―16― ユメカ、変身する!

「フェニックスちゃーん、どこー? でておいでー」


 わたしはそう叫びながら、フェニックスのいる場所を探す。


【これじゃあ、いったいどっちがモンスターかわからんwwww】

【目が猛禽類のそれなんよwwwwww】


 なんか言っているコメントもあるけど、ユメカ失礼しちゃうわ。

 それからコメントの指示通り進んで、フロアボスのいる部屋にどうにかたどり着く。


「フェニックスちゃーん!!」


 そう叫びながら扉を開けた。


「キシャァアアアアアアアアア」


 と、フェニックスの甲高い鳴き声が部屋中に響く。

 フェニックスは全身真っ赤に燃えるに炎に包まれており、近くにいるだけで全身が熱い。


【一人でいったいどうやって倒すつもりだ……】

【氷系統の魔術がないと倒すの難しいが】

【てか、フェニックスって近接攻撃効かないよね。ユメカ大丈夫なんか?】


 なんかコメントで色々と書かれているけど、難しいことはユメカよくわかんない。


「デュフフ、ユメカいっきまーすっっ!!」


 どんなモンスターだって突撃して殴れば、倒せるよね。

 だから、ジャンプして勢いつけてパーンチッッ!!

 ドッカーン! と音がなって、フェニックスが地面に激突する。


【はぇー、フェニックスって殴ればいいんですねー(泣)】

【フェニックスって意外と弱いだな(錯乱)】

【この程度で倒れるとかフェニックス雑魚すぎかぁ(震え声)】


「あれー、なんでびっくりしたコメントばっかりなのー? もっとユメカのことかわいいって言ってくれないとやーなの!」


【逆になぜこれで驚かれないと思うのか】

【このポーション厨が】

【完全にこれはラリっていますね】

【初見さんへ、彼女はポーションの過剰摂取により言動がおかしくなっていますが、平常運転なので気にしないであげてください】


 うーっ、ユメカかわいいって言われたいのに、そういうコメント一つもないんだけど! どうにかしてかわいいって言われたい!


「あれー? よく見たら、左腕燃えるんだけどっ! なんでー!?」


 なんでか考えるけどさっぱりわからない。なんでー?


【フェニックス殴ったら、燃えるのは当然だろ】

【逆にまだ気がついてなかったんか……】

【火だるまになっても笑ってそうwwww】


 あれー? でもー、なんか段々熱くなってきたよー?


「うわぁああああああああ!! なんか急に熱くなってきたんだけど!? みんな、どうしよう!?」


【えぇ……逆に今まで熱くなってなかったんか】

【早く火をとめないとまずいのでは?】

【水はないし、ダッシュして火を消すとか?】


「そうだ、こういうときこそポーションだ!」


 なんでこんな当たり前のことを忘れていたんだろ。〈アイテムボックス〉から〈ビッグ・トレント〉を取り出して一服する。

 はぁあああああ、落ち着くなぁあああああ。


【ポーションですべてを解決する女】


「キシャァアアアアアアアアアッッッ!!」


 耳鳴りがすると思ったら、フェニックスが再び鳴き声をあげながら高く空を舞う。あれー? まだ死んでなかったんだ。


「待って、今、ユメカは〈ビッグ・トレント〉を吸うのに忙しいの」


 スゥウウウウウウハァアアアアアア、やっぱりポーション吸ってるときって至高の時間だなぁ。


【命の危機よりポーションを優先する女】

【うーん、この】


 あう! なんか体が横に飛んでるー。ぐへっ、地面にぶつかった。めちゃくちゃ痛い。どうやらフェニックスに投げ飛ばされたみたい。


【いたそう(小並感)】

【だいじょうぶ?】

【大丈夫け?】

【ワイは大丈夫や! みんな心配してくれてサンガツ!】

【誰もお前には聞いていない定期】

【飛ばされたおかげで、火は消えたし結果良かったのでは?】


 みんな心配してくれてる。うれしい。

 けど、これけっこうヤバいかも! あ、いいこと思いついた。


「う、うぅうううううう……痛いよぉおおおおお! ユメカ痛すぎてもう戦えない! 大変、ユメカがこれ以上戦うには、みんなの応援が必要だわ!! みんな、ユメカちゃんかわいいってコメントして。みんなのコメントがユメカの力になるのー!」


【は?】

【は?】

【は?】

【えぇ……】

【嫌です】

【うーん、パスで】


「なんでぇええええええ!? なんでー、みんなそんな塩対応なの!? このままだとユメカ死んじゃうよー!」


 とか言ってる間にフェニックスが火の玉をたくさんユメカに飛ばしてくる。うわー、危なーい!


