第6話 私とあなたを照らす光を殺した者は殺しますから。

キプトは、指と、赤い袋を持って出て来た。


「私の家は…どこですか?」


「ついて来てください」


キプトは、全てを見透かしたような表情だった。


私が、何故お金を使わなかったのか、知っていたのだろう。




「なるほど、良い家ですね。」


キプトは続ける。


「同じ家に住むなら、敬語はなしですか?」


「そうしよう」


「従う側の人間が、生意気よ」


支配者は、微笑みながら言った。

もちろん、好意的な微笑みである。


そして玄関で靴を脱ぎ、靴下を私に持たせてから言う。


「この家は、私とあなたを照らす光。見えているのでしょう?あなたは私たちの光ではありません。私と彼と、私たちを照らす光を殺すのであれば、私は今度こそあなたを殺します」


その眼差しを、この世界に向けた後、今度は私の持っているものを全て床に置く。


そして、


「手、繋ご?繋ぎながらじゃ歩けないもの。」


そう言い、キプトは左手を伸ばしてくる。


私も、左手を伸ばす。


「好きな人が出来るなんて…私、あんなことして良かったのかな…」


「…ん?」


「手を繋いで、…」


窓から僅かに注がれる冷たい光が、嘲笑うかのようにキプトを照らした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る