外でおとなしく待っていたラッシーの頭を撫でてて、もっと撫でろって、言うのをなだめて、俺はラッシーとまた走り出す。


ラッシーのリードを、しっかりもちながら。


コンクリートを走る足がいたい。


息が苦しくて、ただ、焦ってた。


ーたのむ、まにあえ⁈


走って、ただ、走って、気づいたら、ラッシーを追い抜いていた。


やっと、みえた人気のない公園。


ベンチにうつむく、たよりない華奢な背中に、ほっとした。


俺は、走るのをやめて、ラッシーをみる。


ラッシーには、へんなクセがある。


それを利用する。


俺は,ラッシーの前に白いビニール袋をみせる。ラッシーの耳がピクんと反応する。


手で待ての合図中もぶんぶん尻尾を振ってる。


確率は、三分の一。


たのむよ?ラッシー?


そう心の中でつぶやきながら、ビニールを神城のいる公園に向かって力いっぱい放り投げた。


それと同時にラッシーがダッシュする。投げたビニール袋にダッシュしてー。


「きゃっ!」


いきなり走ってきた犬に、神城がベンチから立ち上がる気配。


俺は身を隠してるから、気配だけだ。


カシャカシャとビニールを漁るラッシーが、ビニールをくわえてー、


「えっ?私?」


戸惑う神城の声がして、


「ーっ⁈これ…」


「わふっ」


ーうちのラッシーは、わんとは返事しないらしい。


そして、


ーなげたボールを飼い主じゃなく、他人に持っていく。


小さい頃は黄原によく持って行ってだけど、親父にまわりに人がいたら、リードは放すなと怒られてからは、控えている。


けど、今日は、成功したようだ。


あとは、、、。


「…ありがとう。ストーカーさん」


つぶやきがきこえた。


どうやら、俺はやっぱりナガレタゴカエルらしい?


小さくため息をついて、空をみあけた。


俺の大好きな空色。


だけど、


ーナガレタゴカエルは、いやだなあ?


って,思ってた。


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