第37話 ラッシュ!
隠れ家的な雰囲気があり、初見で入るには勇気がいりそうだ。
「ねぇねぇマユさん。途中にある店、入り口はあるのに看板とかノレンがなくて何屋だかわからなかったんですけど、あれが一見さんお断りってやつですか?」
「ん〜私もよくは知らないけど、普通に予約すれば入れるお店が多いらしいよ。まぁ予約しなきゃダメなんだから、一見さんお断りといえばお断りなんだけど。でも予約なしで入れる店も、けっこうあるはずだよ」
話しながら、石畳を闊歩する和装ロックのマユさん。
通り過ぎる男の視線が、高確率でマユさんを追いかけている。
うんうん、かっこいいよね〜、美人だよね〜、と思わず私も頷いてしまう。
もちろん普通の着物でも良いんだろうけど、マユさんが着ているような黒レースの着物は、観光地だからこそ許される記念コスプレの感覚に近い。
なんていうかテーマパークに行って、キャラクターグッズを身につけるのと同じ感覚だ。
「まさに旅の思い出に、普段とは違う特別な体験を〜って感じですね」
「なんの話よ?」
首を傾げるマユさんに、それですと指をさす。
「あぁ〜着物ね。そだね。体験型イベントとして考えれば、ちょっと楽しいかも。どうせなら、二人で着たかったけど」
「まぁ、半分仕事ですからね」
「全力で仕事だよ!」
ポクっと脳天に、手刀を落とされる。
「痛ぁっ!」
「あんたが、馬鹿なこと言うからでしょ」
「うぅ〜。ちなみにその着物、何時まで借りられるんですか?」
「一応、撮影協力ってことで特別に二十時まで、遅れそうなら連絡してくださいだって」
ふむふむ。
二十時ならバーの取材も終わっているはず。
もちろんそのためには、スムーズに撮影が進むよう、しっかりと段取りを整えなくてはならない。
「よし。じゃぁ〜気合い入れ直して行きましょう!」
私が右手を振り上げると、マユさんが「おう〜」っと同じように手を上げて応えてくれた。
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