第3話 蛍傘
柴原が蛍光ペンでマークした、
ー神城 明日菜。
そういえば、あいつはあの日、蛍みたいだった。
そう俺は思った。
神城 明日菜。
そして、
柴原 真央。
ーと、異世界。
黄原は赤木たちと福岡の観光地を、いろいろとスマホで調べてる。
修学旅行に限りなんて、言うけど、
ーほとんどのヤツが普段から持ってきてるし、小学生だって、親が申請書をかけば、キッズ携帯だけじゃなく、スマホもランドセルに入れてる。
いまはキーホルダー式のGPSもあるらしい。たくさん犯罪が複雑化しているような。逆に、単純化してるような?
よくわからないニュースが多くなったと、
ー親が話してる。
俺にはよくわからないけど、そうらしい。
ー?
あたりまえだろ?
見てればわかるけど?
よくわからない。
俺は、ため息をつく。たまに考えると頭が痛くなる。
よくわからない。
わからないけど、
ー黄原は違うんだよな?
幼い頃から、俺のへんな遊びに、たまに付き合ってくれる貴重な存在が、黄原だ。
打ち上げ花火は、田舎だから、できるけど。
夜は、輪ゴムが見えにくい。
だから、俺はじいちゃんにねだり、パラシュートが出てくる昼間用の打ち上げ花火を買ってもらった。
風ができるだけない火で、曇り空で、割り箸で作り上げたゴム鉄砲を強化して、
ー黄原に、花火に火をつけてもらっていた。
導火線がつく瞬間に、輪ゴムを空に打ち上げた。
曇り空だから、かすかな光みたいなやつと煙と、遅れた音とー。
空飛ぶ、輪ゴムじゃなく。
ーパラシュートに、興味が行った。
輪ゴムを見失ってた。
あの日、俺は、何をやりたかったんだろ?
ただ、輪ゴムは、落ちた音でわかったけど。
やっぱり、落ちたけど。
ーパラシュートって、すげーって、思ってた、
あの日、俺は、何をしたかったんだろ?
そのあと、黄原とパラシュートを投げて遊んでた。
いまは100均で、かなり面白いやつがある。
ーパラシュート。
…黄原は、もう相手してくれないし。
あれは青空でも目立つからできるけど。
ーあの日、俺は何を確認したかったんだろ?
黄原はパラシュートを撃ったと思ってる。
けど、違うは、わかる。
そして、
ーよくわかんねー。
ー?
俺は黄原が話してる相手をみる。黄原が言うには、目立つヤツらしい。
赤木。
赤、黄、青緑。
正確には、碧なのか?
よくわからない。
青信号で渡りましょう。
ー矢印あるけど?
行きかけて、母親から、かなり怒られた。
ー?
春馬、あれは、車用だよ?ほら?歩行者は赤と緑に人のマークがあるんだよ?
そう教えてくれたのは、親父だった。けど、親父は母親から、
ー青信号よ!
って、注意されていた。この子には、ちゃんと教えないとダメだと言われてた。
俺の頭は、
ー?
なら中間なのか?
それとも混合?
なら、
ー青緑?
青緑は芝生。
で、
ー柴原 真央。
明日菜をありがとう。そう言ったヤツ。
は。
赤木となんかやけに、くっついてる。
というか、赤木がくっついてる。そういえば、凹凸すごいよなあ?
なんで、凸凹、でこぼこ?
おうとつは、ふつうにある。
とつおうも、スマホにでる。
なんで、ボコデコは、スマホは、変換しないのかな?
あれだけ、なんで、パズルみたいに、わかりやすいんだろ?
数字は三までならわかるけど。
なんで、四から違うんだろ?
ずーっと、たしざんじゃないのか?
十から一ひいても。
ーたしかに、マイナス(-)になる。
すげえな?考えた人。
四から一引いてみると…,。
ー?
たしかに。
ー匹。
引き算か?
ー?
ほんとうにお前はバカだな?春馬。
アニキの声が頭によぎる。たぶん、バカはあってる。よく言われる。だから、あってる。
って思ってたけど。
俺は修学旅行のしおりをみる。
白い紙に黒字で、
ー柴原。
そう書いてある。
青緑は、大丈夫な色。
そして、
俺の好きな、不思議な色。
ー水色で、空色。
どっちも、地形や天候で、変わる色。
あの日のアイツも蛍みたいに、光ってた。
あんなに遠かったのに。
寒い雪空だったのに。
ーホタルみたいに、儚くて。
よくわからないけど、走ってた。
ーなんで、あの日、俺は走ってたんだろう。
みた瞬間に身体が動いてた。走りながら、理解した。
けど。
ーふだんなら、走る前に考えた。
よくわからない存在だ。
空色の蛍光ペンのヤツ。
「ほら、終わったぞ?帰ろうぜ、村上」
いきなり肩を軽く叩かれてびっくりした。
黄原が呆れた顔で俺を見ている。
まわりをみたら、
ー誰もいない。
ー?
「とりあえず、柴原がまとめたよ。やっぱり学年一位はすごいよなあ」
「アイツ、頭いいのか?」
「おっ?めずらしく反応したな?けど、残念ながら、柴原は赤木と付き合ってるぜ」
ーだから、くっついていたのか。
「赤木が口説いたら、アッサリだったって、自慢してたぜ?真面目には見えないけど、頭いいのに。男の趣味は悪そうだな」
赤は、あぶない色だけど?
だけど、目立つから、赤ペン?
注意しましょう?だけど、大切なことを、教えてくれる色だよな?
そのアイツが書いた蛍光ペン?
なんで俺の好きな色でマークしたんだ?
ー神城 明日菜。
「まあ、おかげで神城と自由行動ができるから、めちゃくちゃラッキーだよな?写真も撮れるしさあ」
「盗撮は犯罪だぞ?それくらい俺でも知ってるぞ?」
だって、小さな頃に映画館でやってた、
顔が警告ランプのやつ。わかりやすい。
ー子供にわかりやすいのって、大事だよな。
あれも赤いなあ。
けど、アメリカなら青か?
日本も青パトあるし、黄色もランプある。
ー非常口は、信号機?
「帰ろうぜ」
黄原に促され、鞄を持って教室をでる、
廊下にある白地に赤。
消化器や非常ベルはあかい。
やっぱり、赤はたくさん意味がある。
ーアイツは、知ってるのか?
生徒用の昇降口がある廊下に、目立たない場所にある、
ー落とし物いれ。
黄原の後をついてく足をとめてのぞく。
…あった。
安い折りたたみ傘。持ち手に小さなセロテープが貼ってる。
やっぱり、あった。
「なんだ?また、傘を置き忘れたのか?お前、そんなに傘を忘れてたか?落とし物やけに多いな?名前かけよ?」
黄原が怪訝そうに言っだけど。
ー名前は書けない。
書いたら、きっと、アイツは使わない。
きっと、あの日のホタルみたいに。
ーただ、儚く輝いて、
雨降りのあとは、かえってくる。
蛍見たいな。俺の傘。
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