第10話 ママチャリと兄貴のスポーツサイクル
いつもどおりのくだらない会話?をしながら、黄原と家まで帰った、
「ただいま」
そう言いながら、家に帰ると玄関で、塾に行く兄貴とあう。
「なんだ?その傘?また忘れたのか?ほんとにバカだな、お前」
兄貴の自転車を、出しやすいように、場所をよけると、
「サンキュー」
って、兄貴がさわやかに笑う。
兄貴は、俺によく怒るけど、きちんと返事は、くれるんだ。
いまだって、屈託なく笑ってた。こういう笑顔と態度も黄原にしてみれば、兄貴の人気らしい。
俺と似てるって、黄原は言うけど、俺にはわからない。
俺はあまり笑って礼をいうをしない。
というか、お礼はわかるけど、笑う必要性を感じない。
ただ、クラスの異世界人たちが、たまに体育なんかでグランドにいる兄貴をみて、キャアキャアと異世界語でなにやら騒いでる。
兄貴の顔は、たぶん、芸能人にも負けてない。
背だって俺より高い。
ーなんで神城は、兄貴をふったんだろ?
疑問を持つと、黙ってられないのが、俺の悪い癖だ。
自転車にまたがろうとしたその背につい、口にしていた、
「なあ?兄貴」
「なんだよ?めずらしく?」
「兄貴は、神城にふられたの?」
ガタガタって音がして、いきなり兄貴が自転車のバランスをくずす。
バランスくずしたのに転ばなかったのは、さすがだな?って俺は思ってみていたら。
「いきなり、なにを言い出すんだよ!そもそも誰からきいた?」
「黄原」
口止めは、されてない。たまに俺の口は軽いと言われるが、一応言っておきたい。
ー口どめされたら、話さないぞ?
ただし、この口止めが俺には、難しい。
だって、
ーなんで口止めにも、空気があるの⁈
どうやって、読めとな?
そもそも内緒の話ほど、外に漏れてますけど⁈
えっ?それは、内緒じゃないの?
で、口止めがなかった話は、言ったらダメだ?
ー???
大混乱した。
から、もうあまり考えてない。俺には、むり。
俺の口は、軽い。
軽くて、なめらか。
チョコレート、だっけ?
アイスクリーム、だっけ?
黄原、お前は、俺に口止めしなかったぞ?
まあ、兄貴だから俺の対応は、慣れてるけど。
兄貴は、バランスを立て直すと、スポーツサイクルに跨り俺を振り返る、
兄貴のスポーツサイクルは白だ。親父が白を譲らなかった。
南九州の片田舎の夜は、暗くなる。街灯はあるけど、やっぱりくらい。
ライトも、テールライトも点滅であるけど、暗闇に目立つ白を親父は、譲らなかった。
なぜなら、兄貴のスポーツサイクルは、かなりのスピードがでる。
兄貴は、見た目もかっこいいから欲しがってだけど、親父は俺と兄貴を見比べて、店員さんに熱心に機能をきいていて、
ー兄貴は、スポーツサイクル。
ー俺は、ママチャリ、
に、なった。
まあ、カゴついてるから、
ーべんり、
というか、俺はべつにいらないけど?って思ってた。
だって俺たちの学校は、自転車通学は禁止だし?
兄貴は夜に塾や休日に友人と市の中心部に出かけるけど、俺はあまり行かないしなあ。
休日は、たいていラッシーとあそぶか工作してるか、
ー寝てる。
母親は、宿題や勉強しろって言うけど、あんまり興味がない。
兄貴は、スポーツサイクルがよく似合う。背も高いしスタイルがいい。
背負ってるスポーツメーカーのカバンも様になるよなあ?
って思ってた。ら、
「まあ、やっとお前まで、話しが広まったのか、というか、お前でも神城を知ってるのか?」
「ー修学旅行の自由行動が、同じ班になった」
兄貴が不思議そうに俺をみる。
「お前と神城って、クラスがちがうよな?」
その通りだから、返事しない。兄貴があきれた。
「ちがう。この場合はきちんとした、質問だよ、バカ。なんで違うクラスのお前が神城と同じ班になったんだ?」
そういう意味か。
「バスケ部のカップルのせい?」
「赤木と柴原か。柴原と神城は、よく一緒にいるもんな。けど、赤木かあ。アイツも神城狙いなはずなんだよなあ」
「えっ?柴原が彼女じゃないのか?」
つい口にしていた。
「柴原絡みで、神城に近づくつもりだろ?まあ、柴原がどういうつもりかは、わからないけど。頭いいしなあ?アイツ」
ーそうか?
確かに柴原は、頭がいいけど。
「柴原は、頭がいいだけだろ?」
むしろ神城よりー。
だけど、神城は?
兄貴は、黄原と似た笑みを浮かべた。
「なんだ?お前は柴原、狙いか?まあ、神城を狙うより簡単だよな?すぐ落ちそうだしな。柴原」
兄貴のいい方に、なんだか俺は、めずらしく嫌な気持ちになった。
ー私の名前は、柴原真央だよ?
白と黒のくせに。あいつは緑で、柴原って書いたのに。
なのに!
ー自分は黒いボールペンでかいた、んだ。
白い紙に、黒いボールペンで、俺に書いたシグナル。
いつだって、ひとりで納得して、解決してる兄貴に、赤木たちまわりに、
ー白い紙に。
ただ、黒で、俺にしらせた。
ー柴原真央は、俺には特別だ。
兄貴の聴き慣れた嫌味に、いままでなら、なんにも感じなかったのに。
ーアイツは、見抜いた。
見抜いたけど、見抜いたからこそ、
ー傷つかないわけじゃない。
「なんだよ?めずらしく怒ってるな?お前マジで柴原狙いか?」
「柴原は、確かに特別だけど、神城も特別だ」
あれ?
なんで、神城がでてきたんだろ?
自分でも戸惑っていたら、兄貴があきれた顔をした。
「ようするに、お前は、顔なんだな?」
「 そうなのか?」
「俺がきいてるんだよ!バカ」
「兄貴は顔じゃないのか?神城が好きだったんだろ?」
俺の言葉に兄貴は、また苦い顔をした。
「あれは、俺には関係ないデマだよ。俺は神城に告白してないよ。誰かが噂して、面白おかしく広がっただけだよ。俺は否定してるけど、無駄なんだよ。神城が否定してないから」
「神城が否定しない?」
「いちいち告白してくるやつのことなんか、覚えてないだけだろ?とにかく、俺は告白してないよ。いまは、受験と最後の中体連に向けて、忙しいんだよ」
じゃあな、って兄貴は、スポーツサイクルに、乗って行った。
ぐんぐん加速していく。俺のママチャリとは、大違いだけど。
ーお前は、なぜか、車にひかれそうな気がする。
親父は、こまったように俺の頭に手を置いて言っていた。
母親は俺があとからスポーツサイクルを欲しがったら、また買いかえる気かと、親父をといつめていたけど、親父は俺をみて、
ー俺にスポーツサイクルが欲しいか確認してきた、
俺はあまり興味がない。
必要なのは3段切り替えとT字ハンドル。
俺は首を振った。
まあ、カゴと荷台は、
ーべんり。
だから、不満はないけど。
なら、なんで神城は、
ーあの真冬の屋上に、いたんだろう?
あいつの、敵、は、
ー誰だ?
って思ってた。
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