第13話 ネズミ花火とPENTAX
土の匂いのせいか、あの日のことを、思いだしながら、ラッシーの頭を撫でていたら、
「春馬?帰ったのなら、ちゃんと、ただいまを言って、部屋にカバンをおいて、制服を着替えなさい」
家の中から、かんだかい声がする。
俺は一気に、身体が、なまりみたいズッシリ、重たくなる気分に、なった。
ーただの、錯覚。
そうわかるけど、ほんとうに、身体が、鉛みたいだ。
ある種の金属は、摂取し続けていくと,身体に支障がでると最近知った。
ーなら?母親にいわれるたびに感じる、俺のこの身体の重さもだるさも、そうなのかな?
たまに、兄貴と話をしていても感じる。だけど、母親に言われたら、もっと、
ーG。
を感じる。
ーどっちの、G?
いっつも考えて、Gの単語の語源から、考えてみたけど、
意味は、わかったようで、わからなくて、わからないまま、
ーGは、鉛のように、俺につきまとう。
わきに置いたカバンをみたら、黄原が誕生日プレゼントにくれたキーホルダーが、目に入った。
黄原が好きなアニメで。
「推しが当たらなかったから、やるよ?誕生日だよな?」
って、くれた名前も知らないキャラクター。
ご丁寧にカバンにつけられて、目標がわりに、そのままにしている。
アニメは、日本のすごい文化は、わかる。ただ、
ーこれは、ラブコメ本から、アニメになった、
そういえば、親父が言ってたなあ?
親父は役所勤めだから、海外にも市の魅力アピールように、ホームページを作成してる。
そんなかに、海外から、なんでも日本ってコーナーに、質問があったらしい?
ーラブコメと恋愛小説の違いは、登場する女の子のスタイルと、髪の色が普通の日本人らしくないのが、ラブコメですか?
カテゴリーに、恋愛とラブコメとあるので、その定義は、なんなんだろうかと不思議に思っています。
って、あって、親父は飲みかけのコーヒーを、思わず、
ー飲み込んだ、らしい。
熱さに暑さで、さらに、氷水でのたうってたらしい。
ー親父は、市役所で、何をしてるんだろう?
でも,面白いなあ?たぶん、その定義なら、作者で、色々ちがうよな?
たしかに、黄原が、俺に見せてくれるラブコメは、
ーナイスバディ。
ただ、どこまでを、さしてるのかは、わからない。
だって、
ーバディ。
じゃなく、
ーナイス。
逆も。
ーやっぱり、ナイス?
女性キャラの基準として、スタイルは、たしかにあるだろう。
ー鋭い指摘で、海外だと、
ーヒゲ?
それとも目や肌の色になるのかなあ?
だとしたら、日本人には、見えやすいスタイルは、ラブコメも恋愛も、関係なく書いてる。
ただ、俺には、異世界人は、わからない。
ーだって、相手は、異世界人。
母親と、あの芝生と、
俺にとって、異世界代表の、
ー神城明日菜。
手元に蛍傘は、帰ってきたけど。南九州の片田舎は、もう暑い。
ふと、気になった。
俺はラッシーの頭をひとつ撫でて、立ち上がって、またフェンスを越える。
うしろで、ラッシーがくぅん、って小さな声でないた。
吠えるじゃなく、ないた。
そっか、ラッシーは、なけるんだな?
なら、ラッシーは、いいのかな?
こんな狭い裏庭で、鎖には、繋がれてないけど,囲いのなかでさ?
だけど、
ーくーん。
って、後追いみたいに、ないたんだ。
まるで危ないからサークルに、ベビーベッドにいれられる赤ちゃんみたいだ。
全身麻酔から、リカバリー室から帰るとき。とても丈夫な柵でてきた病院のハイベッド。
ひたすら、眠る。起きたら痛いとなく。触れたいけど、抱っこしたいけど、
ー柵がある。
安全にまもるために、柵がある。ラッシーは、柵がある。
けど、
ーどっちに。いるのかな?
なあ?ラッシー?
俺とラッシーは、どっちが柵のなかにいる?
「春馬!返事をしなさい!いるの?」
ーいるよ?
だから、返事をせずに、玄関をあけるんだ。
そうしたら、
「ただいま、くらい、いいなさい⁈」
ートンネルをぬけたら、そこは、雪国だった。
って、有名だよな?
けど、さ?
ー玄関、あけても、だれもいなかった。
が、いちばん多くないか?
ーいない相手に、どう返事をしろとな⁈
ラッシーなら、いるのに。
奥から、また声がする。
「まったく、返事くらい、しなさい。あんたは、もう。なんで竜生みたいに、育たないのかしら?同じように育てたはずなのに」
ぶつぶつ声だけがきこえる。
そのあと、お決まりの言葉がくるんだ。
「ほんとうに、私の子なの?あんたは」
…知らない。
だから、黙ってる。親父がいたら、
「まあ,少なくても俺の子だ」
そう言うから、俺は親父の子。そうは、理解してるけど、
ー母親の子、かは、知らない。
誰も知らない。知らないでいいんだと、その時は、確かにそう思ってた。
返事をしないままに、自室に、キャラクター付きのカバンをおいて、着替えて財布をとる。
スマホは、机にほおりだした。
基本的に、俺には必要がない。
ラッシーの写真を撮ったってさ?
