15話 恋愛
体育祭について色々決めたホームルームも終わり、俺は青春活動部の部室に来ていた。今日は、篠崎さんと柚葉先輩、そして俺の三人だった。
まぁ忙しいと言いつつ、大紀は今日発売のゲームを買いにいったけどな。月見里さんも、欲しい本があるから買いにいったし。
月見里さん、完全にライトノベルにはまってるじゃん。晴馬先輩は、ゲームのオンラインイベントで寝不足らしく、帰って休むらしい。
それにゆいねぇもいないようだし、これは好都合だった。篠崎さんは、音楽を聴きながら勉強しているし、大チャンスだな。
俺はそう思って、柚葉先輩に話しかける。
「柚葉先輩、ちょっといいですか」
「うんー?」
柚葉先輩は、スマホを見るのを辞めて俺の方を向く。
「柚葉先輩に相談があるんです。今は人もあまりいないし、篠崎さんは音楽を聴いているので」
「なるほど。秘密の話だね?」
柚葉先輩にそう言われて、俺は頷く。
「りょーかい。まぁ、一応小声で話そうか」
そして俺は、柚葉先輩に話し始めた――
「柚葉先輩って、晴馬先輩の事が好きじゃないですか?」
「え、何で知ってるの!?」
いやどこから見ても一目瞭然なんですが。話している時、めちゃくちゃ楽しそうだったし。
「いやバレバレですよ? 晴馬先輩は鈍感そうだから、気づいていないかもしれないけど」
「いや、雄哉君が言う?」
「えっ、何でですか? 俺なら、たぶんすぐ分かりますよ」
俺がそう言うと、柚葉先輩は渋い顔をする。昇や碧、大紀や月見里さんにも、何か変な反応されるんだよな……
「まぁ、その話は置いていくとして。本題は何?」
「実は俺、最近誰が好きだか分からなくなったというか。柚葉先輩に聞けば、少し分かると思いまして。それに、柚葉先輩ぐらいしか頼む人がいなくて」
俺がそう言うと、柚葉先輩は気になる様子で、身を乗り出してきた。
「後輩の恋の話ねぇ……面白そうだし、相談に乗ってあげる。それに、なかなか恋バナする相手もいないし。言ってみ言ってみ?」
「実は俺、中学時代に篠崎さんの事を好きになったんです。今も気持ちは変わってないと、最近までは思っていたんですが、違和感があって」
「違和感?」
柚葉先輩は、少し疑問に思ったのか、そう俺に問いかける。
「元々、俺は恋愛について深く考えてなかったんです。まぁ、それは色々あったので、ここでは省きますけど」
「ということは、最近になって考えるようになって、わからなくなってきたってことだね?」
柚葉先輩は、俺の考えが分かったのか、少しドヤ顔で自信満々に話す。やっぱり、柚葉先輩は鋭い。
「その通りです。俺の友達の碧や、月見里さんとかと話すなかで……自分の考えが分からなくなったというか」
柚葉先輩は、少し悩みながらも、俺の思っていた事と全く違う事を言った。
「別に悩まなくていいんじゃない?」
「えっ、でも」
「雄哉君は、前に進んでいるんじゃないかな。よく考えるようになって、見えてなかったところも、色々と見えてきてるんだと思うよ」
改めて考えてみることで、見えてくることもある、か。
柚葉先輩は、俺になかった考えを言ってくれた。
「それにさ、雄哉君は全然悪くないよ。気になる人が複数いても、フリーなら問題ないし」
「そうなんですか?」
「あくまで私の考えだけどね。誰だって、たくさんの美男美女に言い寄られたら揺らぐでしょ?」
確かに柚葉先輩の考えは、一理あるなと思った。別に
凄く一途なやつも、いるにはいると思うが。
「学生時代の恋愛って、気楽に考えれば良いと思うよ。ダメだったらダメだったで、また次に生かせば良いと思うし。私たちは、まだ子供だから」
「そんな事言う割には、柚葉先輩は少し大人びていますね」
柚葉先輩とは一歳差なのに、何だか凄く年齢が離れているような気がした。柚葉先輩は、同じ学生とは思えないような、達観している大人のような感じだ。
「そう? まぁ、雄哉君もさ……これからゆっくり考えれば良いと思うよ? あんまり遅いと取られちゃうかもだけど」
「なるほど。ちょっと時間をかけて、色々と考えてみます」
「うん。応援してる」
「ありがとうございます。柚葉先輩も何かあったら、相談相手になりますよ」
「おっ、じゃあ今日からは恋愛同盟だね」
こうして、俺と柚葉先輩は、恋愛同盟? を結んだ。
改めて俺は、しっかりとこの問題について考えていこうと思った。
部活も終わって家に帰った俺は、昔の事を振り返る。
「そう考えると、色々あったなぁ」
俺は、一人でボソッと昔を懐かしむように呟いた。
ゆいねぇと出会って、碧と仲良くなって……それから篠崎さんの事が気になって、月見里さんの事を知って。本当に色々な事があったと思う。
碧も同性の友達のように接してきたけど、一人の女の子で。ゆいねぇだって、先生や生徒から絶大な人気だし、月見里さんだって、物凄く人気がある。
そう考えると、俺の周りの顔面偏差値高すぎね? 国公立レベルじゃねぇぞこれ。
それに、俺は全然皆の事を知らない。篠崎さんが気になったのも、言ってみれば、外面からだし。
もっと皆の内面を見て、自分でよく考えて……そして答えを出そう。
他に好きな人がいて、柚葉先輩が言ったように取られてしまう可能性もあるが。
俺はそんな決意をして、眠りについた。
次の日の朝。俺は、いつもより早く起きていた。今日から体育祭の朝練が始まるからである。朝練だけでなく、放課後練習もあるみたいだ。
部活との兼ね合いもあるが、体育祭が迫っている期間中は、部活の休みが増えたりするらしい。また、少し体育祭の練習をしてから部活に行く、といった生徒も多いらしい。
ゆいねぇは、
「体育祭は、マジで青春だからね。部活は休みで、しっかりとクラスで楽しんでくること!」
と言っていた。そもそも自由なこの部活に、休みという概念があったことに驚きなのだが。
俺としては、朝はスマホゲームのデイリーミッションをこなし、放課後は動画やアニメを観たりする時間なのだが……まぁしょうがない。
体育祭で、青春とやらを楽しんでやろうではないか――
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