第4話 再開された糸

 目黒の朝は穏やかに始まる。朝日が窓ガラスを通して部屋の中に柔らかい光を運び、夜の静寂から徐々に都市の喧騒へと移行していく。僕はベッドの上で目を覚まし、窓の外を見つめながら、昨夜読んだ彼女の日記の言葉を思い返していた。日記には、僕たちが一緒に過ごした幸せな時と、彼女が心に秘めていた悲しみや不安が綴られていた。彼女の言葉は、ある種の謎をはらんでおり、それが僕の心を引きつける。


 会社に着いてデスクに座ると、僕は仕事に集中しようとするが、彼女の日記の言葉が頭から離れない。日記には、僕たちの関係に影響を及ぼすかのような、何か秘密めいたことがほのめかされていた。彼女はその秘密を僕に打ち明けることなく消えてしまった。彼女の言葉の意味を解き明かすことができれば、彼女が抱えていたものについて何か手がかりが得られるかもしれない。


 ランチタイムになると、僕は彼女がよく訪れていたという目黒の古書店へ向かった。その店は小さくて趣のある場所で、彼女はここでよく文学作品や詩集を手に取っていたと聞いている。店内に入ると、彼女が好んでいた作家のコーナーへ直行した。そこには彼女が何度も読んだという本が並んでいた。僕は一冊の詩集を手に取り、ページをゆっくりめくる。彼女の好みや興味が、ここには詰まっている。彼女の思考や感情の断片を探るように、その詩の一節一節に目を通す。


 仕事が終わると、僕はふと思い立って、彼女の古い友人に連絡を取った。彼女の友人は、彼女が最後に会った時の様子を覚えており、僕にその話をしてくれた。彼女は何かについて深く悩んでいたようで、普段とは異なる重い表情をしていたという。友人は彼女が何について悩んでいたのか具体的には知らなかったが、彼女が何か重要な決断を迫られているように感じたと話した。


 夜になり、僕は再びジャズバーへと足を運んだ。バーに入ると、心が落ち着く。昔彼女と過ごした時間を思い出し、彼女の残した痕跡を辿る。バーテンダーに話を聞くと、彼女が最後に訪れた時のことをもう少し詳しく教えてくれた。彼女はその日、いつもとは違う静かな様子で、一人で何かを思い詰めるようにバーの隅の席に座っていたという。


 家に帰り、彼女の日記を再び手に取る。日記の中の言葉には、何か隠された意味があるように感じられる。特に彼女が書いた詩の一節には、彼女の心の奥に秘められた真実が隠されているように思えた。その詩は、彼女の内面の複雑さを映し出しており、何かを暗示しているように感じられた。


 夜が更け、静かな部屋の中で、僕は窓の外を見つめる。夜明け前の闇が深まっていた。彼女の言葉の意味を理解することが、彼女の消失の謎を解く鍵になるかもしれないと感じる。僕は彼女の足跡を追い続けることを決意し、新しい一日が始まるのを待っていた。

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