「って、よく見たら、下にマグマがあるじゃん! キャアアアアア、フェニックスの攻撃でさっきから床が崩れてるし、このままだと本当にユメカ死んじゃうー!!」


【仕方がない……ユメカちゃんとってもかわいい】

【ユメカちゃんかわいい】

【あたふたしてるユメカちゃんかわいい】

【ラリってるユメカちゃんかわいい】

【かわいいよー! ユメタン、がんばえー】

【ユメカちゃんはポンコツかわいい】

【かわいい】

【かわいい】

【かわいい】


 あぁー! みんながコメントでかわいいって言ってくれてる! うれしい! ユメカとっても幸せ!


「すごい……! みんなの声援がオーラとなってユメカのもとに集まってくる! 見て、みんなのおかげで、ユメカの体が光り輝いて見えるよ!」


【オーラ? えっ、なにが見えてるんや?】

【すまん、なにも見えないんだが】

【えっと、一体なにをおっしゃってるんでしょうか?】

【一瞬騙されたけど、やっぱりテキトーなこと言ってだけじゃねぇかwwwww】


 もうっ、ユメカには見えるからそれでいいの!!


「みんなありがとう。みんなの応援のおかげ、ユメカの本当の力が今、目覚めようとしている――!」


〈ビッグ・トレント〉を手に持ちつつそういう。

 ふふふっ、ユメカにはまだ本当の力もとい〈ビッグ・トレント〉の隠し効果が残っているのだ!!


【本当の力があるなら最初から使え】

【どうせ最初から使えたんだろ】

【俺たちの声援なんて意味ないぞ】


 だから、なんでそういうこと言うのっ!


「本当の力を見せるときがきたようね! 変身――!!」


【変身だと……?】

【まさかそんな力が?】

【マ、マジか】

【え? まさか変身なんてできたんか】


 そう、なんとユメカは変身することができるようになったのだ。

 女の子なら誰だってかわいい姿に変身することを憧れる。だから、変身できるようになってとってもうれしい!


「テッテカテテテ~ッ!」


 と、鼻歌を口ずさみながら、その場でクルクルまわる。この動きが変身するのに必要なのだ。


「って、なんで変身中に攻撃してくるの!?」


 フェニックスの炎のブレスで変身が中断されちゃった。


【変身中に攻撃しちゃ駄目なルールはないからな】


 こうなったら、高速で変身するしかない!


「テッテカテテテ~ッ! チャンチャン! キランキランキラーン! みんな幸せな世界に送っちゃうぞー、ピュアマリファナ!!」


 よしっ、完璧に決まった。

 朝やってる女の子が魔法少女に変身するアニメってこんな感じだったよね。

 どうだ? 今のユメカ、とってもかわいいよね!!


【すまん、一体なにに変身したんだ?】

【ワイの目がおかしくなったんかと思ったが、やっぱり見た目変わってないよな……】

【本当に変身できるんかと思ったのに、ただの嘘やないか!】

【こんな小娘に騙された自分が恥ずかしい】

【このメスガキがぁ。ムカつく!!】

【注意、彼女はラリっているため、彼女の言動はすべて虚偽に満ちています】


 あれー? 思っていた反応と違うぞー?

 でも、変身したおかげで、必殺技が使えるようになったからいっか。


「みんなの力を一つに、マリファナパーンチッッ!!」


〈ビッグ・トレント〉の隠し効果は、匂いを嗅いだものに強い眠気を引き起こすというもの。

 さっきからずっと匂いを嗅がせていたため、フェニックスは飛ぶことさえ辛そうにしている。

 この隙を利用して、ユメカの強いパンチを食らわせば決着がつくというわけだ。

 どや! これがユメカが新しく手に入れた必殺技、マリファナパーンチである!

 ドッカーン、と殴られたフェニックスは床に盛大に叩きつけられて動かなくなった。

 やったね、ユメカちゃん! ユメカの勝ちだよ!


【やっぱりとんでもなくて草】

【えっと……つまりどういうことや?】

【結局なにが起きたんや?】

【誰か解説よろ】

【誰も解説できないぞ】

【ユメカちゃん最強! ユメカちゃん最強! ユメカちゃん最強!】


「これでフェニックスでポーションが作れる!! やったー!! 今からポーション作る配信しまーす!」


【そういえば、ポーション作るのが目的だった】

【どうせまた格付けSSSのポーション作るんだろ】

【なにもかもがめちゃくちゃで草】


 そんなわけで、今からユメカのポーション調合配信、はじまるぞー!







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