【完結】あなたが、ユリを望むなら。

Ni:(にぃ)

第1話 テイクアウト!

 外から、可愛らしい雀の鳴き声が聞こえてきた。

 カーテンの隙間からは朝日が差し込んでおり、私の露出した肩を照らし出している。

 ぽかぽかとして、とても心地良い。


 ……あれ?


 昨夜は、裸で寝てしまったのだろうか。

 私が何年も愛用している、ピンクのもこもこルームウェアを着ていない。


 「昨日ってたしか……」


 記憶を探ろうとするが、寝起きで頭が回らない。

 とりあえず体を起こし、手探りで眼鏡を探そうとする。


 ムニュ。


 うん?


 ムニュムニュ。


 なんだろう、この慣れ親しんだ感触。

 適度に柔らかく、それでいて形が崩れない弾力。


 あぁ、そうだ。


 これは、例えるなら女の子の胸と同じ感触だ。

 胸なら私も持っているから、よく知っている。

 なぜここに同じ感触があるんだろうと疑問に感じつつ、枕元を探ると眼鏡が見つかった。


「う〜、頭いたい」


 この頭痛は、お酒によるものだろう。

 少しずつ、昨日の記憶が蘇ってくる。


 たしか昨日は……彼氏にフラれて……一人で飲みに出たんだっけ。


 そう考えると、これ以上思い出したくない気分になる。

 とりあえず頭痛薬を探そうと部屋の中に視線を向けると、そこは……


「えっ……」


 見知らぬ部屋だった。

 シックなグレーを基調とした、冷たい印象を持つ部屋。

 私の部屋はもっとこう、ガーリーで明るいはずだ。


「どこ、ここ」


 なにか手がかりはないのかと、注意深く見回す。

 最初に目を引いたのが、壁にかけられた三本のギターだ。

 弦が四本だから、たぶんベースなんだろう。

 他にも気になるものはある。

 それは、ゲーム配信者が使いそうなゲーミングチェアと、LEDの間接照明が組み込まれたテーブルだ。

 怪しげな光を放つテーブルの上には、中身が透けて見えるパソコンもある。

 パソコンの横には本格的なマイクがあり、マイクにはよく見る網々がついていた。

 床には昨日着ていた自分の服と、見知らぬ女物の服が、乱れるようにして重なり合っていた。


 そこでようやく、先程の感触の元へと視線を移す。


「えぇっ……?」


 眼の前の光景を見た瞬間、鈍器で頭を叩かれたかのような衝撃を受けた。

 そこには、見知らぬ女性が眠っていたのだ。

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