第7話 スノー・チェリーブロッサム!

 ──ここ数日の冷え込みのせいで、各地では季節外れの雪が……



 うん? テレビつけっぱなしだった?



 ──見てください。上野公園の桜に雪が積もってます……



 あぁ……どうりで、ここ数日寒かったはずだ。

 そういえば、昨日もお布団があったかくて気持ちよかったような……

 あったかい……あと柔らかい?

 そこで私は、ガバリと起き上がった。


 眼鏡は枕元に……あった!


 そして、私の左に!


 裸のマユ先輩がいる!


 私は……またしても裸!


 ここは……やっぱりマユさんの部屋!


「えっと……これは、タイムリープ?」


 ……ではない。

 そんな訳ない。

 だって、昨日食べたアヒージョのお皿がテーブルに出たままだ。

 あの美味しいアヒージョを食べたことは、しっかりと覚えてる。

 ビールも飲んだ。

 ジントニックも飲んだ。

 あと……なんか沖縄のお土産とかで、泡盛も飲んだ。

 記憶が、そこから……ない。


「えーっと……」


 つまり今日は、DAY2!


 2日連続、お泊まり!


 2日連続、記憶なし!


 2日連続、ここから出勤!


 あははー、私、最悪だー


「んん? もう朝?」

「う……おはよーごぜーます」


 自己嫌悪に打ちひしがれていると、マユさんが目を覚ましてしまった。


「今日は逃げないの?」

「逃げ遅れました……」


 クスクスと吹き出すマユさん。


「あぁ、会社どうしよう。また、同じ服になっちゃう」

「会社? 今日は土曜よ?」


 え……っと、一瞬思考が止まる。

 そうだ、今日は土曜でお休みだった。


「あー、あれだ。もしかして、泡盛で記憶なくした?」

「うぅ……です」

「夕璃ちゃん、あぶなかしー。相手が私で良かったねー」

「これを良かったと言って、いいんでしょうか?」

「朝起きたら、隣に知らん男がいたとかよりいいでしょ?」

「そりゃそーですケド……」


 そりゃそーですけどね。

 私にはそういう経験も、趣味も、趣向もないわけで。

 女同士のそういうの否定はしませんが、だからといって新たな門を開くわけでもなく。

 ただただ何やってんだ私、と思うわけで。


「あのぅ……私とマユさんって、何かこう……しました?」

「寝たけど?」

「そ、それは……どっちの意味か教えてくれま……」

「やだ」


 被り気味に、即答でコレだ。


 そして、またしてもマユさんは、悪戯な笑みを返すだけだ。


 ……あれ?


 なんかデジャブ?

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