第2話 エスケープ!
一度、情報を整理しよう。
私の名前は
地方の美術大学を卒業したばかりの、夢と希望に溢れた新社会人だ。
そして初出社の前日に彼氏にフラれた、悲しい新社会人でもある。
つまり今日は……
「今日、入社式じゃん!」
思わず声をあげ、慌ててベッドから飛び起きた。
下着はすぐに見つかった。
次は見知らぬ女の服と組んず解れつしている、浮気者な自分の服を引き剥がす作業だ。
何をしたらこんなに絡まり合うのか、まるで昨夜自分達がこんなことをしたかのような……
……。
……え、したの?
口元を引くつかせて、ベッドの方に視線を戻す。
すやすやと眠る奇麗なお姉さんは、黒に近い濃紺のショートヘアがよく似合っていて、線が細くいかにもクールな雰囲気だ。
左目の下にある泣きぼくろが、同性の私から見ても色っぽい。
そしてやっぱりというか、彼女も何も着ていない。
自分には女性同士でそういった経験はないし、そういう趣味もない。
どちらかといえば、されたのだろうか?
彼女を起こせばハッキリするんだろうけど、世の中には知らない方がいい事もあるし、ここは一つ……
「よし、逃げよう」
私は頭を切り替えて、荷物を手に取り、出て行くことにした。
ドアを閉めると自動で鍵がかかる。
どうやらここは、マンションの七階らしい。
しかもかなり都会……昨日飲んでいたのが新宿だったから、その近くだろう。
表札には「最上 真由美」と書いてあった。
「真由美さん、ごめんね」
黙って出て行くことに、何となく負い目を感じてしまう。
でも今の私は、会社に行くことが最優先。
出社初日から遅刻とか、絶対にありえない。
何となくエレベーターを使わずに非常階段を駆け下り、目の前の道路でタクシーを捕まえる。
現在地がわからないんだから、タクシーで行ったほうがいいはずだ。
「渋谷G1デザインっていう……えっと、ここ!ここに行ってください!」
タクシーの運転手にスマホを見せる。
すると無愛想な運転手が、無言のままアクセルを踏み始めた。
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