第3話 夜明け前の回想

 目黒の静かな朝、僕は彼女と過ごした記憶の場所を訪れることにした。まず向かったのは、二人が初めてデートした公園だ。公園は変わらず、木々は昔と同じようにそよいでいた。ベンチに座りながら、彼女との会話を思い出す。彼女の声、笑顔、そして彼女の目が細められる瞬間。すべてが昨日のことのように思えた。


 次に訪れたのは、彼女が好きだった小さなカフェ。店内に入ると、馴染みのあるコーヒーの香りが僕を迎えた。彼女はここの窓際の席が好きだった。僕はその席に座り、コーヒーを一口飲む。彼女との会話が耳に残り、彼女の不在がより一層感じられた。


 夕方、僕は再びジャズバーを訪れた。バーテンダーに彼女のことを尋ねると、彼は彼女のことを覚えていた。彼女が最後に訪れた夜のこと、彼女が何か思い詰めた様子だったことを教えてくれた。


 夜が更ける頃、僕は家に戻った。一日の出来事をベッドに横たわりながら思い返す。そして、決意して彼女の日記を手に取った。日記には彼女の深い思いや葛藤が綴られていた。彼女が直面していた問題、彼女の感じていた孤独、そして彼女が僕に言えなかったこと。僕はページをめくりながら、彼女の心の中に少しずつ近づいていた。


 窓の外では、夜明けの光が徐々に街を照らし始めていた。新しい一日が始まろうとしている。僕は日記を閉じ、深いため息をつく。彼女の謎を解く鍵は、まだ手元にはない。しかし、僕は諦めるわけにはいかない。彼女の消失の理由を見つけ出すため、僕の旅は続く。

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