ーあのときは、遺影になるなんか、思ってなかったんだ。
俺の部屋の片隅にあるPENTAXフルマニュアルカメラ。
「いいか?春馬。お前以外の世界がオートフォーカスでも、すべてがオートでも、どんな画素数の液晶モニターでも、ほら、みてごらん?」
じぃちゃんが、俺にくれた一台のカメラ。
もう半世紀をいきたカメラは,子供の俺には,ずっしり重かったけど、首からかけるストラップが少しだ毛,重さを緩和してくれて。
ーああ、見えてる世界が、ちがうんだ。
見えてる世界が、ほんとうに。違うんだ。
そうわかって、しまったんだよ?
フルマニュアルのファインダー。
うつる世界は、
ーフルカラー。
白黒じゃないよ?カラーだよ?
だけど、
ースマホの方が鮮明画像だ。自由にモノクロにかわる。
けど、
ーフィルムは、光が入ったら、1発で、すべてが0になる?
いや、数枚が生き残る場合もある。
ー不思議なPENTAXフルマニュアル。
たくさんのよくわからないボタンやダイヤル。
電池は、なくて。
フラッシュも、別機能で。
ーすこしカビがあるファインダーは、それでも光を通して、俺に違う景色をみせてくる。
ー自分の目で見る世界や、スマホでみる世界じゃない、
ーファインダーの世界は、
フルカラーで、なんか違う。
じぃちゃんが、優しく手を頭に置いた。
「きれいな世界だろ?春馬」
どうかそうであってほしい。
そんなじぃちゃんの声をききながら、フィルムがはいったPENTAXで、わらうじぃちゃんの写真を撮ったんだ。
じぃちゃんは、わかってたのかな?
ーあの写真が遺影になることを?
なあ?じぃちゃん。
俺には、遺影の意味が、
「わっかんねー」
そう口にしていた。
PENTAXフルマニュアル
ただ、
ファインダーから覗く世界は、カビがあるけど、
ーフルカラー。
そう教えてくれた、PENTAX。フルマニュアルカメラ,
と、
ーラブコメと恋愛の違いって、
なくね?
だって、
LOVE コメディ
LOVE STORY
だろ?
スマホで翻訳変換できなくて、コメディを調べたらさ?
ー喜劇(きげき、英: Comedy)は、人を笑わせることを主体とした演劇や映画、ラジオやテレビのドラマ作品や、それらのなかの笑いを誘うやりとりを指す。コメディとも呼称される。
ただしコメディ(Comedy)の西洋における元義は、悲劇(英: Tragedy)の対照を成した意味での演劇である(例えばギリシア悲劇に対するギリシア喜劇)。
したがって本来は必ずしも笑えるものだけを意味するとは限らない。 例えば、ダンテの『神曲』も原題は「羅: La Divina Commedia」であり、日本語で通常の直訳では「神聖な(もしくは神の)喜劇」となるが、笑えるものを意味しているわけではない。
なら、どっちでもよくね?
だって、LOVEは、変わらなくて、
だからこそ、喜怒哀楽があるんだろうな?
って,思って、
ーたぶん、これも、違う。
半世紀前のPENTAXフルマニュアルカメラ。
ファインダーから覗くとカビが少し、ついていて、カビ越しに覗く世界は、
ーやっぱり,カラーで、
スマホみたいに画素がない。
そして。
ー異世界人はよくわかんなくて、日本人が、髪を染める理由は,年齢により違う?
ただ、一個だけ、博士にいいたい。
ー白髪ぞめは、外国人は何種類だ?
って,思うけど、俺の中学には、いないなあ?
ーあお。
ーあか。
ーみどり。
光の三原色に染めるやつ。
そういえば、なんで、みんな似た色にそめるんだろ?
ー?
っておもいながら、
「行ってきます」
って、俺は言った。
それは、必要だと叱られたなあ。
母親が台所から顔をのぞかせ。
「車に気をつけてね?」
って言った。
わかってるから、黙って、俺は外にでて、
「返事をしなさい!春馬!」
って、声が背後にして。
ー母親は胸が大きいのか?
疑問だけど、白髪ぞめはしていて、
ーラッシーは、オス。
だけ、わかるから。
いいのかなあ?
コメディは日本語で訳すと喜劇。
LOVEは英語。
だから、ラブコメ?
そして、恋愛は、
LOVE STORY。
なるほど、パズルみたいだ、って思って。
外国人は髪を何色に染めるんだろ?
って、思って。
ラッシーをフェンスかりらだしながら。
ー神城の髪は、黒いよなあ?
って、なんとなく思ってた。
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