さよならの前に会えたらそこで…

@mizunori_aya

1考目 順応

まとまらない。どこかがほつれる。見えない所までも。

ほどけて細い線となり彼女は言う。

 「今日は冷えるね。」

雨が降っている。冷たい雨。冬の気配を肌が感じる。まただ、この感じ。

 夜、月は欠け、雲は灰と化け、頭上を泳ぐ。だが、草木は冷ややかさを帯び青々としている。若く、生命を受け、憎たらしいほどの青々しさ。

 露が滴る。視界がぼやっとする。薄いグラスに雨露が細々と垂れ視界は惑わされる。彼女の顔が今、歪む。街灯とそれを反射する微細な水滴の膜越し。

 笑みに見える。多分、おそらく、きっと。微笑。

 互いの間に生きる見えない生命体。奴は何も言わない。目が幾数もある。

 見つめる。瞬く。

 閃光。瞬く。

 雨。瞬く。

 轟。慄く。


 「ねえ、もう帰ろう。」


 暗転

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