第9話 金魚


「まあ、竜生先輩でもダメだったなら、もう、うちの中学の連中じゃ、のぞみがないよなあ」


黄原が、話をもとにもどした。


俺は、ふと疑問に思って、黄原にきいた。


「黄原は、告白してないのか?」


「俺は、違うかな?告白は、ほんとに好きな相手にしかしない派だ」


ー?


なんの「は」だろう?


さすがに「歯」じゃない、はわかるけど?


疑問だから、きいた。


「兄貴や野球部の先輩たちは、ちがうのか?」


「さあな?本気のヤツも、たくさん、いるだろうけど。遊び半分、当ればラッキーみたいなヤツも、けっこういるんじゃないか?神城って独特の存在感だし?告白しなくても、もし神城に告白されたら、断るヤツなんかー」


そこで、黄原は、言葉をとめて、なぜか俺をみた,


ー?


「いや、さすがに村上でもー。いや、だけど、こいつだし?」


なんか、ひとりでブツブツ言ってるけど、俺にはよくわからない。


でも、自分でも、めずらしく考えてた。


神城が俺に告白したら?


あの異世界代表が?そうしたら、俺はー?


「地球がひっくりかえっても、ありえない」


黄原が、言って、


「いや、地球は.ひっくり返る可能性があるぞ?異世界なら?」


って、俺はつい口にしていた。


まあ、どの方向にひっくり返るのかは、わからないけど?


黄原が呆れた顔になる。


「なんで、そこで、地球と異世界の話になるんだよ!」


「ーお前が言っただろ?」


「そういう意味で、言ってねーぞ?まあ、いいけどさ。もし、お前が神城に告白されても、お前は無視しそうだよな」


黄原は、ひとりで納得してるけど、さ?


ー俺は、また、あの蛍光ペンを思い出していた。


これが明日菜だよ?


そう言ったアイツが、俺が神城を無視することをゆるすのか?


白地に真っ黒なペンで書いたアイツ。


「柴原、か」


こっちが芝生。


そう言って、わかりやすい緑のペンでかいたやつ。


緑は、光の三原色のひとつ。


赤も、そうだ。


そして、


赤と緑を混ぜたら、


ー黄色。


黄色は、三原色じゃない。


だから、黄原は、ふつうに混じり合うのか?


赤木とも緑の異世界人とも、ふつうに会話するのか?


光の三原色。


ーあか。


ーみどり。


そして、


ーあお。


赤と緑を混ぜたら、黄色。


だけど、


緑と青を混ぜたら、水色。


絵の具とは違う世界の、光の世界。


絵の具が、たし算なら、


ー光は、ひき算らしい。


プラス、マイナスは、


ーゼロ。


かあ。


まあるい地球で、平行線をならう算数。


まあるい地球で、直線をならう算数、


まあるい地球は、


ー丸いらしい。正確には、まんまるじゃないから、コンパスでは、


ーどうやるんだろ?いや、やり方は習ってる。


ならってる。


そう、理解しないままに、習った。そういうものだった。


けど、


ーこれが芝生だよ?


緑のペンで書いた、


白地に黒の、絵の具では、最端の2色。


は、


ー光の三原色に、いない。


だけど、アイツは緑で、緑はシグナルの青で、青と緑を混ぜたら、


ー水色になる。


俺の大好きな、空と同じになる。


そして、


赤と青と緑は、おなじ割合で混ざると、


ーまっしろな、太陽の光になる。


あれ?


ー白あるぞ?


絵の具はいろが混じれば、混じるほど、


ー黒に近づくぞ?


あれ?じゃあ、


「柴原は、白と黒?」


白と黒をまぜたらー。


ーグレー?


って、思って、


ーああ、だから、わかりやすかったのか。


って、納得した。


「なあ?柴原って、あんな感じなのか?」


俺が黄原にきくと、黄原は、あきれた顔になる。


「お前、マジで柴原狙う気か?アイツはやめとけよ?彼氏が赤木だぞ?しかも、アイツは軽いぞ?」


「お前よりは、軽いだろうな」


柴原は異世界人らしい細さだ。


目の前にいる黄原とは、骨格から違いそうだし?


「違う!俺は太ってない!そしてなんで、お前は、柴原より軽い設定なんだよ?お前だって、俺とそんなに身長、変わらないだろ?」


「柴原は、俺より背が高いけど、お前より低いだろ?あと、お前は俺よりは、確実に重いし?お前がフナで、柴原が金魚…って、どっちも、フナじゃないか⁈いや、まてよ?なあ黄原?もう金魚は、金魚だよな?」


「しらねーよ!どうして、お前は、そうなるんだ!バカ!」


「バカだから?」


「だから、みとめるなよ!バカ」


「……」


「黙ってないで、言い返せ!」


「ー黄原って、短気だよな?」


「お前と幼なじみしてるくらい、俺は気が長いぞ⁈」


ーなるほど、たしかに。


「だから、黙るなよ!なんか言い返せ!」


「金魚とフナってー」


「だーっ!それは、もういいから!」


「どれ?」


「どれじゃねーよ!バカ!」


ーだから、俺はバカだよ?


なんか、まだわめいてる黄原が落ちつくまで、俺は黙ってた。


だって、仕方ないだろ?


わからないんだから。


いつか、誰かふつうに、こんな俺と会話をしてくれるのかな?


ど、れ?


って、きいたらさ?


み?


みたいな?


そういう会話をしてくれたら、


ーあんまり疑問もたずに、会話になりそうなんだけどなあ。


「いい加減にしろ!バカにしてないのは、俺ならもうわかるけど、修学旅行は、気をつけろよ?神城も柴原も、ほかの女子や赤木たちもいるんだから」


「大丈夫。近づかない」


だって、俺は、


地球人。


だけど、


ー異世界の空は何色なんだろ?


って思ってた。

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