第14話 カウンター・アタック!

 会議室は、二人で使うには少し広い部屋だった。

 部屋の中は長テーブルがロの字に置かれていて、いくつもの椅子が並んでいる。

 どこに座ればと戸惑っていると、先に座っていたマユさんが手招きをしてきた。


「隣……で、いいですか?」


 一応聞いてみると、まゆさんは黙って頷いた。


「じゃあ、ウチのチームの今週のスケジュールと、仕事の流れを説明するね」


 大人っぽい素敵な笑顔を見せながら、ノートを開く。

 土曜の朝にベッドで見せてくれた、どこか甘えたような艶のある笑顔ではない。

 ビジネス笑顔だ。


「あ、はい。お願いします!」


 いつまでも、邪な考えばかりしてる自分が恥ずかしい。

 するとそれを見透かしたかのように、マユさんがクスクスと笑った。

 あっ……この笑顔は、馴染み深い。

 先週の土曜日に、ずっと見せてくれていたやつだ。


「そんなに、緊張しないでいいよ?」

「あ、はい。すみません……」

「あぁ、もしかして……」


 マユさんが、悪戯っぽく笑いながら覗き込んでくる。


「二人でいる時みたいな感じで、接してほしかった?」

「あっ、やっ、そんな!」

「ふふっ、か〜わいっ」

「うぅ……」


 結局、揶揄われてしまった。

 今は、めっちゃ嬉しそうにして見つめてきてる。


「まぁね〜。これでも私、会社じゃ真面目で、誰とも馴れ合わない人で通ってるのよ。だから、ユリちゃんともそうするよ。そもそも、職場だしね」

「はい、当然だと思います。でも……私だけ“ユリちゃん”なんですね?」


 これは、ささやかな抵抗だ。

 もしかしたら、マユさん本人も気づいていない事かもしれないし、これで赤面のひとつでもしてくれれば、少しやり返せた気分になれるだろう。


「そうだよ。みんなにバレない程度に、特別扱いしてるの。私たち二人だけの秘密でね。嬉しい?」

「うっ……むっ……嬉しいですケド」


 でもやっぱり、勝てないのだった。

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